星野リゾート代表の星野佳路氏は、2020年10月13日に開催したオンラインのプレス発表会「星野リゾートLIVE2020」で、コロナ発生後から現在までの運営状況を説明した。
星野氏によると、4月の底の状態から、9月には国内41施設のうち27施設が昨年レベルにまで回復。その要因として、市場が個人客中心に動いたことに加え、上向いた施設の特徴として「マイクロツーリズムを取りやすく、デスティネーション型の施設は戻しやすかった」と説明した。
例えば、従来、稼働の47.3%をインバウンドが占めていた「星のや 京都」は、今年は京都や大阪などからのマイクロツーリズムで39.9%を獲得し、インバウンドの減少分の補完に寄与。これに加え、同社がGoToトラベルキャンペーン(GoTo)を開始した8月17日以降は、予約が急上昇し、10月には前年に追いついた。
一方、苦戦したのは都市型ホテルと離島の施設。「都市型ホテルは、イベントや展示会、スポーツ鑑賞などを目的に訪問する人の宿泊需要があり、我々だけでは戻しにくい。離島はマイクロツーリズムがないので難しかった」のが理由だ。
さらに、同社が自社ホームページでの直接予約に注力していたことも、早期回復につながった要因と説明。旅行会社やオンライン旅行会社(OTA)が活発に動けない時期にも予約を積み重ねることができた上、「OTAは首都圏や海外などへの発信が強いが、マイクロツーリズムには弱かった」と話す。星野リゾートでは現在、予約の5~6割を自社ホームページで獲得しており、コロナ禍では地元の人に旅行をしてもらうための情報を、タウン誌などにチャネルを変えて発信し、集客に繋げていたという。
星野氏は、「日本では初めての危機だが、経験してみると、普段から準備しておくことで対応できることがあると分かった」と述べ、マクロツーリズムや予約チャネルを整備する必要性を強調。9割減が続けば経営は難しいが、5割減であれば、コスト削減をしながら宿泊客にしっかりとサービスをし、余剰人員は雇用調整助成金で調整することが可能との見解も示した。
また、GoToに関しては、「終了後の需要を考え始めている」。「今のプラス効果が、動かなかった4~6月の需要の後ろ倒しなら安心だが、終了後の需要の前倒しであれば心配」と述べ、対策の必要性を示した。
システム投資を強化、周遊型予約も開発へ
さらに、予約システムも強化する方針だ。
星野氏は、「長期的にはOTAやリアルの旅行会社との付き合いは大切」としながらも、「利益の源泉は自社で取得した予約」と強調。同社は現在、5~6割が直接予約で、「実はそこが利益であり、競合のホテル運営会社との競争力になっている。世界大手のホテル運営会社も、直接予約が大きなトレンド」と説明する。
同社が目指すのは、利用者が利用したい宿泊施設をすぐに選べて、一番良いレートで瞬時に予約できるようにすること。このほど、同社ホームページ上では「ぴったりホテル診断」を開始。AIを活用したもので、同社サイトを訪問した人の趣向や目的にあった同社の施設を5軒、紹介するというものだ。
さらに今後は、周遊旅行に対応する予約システムの開発も考えている。新規開業予定が続く九州地区の各施設を回れるような周遊旅行を一気通貫でできるような仕組みで、すでに予算を確保した。コロナ対策によって、すぐに着手することができないが、星野氏は「中長期的には、ホテル業界の戦いは、オンラインによる予約獲得が重要になることは間違いない」と強調した。