JAL、本格的に「LCC戦略」を始動、成田を拠点に3社ネットワーク構築へ、観光と友人・親戚訪問をターゲットに

JALは、2021~2025年度中期経営計画に基づき、LCC戦略を本格的に展開していく。春秋航空日本(SPRING JAPAN)を連結子会社化するとともに、近日、ジェットスター・ジャパンへの追加出資を行い、子会社ジップエア(ZIP AIR)とともに成田を拠点とするLCCネットワークを構築する。

同社取締役専務執行役員路線事業本部長の豊島滝三氏は会見で、ポストコロナを見据えて、「立ち直りが早いと思われる観光とVFR(友人親族訪問:Visit Friends and Relatives)に焦点を当て、価格志向の強い領域で事業を拡大し、収益の最大化を目指す」と新たな戦略を説明した。

LCCの特徴に、JALグループの強みである安全、ガバナンス、オペレーションのノウハウ、整備やグランドハンドリングなどのリソース、共同調達などをかけ合わせて、「効率性と収益性を高め、LCCモデルの底上げを図っていく」と強調。将来再成長が見込まれるインバウンド客を取り込み、地方に送客することで、地方創生にも貢献していく考えを示した。

LCC戦略について説明する豊島氏豊島氏は、各LCCの役割も説明。連結子会社となったSPRING JAPANは、JALがリーチできない新たな中国市場を、親会社である春秋グループと共同で開拓し、中国特化型のLCCとしてインバウンドマーケットに狙いを定める。

SPRING JAPANは厳しい経営が続いているが、豊島氏は「現在のボーイング737-8000型6機の体制では苦しい。適切な段階で7機に増機すれば、収益性も上がってくる」と説明した。

ジェットスター・ジャパンについては、成田を拠点とした国内市場をターゲットに定める。JALの日本での知名度、ジェットスターの海外での知名度を掛け合わた「デュアル・ブランド戦略」でコロナの影響からの早期回復を目指す。ジェットスター・ジャパンへの出資について、豊島氏は「カンタス航空とジェットスターグループとともに行うことになるが、合計で100億円規模になるのではないか」との見通しを示した。出資比率は50%で現在と変わらない見込み。

ZIP AIRは、ボーイング787を活用し、中長距離国際線を運航。短・中・長距離を組み合わせることで、機材稼働の最大化を図る。2024年度までに10機体制に拡大し、米西海岸、アジアへネットワークを拡大し、ボーイング787の貨物スペースを活用しながら、旅客輸送との二刀流で収益を上げていく考え。豊島氏は「ZIP AIRを新しいLCCのスタンダードにしていく」と話し、多様な価値に対応したサービスと低価格を提供していく方針を示した。

アジア/北米間の際際乗り継ぎに伸びしろ

3社による成田を拠点としたネットワーク形成について、豊島氏は、インバウンド旅行者を国内線で地方に運ぶだけでなく、中国/北米間の際際乗り継ぎも視野に入れていることを明らかにしたうえで、JALの成田での際際乗り継ぎ、羽田での内際乗り継ぎも含めて「あらゆる層の顧客を取り込み、トータルでJALグループの成長力を高めていく」とした。

JALは、今後の需要回復について、国内線は2022年度で2019年度比90%、国際線は2023年度から2024年度と予測。国内線、国際線とも観光から回復し、ビジネス需要の回復は遅れるとの見立てだが、豊島氏は「アジアから北米のビジネス旅客需要には伸びしろがある。高価値サービスやデジタルマーケティングを使って、この需要を獲得していく」考えを示した。

さらに、「既存LCCを総結集して、まずは立ち上がりの早いマーケットから事業を回復させ、その間にFSC事業を立て直していく」とグループ内でのLCC戦略を位置づけた。JALグループは、中期経営計画の中で、2023年度に1700億円の利益(EBIT)を目標に掲げているが、そのうちLCC事業は120億円程度になると見込む。豊島氏は「ZIP AIRが牽引することで、LCC事業の売上を倍にしていく」と意気込みを示した。

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