パレスチナ・ガザ自治地区のハマスによる大規模攻撃を受けてイスラエルが宣戦布告したことで、大手航空会社はイスラエル発着の航空便を一時停止している。
イスラエルの空の玄関口テルアビブのベン・グリオン国際空港発着の便は、大半がイスラエル国営航空会社のエルアル イスラエル航空で、そのほか、トルコのペガサス航空、ギリシャのブルーバード航空などの地域航空会社の乗り入れが多い。
AP通信によると、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空は、米国国務省がテロや社会情勢不安を理由にこの地域への渡航勧告を発令したため、運航を停止した。
アメリカン航空は、テルアビブ行きの便を一時停止。 同航空は、旅行計画に影響が出る乗客に、代替案を提案したことを明らかにした。ユナイテッド航空は、状況が改善するまでテルアビブ便の運休を継続すると発表。デルタ航空は、テルアビブ便を10月31日まで運休することを決めた。
エールフランス航空も、フランスおよびイスラエル当局と調整した結果、「通知があるまで」テルアビブ行きの便を停止すると発表した。
ルフトハンザグループは10月9日、「イスラエルの治安状況が依然として不透明であるため、状況を徹底的に分析した結果」として、グループ会社によるイスラエル便の運航を止めた。
キャセイパシフィック航空も、「イスラエルの最新状況を考慮して」、10月10日と12日に予定されていたテルアビブ便を運休すると発表。
ヴァージン・アトランティック航空も10月9日と10日のロンドン・ヒースロー/テルアビブ線を運休。
ウィズエアは、「追って通知があるまで」、テルアビブ発着のすべての便を運休することを決め、イージージェットも、10月9日のロンドン・ルートン空港およびマンチェスター空港発テルアビブ行きの便を運休し、「運航を一時停止」することを決定した。
一方、ブリティッシュ・エアウェイズは、「出発時刻を調整して今後数日間」はイスラエル行きの運航を継続する予定。KLMは、テルアビブ行きの便を10月11日まで運休する。
なお、日本でエルアル航空の総販売代理店を務めるアビアレップス社によると、同航空のテルアビブ/成田線は現在のところ通常運航(10月10日13:50時点)。しかし、刻一刻と状況が変わっているため、状況の確認を急いでいる。
相次ぐ運休で秋冬の観光客需要に影響か
また、米観光産業ニュース「スキフト」は、ハマスとの戦争がイスラエルの観光市場に暗い影を落とす可能性があると指摘してる。
2019年のイスラエルへの海外旅行者数は約470万人。新型コロナによって落ち込んだものの、2022年には270万人まで回復し、40億ドル(約5900億円)の経済効果をもたらした。イスラエルの観光大臣は今年初め、「2023年には、2019年の観光客記録を更新するとという目標が現実的になりつつある」と述べるなど、2023年は成長軌道に乗ると期待されていた。
同国中央統計局が発表したデータによると、2023年8月のイスラエルへの観光客数は、2019年比で4%~7%減の約31万人まで回復した。このうち、約28万人はイスラエル国内で1泊以上した。これは、2019年8月の約30万人に迫る。
イスラエルは2030年までに年間の観光客数を700万人まで引き上げる目標を掲げている。その最大の市場は南北アメリカと欧州。今回の戦争によって、航空会社が相次いで当面の運休を決めていることから、今年の秋と冬の需要に影響が出ることは避けられない。
一方、長期的にはアジア市場を重視している。特に中国市場に熱視線を送っており、観光省は、微博(ウェイボー)と提携し、プラットフォーム上でターゲットを絞ったキャンペーンを開始するなど積極的な取り組みを進めている。2019年には、約15万人の中国人旅行者が訪れていた。
中国政府は近頃、団体旅行許可国にイスラエルも加えたことから、イスラエル観光産業の復活を後押しするものと期待されていた。
※ドル円換算は1ドル148円でトラベルボイス編集部が算出
※前段記事はAP通信、後段記事は米・観光産業ニュース「スキフト(skift)」との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。