エイチ・アイ・エス(HIS)が発表した2022年10月期第2四半期(2021年11日1日~2022年4月30日)連結決算は、売上高が685億円、営業利益と経常利益は281億円のマイナスで、最終損益が269億円の赤字となった。最終損失の赤字幅は同期間として過去最大。
同社では今期から会計基準を「収益認識に関する会計基準」に変更しており、旧基準では、売上高は前期比57.4%増の1023億円、営業損失が283億円(34億円の改善)、経常損失が282億円(25億円の改善)、最終損失が270億円(34億円の悪化)となる。
※以下、前期との比較のため、旧基準で表記する。
売上高は旅行事業、テーマパーク事業などすべてのセグメントで増収。営業損失もエネルギー事業以外の大半の事業で改善した。しかし、最終損失はコロナ関連の助成金68億円や固定資産売却益などによる27億円の特別利益があったものの、電力事業のHTBエナジー株式の売却による損失見込額30億円などの特別損失計47億円と、繰延税金資産の減額による法人税等の調整額38億円の計上で、赤字幅は拡大した。
主力の旅行事業は、前年比104.4%増の539億円と倍増。海外旅行、国内旅行、訪日旅行、グローバル旅行のすべてのセグメントで前年を上回った。特に海外グループ会社における海外旅行では、海外法人インバウンドが143.9%増の91億円、海外法人アウトバウンドが512.1%増の256億円と大幅に伸長。各国の出入国の規制緩和に伴い、欧米マーケットを中心に大幅な回復が始まっているという。
旅行事業の完全回復は2024年度を想定、「もう一度、海外旅行1位へ」
HIS代表取締役会長の澤田秀雄氏は、今後の成長に向け、「本来の主力である海外旅行事業を立て直し、反転攻勢に移りたい。もう一度、海外旅行1位を確立する」と意欲を示した。同時に、コロナ禍で強化した国内旅行も引き続き注力し、海外旅行の1本柱ではなく、国内旅行との両輪の柱とする方針だ。
今年3月に代表取締役社長に就任した矢田素史氏によると、海外旅行事業は2022年6月13日現在で39の国地域への主催ツアーを再開。売上高を今期にも国内旅行の435億円を上回る500億円に回復することを目指す。
一方、国内旅行は2024年度にはコロナ前の3倍となる1300億円まで引き上げる。国内・海外旅行の売上高は2024年に2019年度比4.8%増となる4800億円への回復を目標とするが、このうち国内旅行の比率は全体の3割弱に高める方針だ。
このほか、観光ツアーが再開した訪日旅行ではジャパンホリデートラベルとの連携を強め、BtoBビジネスを強化。また、自治体・観光施設との連携によるタビナカの強化、ビジネス・留学での訪日需要の獲得にも取り組む。訪日旅行も2024年度までに2019年と同等水準となる520億円への回復を目指す。
さらに、事業ポートフォリオの再構築として、非旅行事業も強化。中長期には旅行関連事業と非旅行事業の利益の比率を、コロナ以前の8:2からコロナ後には1:1の同等とする方針も示した。官公庁や自治体のBPO案件のほか、質の高い日本産品や事業をHISのリソースで世界へ展開する商社事業を拡大。コロナ禍で社員の出向先となった約50社の企業と人材交流を活性化し、企業同士の強みを生かした事業展開も図る方針だ。
なお、通期の業績予想は、コロナ禍の影響で合理的な算定が困難として、「未定」にとどめた。