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世界の旅行大手であるトリップアドバイザー(tripadviser)、ウーバー(Uber)、プライスライン(Priceline)、ブッキング・ドットコム(Booking.com)、Hipcampが、OpenAIがリリースしたAI搭載エージェントツール「Operator」を支援していることが、旅行業界で話題になっている。現在、研究段階にあり、Proサブスクリプションのユーザーのみが利用できるこのツールは、デジタル旅行マーケティングの将来について疑問を投げている。検索という手法がなくなれば、旅行マーケティング担当者の戦略や予算も根本的に変わるのではないか。
「Operator」は、2025年1月にOpenAIが発表した入力、クリック、スクロールでウェブサイトとやり取りできるAI搭載のエージェントツール。旅行、食料品、イベント、レストランなどの検索・購入(予約)が可能になるAIツールだ。
Operatorと協業する大手OTA
Operatorの開発をサポートしている企業は、それが具体的にどのようなものになるのか、まだ掴めていないものの、長期的にはビジネスでの展開はありうると考えている。短期的なメリットは、毎週約3億人のユーザーが利用するOpenAIを注意深く観察することで、どこに潜在旅行者がいるのかを掴めることにある。
トリップアドバイザーのデータおよびAI責任者であるラフル・トドカー氏は「ビジネスチャンスは旅行者の嗜好の変化と非常に密接に関係している。私たちは常により多くのトラフィック獲得源を探している」と話す。トリップアドバイザーは2023年初頭からOpenAIと提携。7月には旅程ジェネレーターをリリースした。また、最近では旅行計画改善のためにAI回答エンジン「Perplexity」とも提携した。
また、トドカー氏は、「Operatorとの提携が収益性の観点からどういった意味を持つのかまだわからない」と言いつつも、「ある時点で、収益化の要素は進化していくだろう」と予測。「それが、検索メディアや検索費用を費やすことなく、頼りになる情報源になるのであれば、非常に魅力的。Operatorを通じて流入するトラフィックの精度が高ければ、おそらくコンバージョン率は上昇するだろう」と続けた。
ウェブサイトの未来は?
インターネット、ウェブサイトなどは、主に人間が使用するために構築されている。しかし、Operatorが可能にするエージェント対ウェブサイトまたはエージェント対エージェントの関係性は、将来的にウェブサイトのあり方を変えるかもしれない。
生成AIソリューション企業Intentfulのマリナ・ペトロバCEOは、「自律型のAIエージェントは、タスクを実行するために使える明確な情報を優先することから、ウェブサイトのコンテンツは、マーケティングメッセージ以上のことに注意を払う必要があるかもしれない」と話す。
また、「SEOはできるだけ高いランク付けが目的だ。一方で、AIエージェントの初期の実験では、検索から始まるエージェント主導の意思決定プロセスで、最初の結果に単純に従わないことが何度も確認されている。それは、ブランドの公式サイトや法人サイトであってもだ」と明かしている。
ペトロバ氏によると、ウェブサイトは、今後、4つのターゲットオーディエンスを持つ可能性が高いという。人間、AIエージェント、ウェブサイトのAIアシスタント、SEOまたは生成エンジン最適化クローラーだ。
一方で、トリップアドバイザーのトドカー氏は、現在のウェブサイトの形がなくなるとは考えていない。「ウェブサイトの役割は、データ、洞察、推奨事項で本当に信頼できる情報源。それがなくなることはない。なぜなら、AIエージェントには情報を利用する情報源が必要となるからだ」という。
Kiwi.comのブランド担当副社長マリオ・ガビラ氏は、「将来的に、ウェブサイトが人間とAIエージェント両方のトラフィックの最終地点になった場合、現在のユーザーエクスペリエンスは再検討され、2つの異なるユースケースの間でバランスを取る必要が出てくるかもしれない」と話す。また、エージェント対エージェントのやり取りは API接続によって行われことから、従来のウェブサイトのやり取りよりも拡張性と信頼性が高くなると見ている。
マーケティングはどのように変化する?
今後のマーケティング戦略では、AIエージェントの存在を考慮する必要がある。
ペトロバ氏は「基本は変わらないが、どのように進化に対応していくかが重要」と話す。「多くの企業は即効性のある検証を求めるため、パフォーマンスマーケティングに大きく依存してきた。しかし、これは健全な長期戦略ではない。AIエージェントやAIアシスタントの登場で、ウェブサイトだけでなく、マーケティング戦略を総合的に刷新していく必要がある」と訴え、特にブランドの構築がさらに重要になるとの考えを示す。
プライスラインのチーフ・プロダクト・オフィサーのケビン・ヘリー氏も、それに同意。「エージェントが広告をクリックする可能性は低く、さらに、ユーザーが自分の好みのウェブサイトの利用をエージェントに指示する可能性があるため、よりブランディングが優先されるだろう」という。
また、ガビラ氏は、マーケティング予算がクリック単価からエージェント検索単価に移行する可能性があると指摘する。
どれくらいの速さで変化する?
Operatorには賛否両論あり、いつ実装されるかは分からない。
ペトロバ氏は急速に導入が進むと見ている。「早期に行動を起こす企業は、この変化を効果的に乗り切る上で大きなアドバンテージを持つだろう。AIエージェントの導入が拡大するには12~24か月かかると思うが、すでに生成AI検索は稼働しており、AIが見つける割合は増加している」と話す。
一方で、大規模なAI指向検索への移行には、しばらく時間がかかると見る向きもある。ガビラ氏は「AIの能力が飛躍的に進歩しているとしても、人間はそれをどう活用するかを学び始めたばかり。AIエージェントは、その最終的な名前が何であれ、より大きな影響を与えるかもしれない。しかし、結局のことろ、すべて人間の関心が、そのスピードを決めることになる」と話した。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:OPENAI’S “OPERATOR” AND ITS IMPACT ON TRAVEL SEARCH AND MARKETING
著者:Morgan Hines