オーバーツーリズムと旅行者の相関関係を正しく理解するためには、まず、旅行者がその状況をどの程度理解して、懸念を感じているかを把握する必要がある。フォーカスライトがこのほど実施した調査「Far From the Madding Crowd? The Truth About Overtourism and Dispersal(オーバーツーリズムと需要分散の実態)」によれば、持続可能な旅とオーバーツーリズムという2つの課題が、観光産業において密接な関係にあることは明らかだ。
ところが平均的な旅行者にとって、この2つが相互に影響し合っていることは、それほど明白ではない。今回のマーケット調査では、「大勢の人で混んでいないところや、人が訪れていないルートを旅行先に選ぶこと」を「サステナブルな旅行」だと考えている旅行者のシェアは、わずか13~21%にとどまった。国別では、米国の回答者全体のうち16%。欧州ではドイツが最も少なくて13%。次いで英国(14%)、スペイン(15%)、イタリア(18%)、フランス(21%)となった。
他の質問項目への回答からも、理解度の低さが伺える。つまり消費者にとって、サステナブルな旅行とは、具体的にどんなことを指すのか、よく分からないのが現状なのだ。
一方、よく理解されていたのは環境保護対策で、例えばプラスチック製品の再利用やリサイクル、公共交通機関を利用することなど。いずれも旅行中に限らず、日頃からできることであり、昨今の意識向上キャンペーンによる効果もありそうだ。
なお、普段から持続可能性を意識して生活している人や、最近、自然や文化体験を目的に旅行した人に限ると、混雑していないエリアに滞在することが、サステナブルな旅の在り方の一つだという理解度は高かった。しかし、こうした旅行者の間でも、知識の格差はかなり大きく見られた。
旅行先選びにおけるオーバーツーリズムの影響
人混みとサステナブルな旅を直接、関連づけて考えることはあまりないが、デスティネーションにとって混雑は悩みの種だ。地域のイメージに影響するし、観光産業がもたらす未来への懸念も出てくる。気候変動やオーバーツーリズムなどの問題を、これからのバケーションを左右する不安要因として挙げる旅行者もある。一か所に集中しないようにと旅行者を教育したり、知名度の低いエリアへと誘導する仕組み作りに取り組んでいる人々からは、旅行者側の理解は十分という見方もある。ただし、旅行プランニングや予約の段階で、もう一押しする必要がある。
オーバーツーリズムは、旅行先を選ぶのではなく、選ぶべきではない理由、避けるべき理由だ。今回のマーケット調査では、過去12カ月以内の旅行で、サステナビリティ関連の問題を理由に、特定のデスティネーションを避けたという回答者が全体の43~61%を占めた。なかでも最大の要因が「人混み」で、特にフランスの旅行者から多く挙がった。次に多かったのは「行き過ぎた商業化」だった。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社から届いた英文記事を、同社との正規提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:Do travelers connect overtourism and sustainability?