JTB高橋社長が決算会見で語った「次の打ち手」を整理してみた、「個人旅行事業の再構築」から「リアルエージェントの真価の発揮」まで

JTB代表取締役社長の髙橋広行氏は2018年度の連結決算会見で、現在進めている経営改革での個人旅行事業の取り組みについて話し、今後も主力事業として重視していく考えを強調した。JTBでは2018年度中に、ウェブ販売でOTAアゴダと提携。店頭販売では予約制や顧客のステージ制・担当制を導入し、今年4月には相談料収受の試行を始めており、「戦略として、チャネルの役割機能を明確化する」と説明。ネットと店頭の双方を強化しながら扱う商品のすみ分けをすることで、リアルエージェントとしての強みを発揮していく考えだ。

JTBでは2018年4月から「第3の創業」と位置付け、時代や環境の変化に対応して、安定的な利益を残せる企業体への経営改革に取り組んでいる。従来型の旅行業モデルからソリューションビジネスへとビジネスモデルの転換を図り、2025年度にはソリューションビジネスによる収益が全体の半分となる構造とするのが、改革のイメージだ。

髙橋氏はソリューションビジネスについて、「顧客の抱える課題にソリューションの提供で課題を解決し、顧客の成果を見出していくもの」と説明。その上で「法人事業だけではなく、個人旅行事業もその方向に舵を切っていく。個人のお客様は目的や課題があるから旅行に行くわけで、旅行はニーズや課題を解決する手段。それをお客様としっかり向き合う中で把握し、最適な商品やサービスを提供することもソリューションビジネスだ」とし、同社の個人旅行における対面販売の重要性を示した。

迫られる収益モデルの変革、ネット販売の強化、来店顧客への対応

個人旅行事業は、旅行業を取り巻く環境変化の中でも最も大きな変化が起こっているところ。サプライヤーの直販が進み、競合ではOTAなどオンラインを基盤にグローバルプレイヤーの進出や異業種の参入が相次ぐ一方、テクノロジーの進化でタビナカ領域を中心に、旅行・観光にまつわる新たなサービスも生まれている。

商品造成でも、サプライヤーが、これまで固定だった旅行商品向け運賃に、ダイナミックプライシング(価格変動)型運賃を導入する方針を進めており、収益モデルの変革に迫られている。JTBが2018年度の連結決算で過去最大の赤字となった要因の一つ、基幹系システムの開発中止に伴う減損処理は、この仕入れの変化を見据えた新システムの開発に切替えを決断したことによるものだ。

髙橋氏は、今後の個人旅行事業では「仕入れ造成、販売のバリューチェーン全体で改革を進めていく」と説明。まず、ダイナミック化でパンフレットのない商品が主流となっていくことを踏まえ、ネット販売の強化としてアゴダと提携した。これにより「るるぶトラベルとジャパニカンのサイト力を格段に高める」と述べ、グローバルOTAと対等のサイト力が持てると自信を示す。

さらに、「店頭販売の最大の課題はあらゆる商品を取り扱い、お客様をお待たせしてしまっていた。これが不満のもとだった」との認識を示した。ネット販売の強化はその解消でもあり、「インターネットで販売できる商品はネットで販売する」との考えもあるという。

一方、「価値のある商品、ハイエンド商品など企画性を重視する旅行者のための企画商品は残る」とも述べ、店舗は「時間をかけてお客様と向き合い、コンサルティングをして質の高いサービスを提供する」と位置付ける。そうすることが、「OTAと対抗していくためにも間違いなく必要。それができなければリアルエージェントの存在価値はなくなる」と強調した。

店頭販売で昨年4月に始めた予約制、顧客のステージ制・担当制は、課題である待ち時間の解消とソリューション型のサービス提供を目的に導入したもので、特に予約制は今後大々的に行なっていく方針。今年4月から一部で試行している相談料については、反応を見極めながら今後の導入有無を決定するが、対象店舗では現在、予約での来店者や利用頻度の高い顧客については相談料を無料としている。また、熟年層の顧客が多いJTBではネットで購入しやすい商品でも操作を嫌がり、来店を好む人も少なくないとして、一部既存店で画面を通じてコールセンターのスタッフが対応するリモート接客コーナーを設置し、対応しているという。

採用抑制や成長領域への人員再配置で改革を加速へ

髙橋氏は今回の決算会見で、改革を加速させるための選択と集中に向けた経営資源の最適化として、今後4年間で自然減と採用抑制による2000名の人員抑制と、個人事業から法人事業、リアル事業からウェブ事業など成長領域への人員の再配置、店舗網のスクラップ&ビルドを推進する考えを示した。しかし、「切り捨てのリストラではなく、本来の意味での再構築を目指している」と強調。店舗については「閉めるべき店舗は閉め、新しいマーケットとニーズに応じた店舗を作る」とし、専門機能を有する高品質サービスを提供する店舗や、デジタルと人を融合した次世代店舗の開発も進める方針だ。

取材:山田紀子

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