世界中の空港で発生する「預け手荷物トラブル」、時代遅れの処理への、課題を解決する新たなテクノロジーとは?【外電】

2022年末、サウスウエスト航空に手荷物を預けた何千人もの旅行者は、約1ヶ月間も自分の荷物を受け取ることができなかった。手荷物を預けた後に、何千便というフライトがキャンセルされたため、手荷物の処理が滞ったためだ。これは最悪のケースだが、世界の航空旅客需要が間もなく2019年レベルを超えると予想されているなか、既存の手荷物処理インフラでは十分に対応できないと警告する専門家も多い。

最大の問題のひとつは人材不足。時代遅れの手荷物処理技術は問題を悪化させている。乗客が手荷物を預けてから受け取るまで、その手荷物は何十年も前のシステムを通過する。

高度な追跡技術が開発されているにも関わらず、ほとんどの航空会社は依然として、バーコードを含む紙のタグで手荷物を追跡している。 アマゾンの倉庫は荷物を整理するロボットで溢れているが、空港はまだベルトコンベアと手作業で荷物を運んでいるのだ。

オンラインシステムによって、最初から最後まで経路をたどることができるが、ほとんどの旅客は、最終的に自分の手荷物を確認するまで気が気ではない。

理想的な手荷物システムを実現するためには数十年という月日と数億ドルの資金が必要だが、効率を高め、遅延を防ぐためにすぐにできることはある。

まず重要な問題の解決を

手荷物処理についての問題は、世界の空港、航空会社、ハンドリング会社でデータが共有されていないことにある。必要なデータはあるが、それが複数の関係者の間で共有されていないため、手荷物の配送で問題が生じている可能性がある。

この問題は、空港が大きくなるほど深刻で、特にハブ空港では多く発生する。データ共有が手動で行われているため、一旦、大規模な気象的な問題で遅延やキャンセルが発生すると、他の問題もドミノ的に引き起こされる。

アムステルダムのスタートアップ企業Bagtagは、手荷物データ共有プラットフォームを開発。手荷物処理のプロセスに関わる関係者を一つのソリューションに結びつけることをしている。

世界的な航空輸送情報技術会社SITAは、業界が新しいテクノロジーを共有することは大切だが、まずは現実的な投資で実装できることに集中すべきだと言っている。SITA手荷物責任者のニコール・ホッグ氏は「注視すべことは、まず空港と航空会社が変化に対処するためのインフラを備えているかどうかを確認すること」と話す。

SITAによると、航空業界はパンデミック中に約230万人の雇用を失い、2022年には手荷物の取り扱いミスによる損失は22億ドル(約3000億円)にのぼった。

SITAは近頃、ルフトハンザ航空と共同で、フライトの乗り継ぎで誤処理された手荷物を自動的に別のフライトに割り当てるソリューション「WorldTracer Auto Reflight」を共同で開発している。同航空によると、この技術を使えば、ミュンヘン空港で誤処理された手荷物を最大70%自動的に再配送できるという。

ホッグ氏は「私たちは自動化とデジタル化で手荷物処理を考えようとしている。人手不足はそう簡単に解消されない」と話す。

未来のテクノロジーで手荷物の処理はどうなる?

航空業界を近代化する技術の開発に取り組んでいるスタートアップShabstecの創設者シャビアー・ギラッチ氏は「今後2~3年の間に、新しいモデル、新しいテクノロジー、新しいプロセスが導入され、より効率的な旅行体験に変化する大きなチャンスがある」という。

Shabstecが取り組んでいる主な製品は、主要な物流倉庫で使用されているのと同じ効率的なスキャン技術である無線自動識別 (RFID) 技術を使用するタグと、それに対応するリーダーTagForLife。この技術のポイントは、タグの情報が自動的に読み取られて保存されること。1つずつ手動でスキャンする現在のやり方ではなく、すべての手荷物を一度に数分以内にスキャンし、その手荷物の所在と持ち主である乗客と結びつける。Shabstecはまもなく、英国の主要な空港でこの技術の実証を行う予定だ。

Bagtagは、旅行者が増加していくなか、電子バッグタグが空港運営の将来において重要な役割を果たすと考えている。 手荷物のチェックインで、航空会社が空港でのプロセスを事実上なくすことができる未来を思い描く。同社はアラスカ航空と協力して、この取り組みを実証している。

一方、ギラッチ氏は、システムだけでなく、ベルトコンベアに変わるロボットの開発にも取り組んでいると明かす。来年にもその初期型の整備される見込みだ。

手荷物が紛失、その処理の多くが手動

手荷物が紛失した場合、空港、航空会社、地元の運輸保安局によって異なるプロセスが取られる。米国運輸保安局(TSA)によると、毎月最大10万個の手荷物が空港に置き忘れられているという。その多くが電話など手動で対処されている。

ジョージア州のサバンナ/ヒルトンヘッド国際空港が、顧客サービス向上の一環として、米運輸保安局(TSA)から遺失物を引き受けると決めた時、その総量は3倍に膨れ上がった。しかし、空港はスタートアップ企業Boomerangによるツールの使用を導入すると、従来の4 分の1の時間で処理できるようになったという。

Boomerangは、AIを使用して照合を自動化し、旅客だけでなくスタッフも遺失物をデジタルで取り込むことを可能にした。 乗客は、バゲージクレームに関する最新情報を毎日、あるいはそれが一致したときに受け取ることができる。

Boomerangは、空港からこのビジネスを開始したが、航空会社、ライドシェア、そのほか公共交通機関などとのビジネスも視野に入れている。

同社CEOのスカイラー・ログスドン氏は「レガシー技術は依然として業界で強力な基盤を持っているが、それは時代遅れ。解決すべき問題がなければ、この業界に目も向けなかった。この業界は本当に遅れている」と話した。

※ドル円換算は1ドル132円でトラベルボイス編集部が算出

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:The Real Reasons Behind Air Travel Baggage Delays

著者:Justin Dawes氏

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