ハワイのアウトリガー・ホテルズ&リゾーツは、先駆的なサステナビリティ活動を展開している。国連総会でSDGsが採択された2015年9月よりも早く、2014年には独自の自然保護プロジェクト「OZONE (アウトリガー・ゾーン)」を立ち上げ。また、2022年3月には「アウトリガー・リーフ・ワイキキ・ビーチ・リゾート」に新たに「アオ・カルチャー・センター」をオープンした。旅行者にハワイ伝統文化に対する「マラマ(思いやりの心)」を伝えることで、レスポンシブルツーリズムへの理解を深めている。
海洋保護への本気度を示すOZONEプロジェクト
OZONEの目的は、宿泊者にさまざまな学びやアクティビティを提供しながら、サンゴ礁の成長を改善し、その回復力を向上させることで、アウトリガーを取り巻く海洋環境を保護することにある。アウトリガーは、ハワイをはじめアジア太平洋のビーチでリゾートホテルを展開していることから、海洋保護を重要な使命のひとつとして位置付けている。
主な取り組みのひとつがサンゴ礁の保護と育成。2014年のプロジェクト開始後、2015年6月にはワイキキ水族館、アメリカ海洋大気庁(NOAA)、ポリネシア航海協会、パパハーナウモクアーケア海洋国家遺産などの機関と共同で、サンゴ礁の保護と育成に取り組んでいくことも発表した。
これまで、年間を通じてさまざまな啓発活動を行うとともに、海洋生態系の保護活動に参加する機会を宿泊者に提供。アウトリガーの従業員とともに、およそ100面のフットボール場に相当する面積にサンゴを植え、保護してきたという。
また、サンゴを白化させ、死滅させる原因のひとつとして、オキシベンゾンやオクチノキサートなどの成分が含まれる日焼け止めがあるが、アウトリガー・ワイキキ、アウトリガー・リーフ、ワイキキ・ビーチコマーのプールサイドでは、サンゴ礁に害の及ばない日焼け止めを無料で宿泊者に提供している。
ちなみに、ハワイ州では2021年1月から有害化学物質が含まれる日焼け止めの販売を禁じる法律を施行している。
OZONEのもうひとつの柱がプラスチックゴミの削減だ。アウトリガー・リーフでは、ペットボトルの廃棄を減らすために、各部屋での水の提供は、繰り返し使えるスチール製のウォーターボトルを設置。水は各階にあるウォーターステーションで給水する。
アウトリガーでは、観光に出かけるときに給水し、ホテルに戻って、部屋に戻る前にまた給水するサイクルが当たり前。ウォーターボトルは、そのまま持ち帰ることも可能で、タビアトでもペットボトル削減の意識づけに一役買っている。
また、アウトリガー・リーフ・ワイキキ・ビーチ・リゾートのエントランスに飾られているダイヤモンドヘッドの壁画「Coming Home」は、海洋科学者でアーティストのイーサン・エステス氏がハワイパシフィック大学の海洋ゴミ研究センターと協力して集めた廃棄漁網を再利用して制作したもの。これも、OZONE活動のひとつだ。
このほか、アウトリガーでは、ハワイ州観光局(HTJ)が主導する「マラマ・ハワイ」ブログラムにも参加。「マラマ・ハワイ・エクスペリエンス」として、クアロア・ランチとの特別パッケージも提供している。
ハワイの伝統文化を発信するカルチャー・センター
アウトリガー・リーフ・ワイキキ・ビーチ・リゾートでは2022年3月、新たに「アオ・カルチャー・センター」がリニューアルオープンした。さまざまなハワイの伝統文化を紹介するとともに、カルチャーアクティビティの拠点ともなる場所だ。
ハワイの伝統文化を学べるさまざまな展示物のなかでも、最も目を惹くのが伝統航海カヌー「ホクレア」の展示。プロジェクションマッピングを駆使したバーチャルアートでは、楽しみながらポリネシアの航海術について学ぶことができる。
このほかに、ハワイアン・フラに使われてきた古代楽器、王族が身につけた羽織り、ハワイの食文化の象徴「タロイモ」の調理器具、カヌーの製作に使われた石斧、ハワイの伝統的な布「カパ」など、本物のハワイを知ることができる展示が並ぶ。
アオ・カルチャー・センターでカルチャー・ディレクターを務めるルアナ・メイトランドさんは「ここの展示物は、ディズニー映画『モアナと伝説の海』の世界観です。モアナを通じて見れば、日本人の人たちにも親しみが湧くのではないでしょうか」と説明してくれた。
メイトランドさんは、このセンターで、フラ、ウクレレ、レイやククイナッツのブレスレット作りなどのアクティビティの講師も務める。アウトリガーでは、ハワイの文化体験を通して、ハワイの人たちの精神性や地域コミュニティとの関係性を考える機会も提供している。
全客室の改装を完了、ロビーもさらに開放的に
アウトリガー・リーフ・ワイキキ・ビーチ・リゾートは、2021年春に全客室の改装を完了した。ベットルームには「ホクレア号」の絵画をはじめハワイを題材とする作品が飾られるなど、ハワイアンモダンテイストに生まれ変わった。また、スマホと連動するスマートTVも新たに導入。ベッド脇にコンセントを設置するなど、利便性も高めた。
1階のパブリックスペースも一新。海に向かって抜けるような空間をつくりだし、これまで以上に開放感が味わえるようになった。「ハーブ・カネ・ラウンジ」は、土の質感を取り入れたモダンなデザインへと生まれ変わり、ファイバーアーティストであるマルケス・ハナレイ・マルザンのユニークな作品「Eia Hawaiʻi, He Moku, He Kānaka (ハワイという島、ハワイという人)」も展示されている。