エジプト観光大臣に聞いてきた、政府公認の展覧会「ラムセス大王展」を旅のきっかけに、直行便の増便にも意欲

2025年3月8日に開幕した「ACNラムセス大王展 ファラオたちの黄金」展のオープニングセレモニー出席のためにエジプトのシェリフ・ファティ観光・考古大臣が来日し、同展覧会への期待や日本市場への取り組みなどを語った。

2024年のエジプトへの外国人旅行者は、前年比5%増の約1570万人と過去最多を記録。コロナ前2019年比でも21%増となった。2024年上半期の観光収入も前年同期の63億ドル(約9260億円)から66億ドル(約9700億円)に増加した。

ファティ大臣は、「中東は一括りに扱われがちだが、エジプトの国情は安定している。それがこの数字に表れている」と評価。隣国のパレスチナの問題はエジプトには波及しておらず、安全に旅行が楽しめることを強調した。

エジプトのインバウンド市場が拡大する一方で、日本人旅行者数の回復は遅れている。2019年は年間約5万2000人が訪れたが、コロナ禍を経て2022年は1万1000人にとどまった。ピーク時には10万人を超えていたことから、ファティ大臣は、現状について「日本のような大きな国の数字ではない」と分析する。

日本市場への期待を語るファティ観光・考古大臣

そのなかで、東京で始まった「ACNラムセス大王展 ファラオたちの黄金」に大きな期待を寄せる。

この展覧会は、9月7日にかけて、東京・豊洲市場前の「CREVIA BASE Tokyo」で開催。エジプト政府公認の展覧会として、古代エジプト新王国時代(紀元前1539年~1075年)に由来する180点の貴重な遺物や華麗な黄金の工芸品の実物が、新しいスタイルで展示される。これまで、ヒューストン、サンフランシスコ、パリ、シドニー、ケルンで開催され計200万人以上を動員。日本開催はアジア初上陸となる。展示だけでなく、VRやプロジェクション・マッピングなどの没入型体験も楽しめる。

「ACNラムセス大王展 ファラオたちの黄金」に展示されている「ラムセス2世の巨像の頭部」

VRでは、ラムセス大王の妻ネフェルタリが、愛する夫の元へ向かうストーリーを体験

ファティ大臣は、「この展示会は、エジプト観光のプロモーションにも繋がるはず。これをきっかけに、日本人にエジプトのことを思い出してもらいたい」と話した。

また、今年7月3日にギザに正式オープンする「大エジプト博物館」についても言及。「これまでにないユニークな体験や展示が楽しめるはず。歴史や文化を尊重する日本人にとって、最適な観光コンテンツになるだろう」と期待を込めた。

文化観光は、「最優先は保護」

ただ、課題もある。一つは日本/エジプト間の航空便。現在のところ、直行便はエジプト航空のカイロ/成田線の週1便にとどまっている。ファティ大臣は、日本旅行業協会(JATA)との会談でも、この点を指摘されたことを明かしたうえで、「今年末までには週3便程度に増便できるように支援していきたい」考えを示した。

さらに、日本人旅行者がカイロ、ギザ、ルクソールなど、有名観光地に偏っている現状についても言及し、他地域への誘客も進めていく考え。「エジプトは古代遺跡だけではない。地中海や紅海のビーチリゾート、ナイルクルーズ、砂漠、オアシスなど多様な観光素材に溢れている」とファティ大臣。今後は「比類なき多様性」を打ち出し、「旅行者それぞれのニーズや希望に合わせた適切なマーケティングを進めていく」方針だという。

エジプトは、国の遺物を観光に活用する「文化観光」のパイオニア。日本でも、文化庁を中心にさまざまな文化遺産を観光コンテンツとして活用する政策が進められているが、ファティ大臣は「まず優先されるべきは維持と保護」と強調する。「もちろん経済的側面も重要だが、エジプトではそれが限度を超えないように気を配っている。保護を優先すれば、商業的活動を含めて全てうまくいく。経済優先は、とても危険なことだ」と付け加えた。

※ドル円換算は1ドル147円でトラベルボイス編集部が算出

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