世界最大級の観光関連国際組織「スコール」とは? 日本トップに活動の内容を聞いてきた

SKAL公式サイトより

コロナ禍で大打撃を受けた観光産業。ようやく海外各国の入国条件や日本帰国時の制限などが緩和されるなか、需要回復に向けて結束を呼びかけているのが各旅行関連団体だ。観光産業関連企業のマネジメント層が集う、世界最大級の国際組織のスコール・インターナショナル(SKAL International)もそのひとつだ。

世界のネットワークは100カ国以上、325クラブに上り、約1万3000人が加盟している。さまざまな会合を通じて観光産業の発展に向けた議論を深めているほか、日本でも2022年5月、スコール・インターナショナル東京がウクライナ大使館に支援金を寄贈するなど、観光に欠かせない世界平和の橋渡しにひと役買っている。

今年、スコール・インターナショナル日本の新会長に就任したデルタ航空日本地区社長の大隅ヴィクター氏に、ポストコロナに向けた展望を聞いた。

スコール東京がウクライナに支援

「未曽有の危機だからこそ、スコールへのチャレンジを通じて、世界で戦える人材になってほしい」――。スコール・インターナショナル日本の新会長に就任した大隅ヴィクター氏はこう語る。

スコール・インターナショナルは、観光関連産業のマネジメント層以上が集う国際組織。1932年にパリで設立され、今年90周年を迎える。旅行会社や航空、クルーズ、鉄道、フェリー、観光局、ホテル、コンベンションセンター、トラベルメディアなどのリーダーがメンバーとなり、さまざまな会合を通じて共通知識を深め、議論をおこなう機会を提供してきた。近年はスパ、保険、スポーツツーリズムなど、観光産業の広がりとともに会員のすそ野も広がっている。

日本では前回の東京オリンピックが開催された1964年、観光立国、アウトバウンドの本格化を支えようと有志が立ち上がり、スコール・インターナショナル東京が設立された。現在はスコール・インターナショナル大阪、スコール・インターナショナル名古屋の3クラブがあり、100名強が参加している。

大隅氏が会長を務めるスコール・インターナショナル日本は3クラブを束ねる組織だ。定例会の実施のほか、スコールは非常時に素早くコミッティを発足し行動する。今回のウクライナ大使館への支援金をはじめ、チャリティーディナーやオークションを通じて寄付などもおこなっている。

同組織の公用語は基本的に英語で、日本で開催される定例会の議事進行やスピーチも英語でおこなわれる。なお大隅氏は2022年4月上旬に日本旅行業協会(JATA)がハワイに派遣した視察団にも参加し、スコール・ハワイの役員と意見交換した。「観光復活に向けた国際的なネットワークの必要性とともに、人と人とのつながりの大切さをあらためて実感した」と話す。

2022年4月、ハワイ視察団でスコール・ハワイと意見交換

「2022年は国際交流の扉が再び開かれる節目の年。インバウンドの中心を担う沖縄でのスコールの設立、またアジアのネットワーク強化に向けて尽力していきたい」と、大隅氏は意気込む。

パリで設立され、スペインに本部を置くこともあって、スコール・インターナショナルの会員は約1万3000名のうち、欧州4298名、北米3006名と欧米中心だが、観光産業の復活には経済成長、人口増加が著しいアジアの力が欠かせない。現在2657名のアジア会員を3000名に引き上げて、グローバルでの存在感を増していきたい考えだ。

ポストコロナの観光産業拡大を担うアジア会員

世界100カ国、1万3000人に広がるネットワーク

世界観光機関(UNWTO)、アジア太平洋観光協会(PATA)といった国際組織とのパートナーシップもスコールの強み。加盟するためはスコールが定める業種の企業・団体の従事者であるとともに、会員2名からの推薦、最終的にはクラブ全会員からの承認が必要となる。実際、加盟している会員たちはどのような点にベネフィットを感じているのだろうか。

大隅氏がハワイ施設でスコール・ハワイの役員と意見交換したように、ITB、WTMといった見本市をはじめ、BtoBの商談では、世界の観光産業で活躍するメンバーとのセッションが可能だ。グローバルのデータベースも会員限定で公開されており、パンデミック下で目まぐるしくレギュレーションが変わる出入国関連をはじめ、ネットワークを通じて観光産業の最新の情報を入手することができる。

世界的にサステナブルツーリズム(持続可能な観光)が追及されるなか、スコール会員にグローバル認証の「Safe Travels」スタンプが与えられるのも興味深い。1970年代以降、世界的に観光客が急増する一方で、受け入れ側である地域や自然環境、文化などに負の影響が生じ、国、産業を超えて世界中の人たちが取り組むべきとして、2015年の国連サミットで「SDGs(Sustainable Development Goals)」が採択されたのは周知のこと。サステナブルは新しい時代の観光を推進するキーワード。スコールの会員として認められるためには、持続可能な観光への取り組みも求められている。

スコール・インターナショナル日本、新会長に就任した大隅氏

90周年を迎えたスコール・インターナショナル。新型コロナウイルスの影響から3年を経て、ようやく国際交流の扉が開かれる2022年、テーマに掲げたのは「Time to Change」だ。大隅氏は「これから観光産業として何ができるか。これまでは会員同士の情報交換など内に向けた活動が多かったが、これからはスコールのグローバルネットワークを含めた知見を広く発信することで、観光産業の発展に寄与したい」と話した。

聞き手 トラベルボイス代表取締役 鶴本浩司

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