サステナブル観光で10年後の旅行市場に変化を、英ヘンリー王子設立の推進団体CEOが語る未来

環境保護への取り組み強化は、旅行業界に大きな影響を与えるだろうか。そのなかで、旅行会社の役割や責任とは何だろうか。この二つの問題は、新型コロナウイルスからの回復を最優先課題とする旅行会社にとって、頭の痛いことかもしれない。

旅行会社は、企業としての社会的責任として、業界での二酸化炭素削減に取り組む意思を示すが、それは多分にリップサービスであったり、長続きしない場合もよくある。

英ヘンリー王子(サセックス公爵)は2019年にサステナブルツーリズム(持続可能な観光)を推進する団体「Travalyst」を設立した。設立メンバーには、ブッキング・ドットコム(Booking.com)、スカイスキャナー(Skyscanner)、シートリップ(Ctirip)、トリップアドバイザー(Tripadviser)などのOTAとともに、カード会社のビザ(VISA)も名を連ねる。2021年6月下旬に開催された「フォーカスライト欧州2021」には、TravalystのCEOサリー・デビー氏が登場。サステナブルツーリズムの発展に必要なことについて語った。

サステナブルツーリズムを主力商品に

デビー氏は、サステナブルツーリズムやレスポンシブルツーリズム(責任ある観光)にはいろいろな解釈があり、旅行者がそれを選択するのは簡単ではないとしたうえで、Travalystの役割として、「旅行者に対して、明確で一貫した情報を提供すること」と説明した。

また、あるOTAの調査では、「パンデミック以前から環境に優しい旅行を選択をしたいと思っていたが、それを見つけられない」といの回答が多かった。また、旅行メタサーチのスカイスキャナーが2019年に立ち上げた、環境に優しいプロダクトを選択できる「グリーナー・チョイス」では、1000万人以上が二酸化炭素排出量の少ないフライトを選択したという。デビー氏は「消費者は、環境問題に対して正しい選択をしたいと思っている。しかし、消費者の意志とサプライヤーによる取り組みとの間にギャップがある」との認識を示し、それを埋めるのもTravalystの役割とした。

TravalystのデビーCEO一方、さらにサステナブルツーリズムを進めていくためには、消費者の意識の向上とサプライヤー側の取り組みの両方が求められるが、デビー氏は「それは鶏とたまごの関係。成果を出すには業界、政府、NGO、消費者など全員が役割を果たすべきもの」と発言。そのうえで、政府の取り組みは必然的に遅れることから、「まず、市場が変化を促していく必要がある」と主張し、事業者に対して、環境への取り組みを事業化し、それを主力商品にしていく必要性を訴えた。

このほか、サステナブルツーリズムにおいては、観光による地域再生も重要なポイントと指摘。「地域の環境や文化の保護だけでなく、再生においても観光の果たす役割は大きい」と持論を展開した。また、そのなかで重要な点は、旅行者のニーズだけでなく、地域住民の声に耳を傾けることとし、「それが、持続的なサステナブルにつながる」との考えを示した。

「旅行は、二酸化炭素削減で重要な役割を担っている。しかし、世界的な気候変動への取り組みが議論されている中で、サステナブルツーリズムはまだサイドラインに置かれたままで、中心的な役割にはなっていない。今後、サステナブルツーリズムを推進していくためには、旅行者を含めて旅行に関わるステークホルダーが手を取り合って、同じ方向を向いていく必要がある。関係者が協力すれば、社会的に大きなインパクトを与えられるのではないか」とデビー氏。10年後の旅行市場の変化に期待を寄せた。

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