観光産業向けデジタルマーケティングを提供するソジャーン(Sojern)社は、DMO向けの「デスティネーション マーケティングの現状」レポートを発表した。これは、ソジャーンとデジタルツーリズムシンクタンク (DTTT)と共同で作成されたもので、ブランドUSA、カナダ観光局、欧州旅行委員会などが支援。世界の300を超えるDMOを対象に調査した。
レポートでは、経済の不確実性、インフレ、生活費の高騰などがマーケティング戦略策定に大きな影響を与えており、回答者の50%以上がこれらは慎重な計画立案が必要であると考えていることがわかった。
1. AIに大きな可能性、一方で活用に自信ない
また、レポートでは、AIがマーケティングに革命をもたらしており、旅行者に対するマーケティング方法に大きな影響を与えると指摘している。ほぼ半数(49%)のDMOが、AIの影響が最も顕著になるのはコンテンツ作成と予測。さらに、40%が予測分析、38%がデータ分析にAIに大きな可能性があると回答した。一方で、71%がAIの活用に自信がないと回答した。
AIの影響が少ない分野としては、キャンペーンの創出と最適化(29%)、ウェブ・アプリ・プラットフォームの構築(35%)が挙げられた。
2. 有料メディアへの投資を優先
96%のDMOが、マーケティング目標を達成するための不可欠な要素として、有料メディアへの投資を挙げた。具体的には、58%が年間を通じて投資を行っているのに対し、38%は季節ごとに投資し、特定の機会が生じたときに投資するのは21%のみとなった。
最も重要なチャネル形式は、ネイティブ広告またはスポンサー付きコンテンツで94%。ディスプレイ広告とビデオ広告が85%、インストリームビデオ広告が78%と続いた。さらに、コネクテッド TV (CTV) に将来性を示しており、回答者の半数以上が重要と考えていることもわかった。
チャネル別では、Instagram(45%)とFacebook(35%)が依然として最も重要なプラットフォームと認識。一方、TikTokを最も重要なチャネルとして挙げているのはわずか5%だった。
3. データとプライバシーを中心とした戦略への転換
全回答者の54% が、マーケティング計画においてデータが最も大きな価値をもたらすと回答。一方で、現在の課題として、チャネル間でのデータ統合の欠如 (52%)、データ取得コストの高さ (46%)、質の高いデータへのアクセス制限 (42%)が挙げられた。
グーグルはサードパーティクッキーを廃止する予定(脱クッキー)だが、それに関して重大な影響があると回答したの37%、戦略に与える影響は小さいと回答したのは15%となった。
多くのDMOがデータプライバシーの変化による影響を軽減するための対策を進めており、60% がソーシャルコンテンツに重点を置く予定、58%がより多くのファーストパーティデータの取得を優先する予定だと回答した。
4. サステナビリティの目標を優先
DMOは、持続可能性、多様性、公平性、包括性などに応じて戦略を適応させている。例えば、欧州のDMOでは62%が気候変動、56%が生物多様性をサステナビリティの優先事項と考えている一方、カナダでは気候変動が29%、生物多様性が24%、米国では気候変動が8%、生物多様性が33%となった。
また、多くのDMOが戦略において社会的多様性と持続可能性の両方を重視。調査対象者全体の 42%が男女平等を優先と回答。欧州では45%、米国では40%が障害者のアクセシビリティを強く重視していることがわかった。さらに、全回答者の約35% が、LGBTQ+ を重視、34%が社会的および経済的多様性の促進に重きを置いている。
5. 共同マーケティングの取り組み
78%のDMOが、業界パートナーキャンペーン、あるいは協同マーケティングに積極的に投資している現状も明らかになった。これは、DMOが地元のビジネス関係者と提携して旅行先としてアピールする取り組みとして行われている。
共同キャンペーンを実施する目的としては、全体的なマーケティング投資の増加 (58%)、視聴者リーチの拡大 (54%)、費用の負担 (46%) が挙げられている。また、70%が、消費者の全体の行動を考慮した「フルファネル」マーケティングキャンペーン活動を展開している。