ANA、デジタル健康証明「コモンパス」の実証を開始、羽田/ニューヨーク線で、日系航空では初

ANAとコモンズ・プロジェクトは2021年3月29日、羽田発ニューヨーク行きNH10便でデジタル証明書「コモンパス」の実証実験を実施した。コモンパスの実証は、キャセイパシフィック航空が香港発シンガポール行き、ユナイテッド航空がロンドン発ニューアーク行きで実施しているが、日本の航空会社としては今回が初めて。復路のNH9便でも行われる。

コモンパスは、PCR検査結果をパスポート番号とともに保存し、世界各国の入国要件を満たしていることを証明するアプリ。米ロックフェラー財団の支援を受けて設立された非営利団体コモンズ・プロジェクトと世界経済フォーラムが、世界共通のデジタル証明書として普及を進めているところ。

今回、実証実験に参加したのは、一般ボランティアの大里郁子さんとコモンズ・プロジェクト日本事務局の藤﨑香里さん。二人とも出発72時間前の26日に東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニックでPCR検査を受けた。コモンズ・プロジェクトは、東邦大学およびH.U.グループホールディングス(HUHD)の子会社である医針盤と連携しており、PCR検査結果は、医針盤のアプリ「ウィズウェルネス」に保存され、API連携によってコモンパスにも反映される。

二人は、羽田空港でのカウンターで紙の陰性証明書の代わりにコモンパスを提示し、チェックイン。ニューヨークではコモンパスを利用した米国への入国を実証する。現在、米国入国には陰性証明書の提示が義務化されているが、米税関・国境取締局(CBP)と米疾病予防管理センター(CDC)もこのプロジェクトにオブザーバーとして参加しており、コモンパスによる入国を認めている。

コモンパスでチェックインする大里さん。撮影はプライバシー保護のためデモ機で行われた。しかし、日本を含め世界的にはコモンパスを証明書として認可する国はまだ少なく、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センタープロジェクト長で慶応大学医学部特任講師の藤田卓仙氏は「本人確認とともに、最新の検疫基準を満たしているかどうか、適切な医療機関から発行されたものなのかどうかなど元データと照合できるため、紙の証明書よりもスムーズに入国できるのは確かだが、実用化には各国の認可が必要になる」と話し、世界共通基盤として運用されるには時間がかかるとの認識がを示した。

今後は、PCR検査結果に加えてワクチン接種証明も保存できるようにしていく方針。藤田氏は「コモンパスをフレームワークとして採択した関連アプリとのAPI連携も進めていく」とし、世界各国で進められてるデジタル健康パスポートとの互換性を高めていく考えも示した。

また、日本では経済界とともに、経済産業省の海外渡航者新型コロナウイルス検査センター(TeCOT)とも連携し、PCR検査およびワクチン接種証明をデジタル発行する医療機関を増やしていく。

コモンバスについて説明するANA後藤氏(左)と慶大医学部特任講師の藤田氏一方、ANAデジタル変革室旅客システムソリューション部部長の後藤洋氏は「デジタル証明書で、観光でもビジネスでも海外渡航のハードルが下がり、国際標準の仕組みで陰性・ワクチン接種が正当であると証明できれば、入国制限の緩和にもつながる」と期待感を示した。また、「IATAトラベルパス」など、さまざまなデジタル健康パスポートが開発されている現状について、「コモンパスやIATAトラベルパスをデフォルトスタンダードとして、いくつかのオプションを用意していきたい」との考えを示した。

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