東南アジア最大のスーパーアプリ「グラブ」は、米投資会社アルティメーター・キャピタルの特別買収目的会社(SPAC)アルティメーター・グロースとの合併を通じ、米国の株式市場に上場すると発表した。実現すれば東南アジア企業として過去最大規模の米国市場上場となる見込み。銘柄コードを「GRAB」として、数カ月内にナスダックで取引が開始される。
予想される時価総額は約396億ドル(約4.3兆円)。これにより、グラブは約45億ドル(約4900億円)の現金を獲得する見込みだ。また、プライベートエクイティ(未公開株)ファンドが上場企業の私募増資を引き受けるPIPEと呼ばれる増資も実施し、40億米ドルを調達する予定。このうち、7億5000万ドル(約820億円)は、アルティメーター・キャピタル・マネージメントが管理するファンドから調達する。
グラブは、シンガポールを拠点に東南アジアで、ライドシェアのほか、フードデリバリー、デジタル決済などライフスタイルサービスを提供。2020年の流通取引総額はおよそ125億ドル(約1.4兆円)で、パンデミック前の実績を超えた。東南アジアでは、ライドシェアで72%、フードデリバリーで50%、オンライン決済で23%のシェアを獲得している。ソフトバンクグループ傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資している。
グラブ共同創設者でCEOのアンソニー・タン氏は「この上場によって、東南アジアの存在感がさらに高まることになる。東南アジアが成長すれば、グラブも成長する」とコメントしている。
東南アジアの人口は米国の約2倍。世界で最も早くデジタル経済が成長している地域のひとつとなっているが、電子商取引の規模は米国や中国に比べてまだ小さく、今後さらに成長する余地は大きい。グラブでは、サービスを展開する市場の規模は2020年の約520億ドル(約5.7兆円)から2025年には1800億ドル(約20兆円)に拡大すると見込んでいる。
※ドル円換算は1ドル109円でトラベルボイス編集部が算出