文化庁は2024年10月9日、ユネスコの世界遺産登録を目指す「彦根城」について、ユネスコの諮問機関であるイコモスからの事前評価結果を公表した。彦根城は日本の暫定リストに約30年前から記載されているが、推薦に必要な国からの登録を得られていない。
「彦根城」は江戸時代の地方政治拠点として建築と土木の見本であり、大名統治システムを有形資産で示すものとして提案されているが、現時点では単独の資産で大名統治システムを完全に表現されているかという点があり、イコモスからは根底にある思想、幕府と大名との関係、長期間の安定と繁栄を可能にした理由などをより説明させることが必要だとの助言があったという。そのうえで、ほかの城など地理的に離れた複数の関連物件をひとまとめにして推薦する「シリアル推薦」の可能性も検討すべきだとした。
こうした結果を受け、滋賀県の三日月大造知事は、「私たちが考える徳川の平和の謎を解き明かす鍵である徳川幕府による大名統治システムが、世界的な観点から見て普遍的価値を持ち基準を満たす可能性があるとしていただいたことは大きな成果」と評価しつつ、「推薦書作成に向けて説明を充実すべき点についても、さまざまな示唆をいただいた」などとコメント。一歩、歩みを進められたとして、文化庁などとも連携しながら、2027年の世界遺産登録を目指す考え。
なお、事前評価制度とは推薦書の本提出前に諮問機関から技術的・専門的助言を受ける制度。諮問機関との対話を通じて、質の高い推薦を促すことを目的としている。今回の事前評価結果は5年間有効。期限までに正式版の推薦書が提出されない場合は、改めて事前評価を受ける必要がある。