新型コロナで起きた旅行キャンセル、返金を巡り世界のツアーオペレーターはどう対応しているのか?【外電】

新型コロナウイルスの影響による旅行制限は、旅行ビジネスの仕組みが微妙なバランスのうえに成り立っていることを改めて露呈した。中止せざるを得なかったツアーについて、顧客への返金に苦悩するツアーオペレーターは多い。一方で全く返金を行わないツアーオペレーターも見られる。ツアーオペレーター各社の対応をまとめた。

ツアーオペレーターは、旅行先での現地ツアーを提供したり、ホテル、アクティビティなどを手配・販売・運営する。欧米の老舗大手のCollette, Tauck, Globusといったツアーオペレーターは、ツアーをキャンセルした顧客に対してリクエストベースで返金を行っている。一方で、小規模オペレーターのなかには、顧客から払い込まれたお金はすでにベンダーやパートナーに払い込んでいるために、返金に応じることができないところも多い。

また、G Adventuresなど、長年の規約を遵守し、中止されたツアーに対して将来の信用販売(クレジット)以外は受け付けないというツアーオペレーターもいる。それは、再予約によって顧客をつなぎとめようという理由だけでなく、同様に苦境に陥っている世界のサプライチェーンを守るためでもある。

持続可能な旅と後進国の支援をミッションとして掲げるG Adventuresのマネージング・ディレクター・ベン・ペルロー氏は「地域のコミュニティは、本当に苦しんでいる」と話す。

信用販売のルールを守ることよって、「私たちの希望は、地域に旅行者を再び送客することだ。私たちは、設立当初の理念である富の再分配に立ち戻る」と続ける。

影響が長期化するにつれて、多くの会社が返金規約に手を加え始めた。規約によると、中止されたツアーにのみ返金が発生するため、中止の予定を明らかにしない会社もある。

こうした事態を受けて、ASTA (American Society of Travel Advisors)は先月、サプライヤーに向けて、ツアーオペレーターに対して全額返金を求めていくように促した。

しかし、WeTravelが世界の3000社以上のツアーオペレーターとそのパートナーに対して実施した調査によると、事態はそう単純なものではないことが分かった。

ツアーオペレーターには返金できる現金がない

592社から回答があり、その大部分が従業員数20人以下のオペレーター。そのうち、ほぼ半数が旅行者に対して全額返金を行っていると回答。一方、27%がまずはベンダーからの返金を持っていると答えた。

同様に、ベンダーのうち39%がツアーオペレーターに全額返金すると回答。しかし、11%は返金に応じないと答えた。

調査を実施したWeTravelの販売担当トップのルーカス・エニス氏は、「一般的にオペレーターは返金に応じる姿勢を示しているが、残念なことに、その多くにお金がないことだ。その理由は、従業員に支払ったためではなく、パートナーに支払ったからだ」と話す。

「FTC (Future Travel Credits)によって旅行代理店は手数料を手放さない」と多くの会社が強調しているが、ヒューストンのクルーズセンター社長でトラベルアドバイザーでもあるトム・ベイカー氏は「そのようなやり方は、事態を混乱させるだけだ」と話す。

「ほとんどすべてのツアーオペレーターは当初、返金あるいはFTCの対応だったが、次第にFTCか返金なしに変わっていった。つまり、彼らには返金できる現金を持っていないのだ。それは本当に恐ろしいこと。どこが生き残れるのか、とても心配している。今は分からいないことがあまりに多すぎる。私は、トラベルアドバイザーとして、私のクライアントに対して、できるだけ返金するほうがいいとアドバイスをするが、正直なところ、今は自分のお金のことをもっと考えるべきだと言うだろう」。

一方で、別の考え方もある。ラクジュアリートラベル提供するExperience Morocco社のCEOのヒチャム・マハメディ・アラウイ氏は「旅行ビジネスでは、大部分が先払いの関係だ。旅行者が旅行を決めた時に、大部分のお金はホテル、ガイド、そのほか地域のサプライヤーに支払われる。私たちのサプライヤーはすべて、今後もビジネスを継続すると信じている。だから、支払ったお金が失われるのではなく、まだパートナーの手元にあり、旅行者が旅行するときにそれが使われることになると思っている」と話す。

G Adventuresのペルロー氏は、「大切なのは透明性、コミュニケーション、そして一貫性」と話し、「最悪なのは、規約に固執したあげくに、後でその規約を取り下げることだ」と続ける。

顧客中心の大手、返金か追加クレジットで再予約

さまざまな議論や考え方があるなかでも、老舗の大手オペレーターは、旅行者が保険に入っていようがいまいが、中止を余儀なくされたツアーに対しては、全額返金を行っている。

Colletteの副社長ジェフ・ロイ氏は「旅行者に105%のクレジットを提供することで、キャンセルではなく将来の再予約を促している一方で、旅行者が返金を希望すれば、航空会社やサプライヤーからの罰金を差し引かずに、全額現金で返金する」と説明。「私たちには102年の歴史がある。9.11のあとでも、返金で3000万ドル以上を支払った。もっとも今回はそれよりもかなり多くなると思うが」と続けた。

また、ロイ氏は「顧客をすべての中心に置くことが最低限守るべきこと。まず顧客を大切にし、それからビジネスパートナーと話し合いをする」とも言う。

TauckとGlobusも同様な考えだ。Globusのマーケティング担当副社長のスティーブ・ボーン氏は「私たちが注力していることは、顧客に対して選択肢を示すこと。返金か、それとも旅行のスケジュールを変更するか。スケジュール変更の場合は、’Peach of Mind Letter’と呼ぶクレジットと再予約ボーナスを付けたGlobusのファミリーブランド商品を提供する。もし、その商品が選ばれたときは、手数料を先払いする」と話す。

Tauckは、Tauck Travel Walletを活用。将来の旅行のために、本予約で一人あたり500ドル、仮予約で一人250ドルの追加クレジットをそのWalletに積み立てる。Walletの積立金に有効期限はないが、クレジット分は、2020年あるいは2021年にTauckのツアーかクルーズで利用する必要がある。

※この記事は、米旅行業界誌ニュースメディア「トラベルウィークリー(TravelWeekly)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事(英文)はこちら:A refund for a canceled tour? Some firms offer credit only(Copyright 2020 by Northstar Travel Group.)

著者: ジェリ・クローシング(Jeri Clausing)

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