今年で4回目となるラグジュアリートラベルに特化した商談会「ILTM (International Luxury Travel Market) JAPAN」が東京で開催。商談会に先駆けて行われたオープニング・フォーラムでは、3人の識者が日本のラグジュアリートラベルについて、日本人旅行者と訪日外国人旅行者双方の観点から発表した。富裕層が求める高級な旅とはどういったものか。日本のラグジュアリートラベル市場の潜在力は? 識者3人の見解をまとめた。
*写真はウィズダム・ツリー・ジャパンのイェスパー・コール氏
富裕層はパーソナルな旅を求める、効率より「大切されている満足感」
-アメックスの中島氏
「単に高価なものだけではなく、信頼できる人に最初から最後まで面倒を見てもらえることに対価を払う」—アメリカン・エキスプレス・ジャパン代表取締役社長の中島好美氏は、ラグジュアリーの定義をそう話す。そのうえで、同社によるサービス体験に関する調査の結果から、「富裕層のあいだではパーソナリゼーションへの期待は大きい」と指摘した。
旅行でも同様にパーソナルな旅を求める傾向が強く、「好みや自分のニーズを形にしたい欲求は強い」。「特別感や信頼感はお金には代えられない」と、感情的なベネフィットの大切さを訴えた。また、情報収集や予約などでデジタル化が進むが、「10人に8人が人間的な誠意ある対応を求めている」と紹介。人間とデジタルの融合が今後ますます注目されていくとした。
このほか、中島氏は日本人が求める顧客サービスについても触れ、日本人は人間味、礼儀、信頼を重視する傾向が強いことから、「効率よりも大切にされているという満足感が重要」と指摘した。
歴史文化ツーリズムの創出を、富裕者層旅行には「江戸」がキーに
-森トラストの伊達氏
森トラスト専務取締役の伊達美和子氏は、ホテル運営の視点から訪日市場について発言。2,000万人に迫る勢いの訪日外国人数だが、そのうち約80%をアジアからの旅行者であることから、「アジアが強すぎる」と指摘し、「客単価の高い欧米人をもっと呼びこむべきではないか」と持論を展開。そのためにも、森トラストとしては「魅力のあるホテルづくりをしていく」と強調した。また、欧米人は日本の歴史文化に関心が高いことから、「歴史文化ツーリズム」の創出を呼びかけ、「例えば、東京のPRでは、知られていないことが多い『江戸』の情報も発信していくことが大切ではないか」と提案。「これがラグジュアリートラベルにつながる」とした。
伊達氏は、訪日市場での課題も指摘。地域性や文化性に焦点を当てながら「Japan Brand」をつくり上げる重要性を取り上げたほか、グローバルスタンダードを確保しながら、和テイストを取り入れたイノベーションを起こす必要があるとした。
森トラストでは、2020年度から2022年度の開業を目指し、白馬、箱根、奈良、沖縄瀬底島、沖縄伊良部島などでリゾートホテル開発を進めていく計画。また、東京でも虎ノ門トラストシティー、銀座2丁目でホテル開発を進めていく。伊達氏は、こうした開発を通して、「日本の観光立国に貢献していきたい」と意気込みを表した。
新たな中間層の出現に期待、富裕者層旅行で日本市場を高評価
-ウィズダム・ツリーのコール氏
ウィズダム・ツリー・ジャパンのイェスパー・コール氏は、エコノミストの立場から日本経済の力強さに触れ、ラグジュアリートラベル市場としての日本を高く評価した。また、日本の社会状況についても言及。高齢化が急速に進んでいるものの、60歳以上の資産は依然として高く、今後も消費が期待できるとした。さらに、少子化によって労働市場がタイトになってきていることから、正規雇用が増えており、「新たな中間層が生まれる素地がある」と将来を展望した。
今年4年目となるILTM Japanは、今年3月初旬に開催。出展者数 84社(海外46社、国内38社)、バイヤー数 75社 (国内39社、海外36社)で盛大なものとなった。インバウンドとアウトバウンドの比率はほぼ半々。国内外から富裕者層旅行に関心の高い関係者が集い、こうした識者の発言に耳を傾けた。