OYO Japanは2022年4月1日、社名とブランド名を変更することを発表した。社名は「Tabist(タビスト)株式会社」に、ブランド名は「Tabist」とし、旅館向けブランド「OYO Ryokan」も新ブランドに一本化する。OYOのグローバルで統一したホテルチェーンから、日本の旅行者と宿泊事業者の環境にフィットした旅体験を提供するホテル事業会社へと転換する。
OYO Japanは世界的ホテルチェーン「OYO」の日本法人として2019年2月に発足。2021年6月に株式会社化し、ソフトバンクの子会社となった。フランチャイジーである加盟宿泊施設に対し、宿泊管理システム(PMS)やダイナミック・プライシングの仕組みなど提供。ソフトバンクとOYOの最新テクノロジーを活用した「集客最大化」「売上最大化」「生産性向上」「オペレーション代行」を4つの価値とし、宿泊施設の運営支援をしている。
代表取締役社長の田野崎亮太氏は、今後も引き続きこの強みに注力することを説明した上で、ブランド刷新の理由を「ゲストに本当に愛されるブランドは何か、使いやすいウェブやアプリを提供できているか、考え切れていなかった。コロナ禍でマイクロ志向に変化した旅行者の動態を踏まえたブランド戦略をする」と話した。
新ブランド戦略は、宿泊施設の個性を生かす仕組みを作ることで、人生を豊かにするような旅体験の提供を目指す。テクノロジーで旅をより手軽に提供してユーザーが求める宿泊施設を探しやすくしながら、宿泊施設やそのエリアの魅力を打ち出した顧客体験を提案する。
そのツールとして同社は2022年4月に、新アプリ「Tabist」をリリース。宿泊施設や地域と一緒にコアなご当地体験を作り、ユーザーに提案する。例えば、中国系の住民が多いエリアとして知られる埼玉・西川口のホテルでは、地域の中華料理のオーナーシェフによる料理教室のプランなどを企画。アプリで近くにいるユーザーに発信したり、予約をできるようにする。
田野崎氏はブランド刷新について、「コロナ禍で、より日本に目を向けなければならない状況になったことが大きなトリガーになったのは間違いない」としながらも、「日本の文化や風情を体験できる日本発のブランドは、訪日観光客にも魅力的であり、さらに価値を提供できる」と自信を示した。
実はコロナ以前でも、日本の加盟宿泊施設におけるインバウンドの割合は平均10%程度だった。これが新ブランドによって、「インバウンド観光の再開後は訪日客が以前の2倍になり、平均稼働率を引き上げることも考えられる」と期待する。現在、OYOのグローバルネットワークとの相互送客もしていく予定だ。
ミレニアル世代もターゲットに
現在(2021年1月)の加盟施設数は43都道府県の235施設・約7000室だが、2023年3月には全国300施設・1万室への増加を目指す。稼働率が低く、デジタル化や人手不足、集客などの課題を抱える中小の宿泊施設を主なターゲットに、日本の宿泊施設にあった仕組みを提供するほか、PayPayを活用した販促、スマートチェックイン導入などで施設の課題解決を支援する。
一方、消費者とのエンゲージメントでは、現在、アプリやウェブサイト、メルマガの登録者数の計10万人を20万人に伸ばしたい考え。顧客層を従来の40代・50代のビジネス客やその休日旅行に加え、新たに30代のミレニアルの客層の取り込みも狙う。
田野崎氏は「ミレニアル世代で1人でも旅を楽しむような客層をとっていきたい。30代はコストにも敏感で、手軽な旅を提供する強みを発揮できる。また、モノよりコト体験を重視する客層でもあり、我々の加盟施設ではそれぞれ異なる体験ができることを訴求できる」と話した。