東京2020を契機にした訪日意欲向上は世界で3.9億人、日本政府観光局が推計、インバウンド再開見据えて取り組む3つの重点施策も発表

日本政府観光局(JNTO)は定例会見を開き、2021年夏に開催された東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)に合わせて実施した海外への情報発信について、その効果を測定した調査結果を発表した。調査した内容は、JNTOのプロモーション効果、海外居住者へのアンケート、海外メディアへのアンケート、2025年の大阪・関西万博などの国際的なイベントへの関心度。

海外居住者へのアンケートでは、13カ国・地域8034人に東京2020を通じた日本への関心動向を調査。それによると、回答者の44.2%が日本への興味が強まり、パンデミックが落ち着いた後の訪日意欲は73.2%となった。将来の訪日意欲を示した回答者のうち、38.6%が東京2020を通じて関心が高まったと答えていることから、新たに3.9億人相当の訪日意欲を向上させたと推計した。

新たに訪日意欲が向上した人がリーチしたチャネルを見ると、最も多かったのが競技の視聴で約2億人。SNS投稿など約1.8億人、プロモーションが約1.6億人、報道が約1.4億人となった。

報道資料よりJNTOは、東京2020に向けて、米国、中国、英国、フランスを重点市場と位置付け、プロモーションを強化。その4カ国のアンケート対象者のうち70%以上がJNTOの広告を視聴した結果、訪日意欲が高まったと回答し、米国で独占放映権を持っていたNBCの調査でも、CM視聴者のうち95%が日本にポジティブな印象を持ち、40%が日本を次の海外旅行先として検討すると回答した。

また、回答者の33.2%が東京2020の広告宣伝などを通じて「日本の印象が良くなった」と回答。具体的には、テクノロジー、歴史・伝統文化、景色・風景など日本の強みでの印象が強くなった。

海外メディアへのアンケートでは、8割以上が日本への再訪取材に前向きな姿勢を示し、2025年の大阪・関西万博などのイベントにも一定の関心が寄せられる結果となった。

JNTOでは、大会に合わせて、重点市場1500人以上のジャーナリストにさまざまなテーマでニュースレターを配信。そのリーチ数は13.4億人にのぼったという。

海外居住者の国際的なイベントへの関心度については、66.5%が日本でのイベントに訪れたいと回答。そのうち、大阪・関西万博への参加意欲は27%で最も高くなった。

JNTOは、訪日プロモーションに多くの外国人がリーチし、それによって旅行先として日本の印象が高まったとして、東京2020で得たレガシーを活用して、「日本ファン」の獲得にさらに注力していく考えだ。

報道資料より2022年度は「高付加価値旅行」「サステナブルツーリズム」「アドベンチャートラベル」

このほか、定例会見では、JNTOは2022年の取り組みも説明。インバウンド再開を見据えて、「高付加価値旅行」「サステナブルツーリズム」「アドベンチャートラベル」を重点的に進めていく方針を明らかにした。

高付加価値旅行については、今年1月に「高付加価値旅行推進室」を設置。富裕層向けのコンテンツの収集を強化するほか、国内オペレーターやコンシェルジュなどとのネットワーク化、海外旅行会社を通じたセールスの拡充などで組織横断的に取り組みを強化する。会見に臨んだJNTO理事の蔵持京治氏は、「インバウンド再開後は航空運賃が高いと予想されることから、先に富裕層が動く可能性がある」として、この市場での需要拡大に期待を示した。

JNTOの取り組みを説明する蔵持氏サステナブルツーリズムでは、新たに「サステナブルツーリズム推進室」を設置。全国のサステナブルツーリズムに関わる施設やアクティビティ50件をデジタルパンフレットにまとめた。さらに、来年度にはコンテンツを拡充したうえで、特設ページも開設する計画だ。現在サステナブルツーリズムについては、欧州が先行しているが、「今後はその意識は世界的に高まっていく」(蔵持氏)との考えだ。

アドベンチャートラベルについては、ATTA主催の「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)」が2023年に北海道で開催されることが決まったことから、これを契機に訴求を強化していく。具体的には、海外での商談会に参加し、日本のアドベンチャートラベルをアピールするほか、JNTOのサイトで特設ページを拡充し、モデルルートやアクティビティを海外に発信していく。さらに、蔵持氏は現地ガイドなどの人材育成も重要と指摘。「受け入れ体制を整えるために、自治体やDMOと協力していく」方針を示した。

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