マリアナ政府観光局、サイパン直行便再開で日本人誘致を強化、1予約1万円のインセンティブ

マリアナ政府観光局(MVA)からMVA局長や理事会会長など複数名が来日し、旅行業界向けのセミナーを対面とオンラインのハイブリッドで開催した。ユナイテッド航空が2022年9月1日からサイパン線の直行便を就航するのを機に、日本の旅行業界との関係強化を図り、誘客活動の推進していく方針を発表した。

具体的には、旅行会社向け支援としてツアー参加者1名の予約につき1万円のインセンティブ、ツアー参加者1人につき50ドルのバウチャープレゼント、研修旅行の実施など販促支援策を実施。消費者向けにも、SNSを活用した施策を実施する。これらは、コロナ後の観光再興を目的に、MVAと北マリアナ諸島自治連邦区の政府機関が共同で実施している「観光復興投資計画(TRIP:Tourism Resumption Investment Plan)」の一環。ユナイテッド航空の直行便就航も、TRIPをもとに実現したものだ。

セミナー後のメディア取材では、日本市場向け予算として、日本人旅行者数が年間約45万人のピークとなった1996~1997年ごろと同等規模を用意していることも明らかにした。

当時とウィズコロナの現在とは環境が大きく異なるが、なぜ同政府観光局が同等の大型予算を投じるのか。これについて、MVA理事でTRIPの会長であるアイバン・クイチョチョ氏は、水際対策や為替など日本人が海外旅行をする障壁を認識していることを示したうえで、「マーケットを再開させるには力がかかる。同時に今、観光が再開したことを認識されなければ、選択肢からなくなる」と、日本でのプレゼンスを高める重要性を強調した。

日本/マリアナ間の直行便は、2018年5月にデルタ航空の撤退で定期便がなくなった。2019年秋にスカイマークが就航したものの、4カ月でコロナ禍に突入。つまり、ほぼ4年間、直行便がなかった。MVA理事会会長のエルスベス・ヴィオラ・アレプヨ氏は、「まずは直行便のフライト再開を知ってもらうことが大切」との考えだ。

ユナイテッド航空の直行便はまずは週3便からのスタートだが、クイチョチョ氏は「まずは週7便の運航へを目指す。そこに向けての投資」と目標を示した。ピーク期の増便や地方発のチャーター便などの要望にも、協力していく方針だ。

MVA理事会会長のエルスベス・ヴィオラ・アレプヨ氏

まずはリピーター、旅先テレワーク需要も

MVA理事会会長のアレプヨ氏はセミナーの冒頭、マリアナ諸島での感染者数の少なさや子供を含むワクチン接種率の高さ、安全ガイドラインなどを挙げ、安心安全な旅行先であることを強調。これに加え、直行便で3時間半の近さや温暖な気候と自然、アクティビティ、人の温かさなど、マリアナの魅力そのものがコロナ後の旅行ニーズを満たすものであることを示し、「コロナ後の旅行再開時に、安心して楽しんでもらえる目的地」とアピールした。現地では、日本帰国時に必要なPCR検査と陰性証明書を無料で提供しているという。

また、MVA日本ジェネラルマネージャーの一倉隆氏は、コロナ禍でのポテンシャルの高い客層として、まずはリピーターの取り込みを図る方針を示した。以前、サイパン旅行を楽しんでいたアクティブシニアを中心に、リモートワーカーや旅先テレワーク(いわゆるワーケーション)の需要も見込む。さらに、旅の意欲と情報発信力の高い20代、30代の女性も重視。小さな子供との旅行がしやすく、映える風景の多いことをアピールし、インフルエンサーやユーチューバーを巻き込んでいく考えだ。

全体的には「マリアナケーション」をテーマに、コロナ禍で失われた2年半分の休みを、3時間半で行ける3つの島のマリアナで取り戻す滞在を訴求する。

このほか、マリアナ観光の重要な要素であるスポーツでは、従来から人気のダイビングやゴルフに加え、スポーツ合宿の誘致も狙う。今年6月には、太平洋諸国地域のミニ国家が参加するオリンピック的なスポーツイベント「パシフィックミニゲーム」がマリアナで開催され、ナショナルチームを受け入れるために、競技場をはじめとする各種施設を整備したことから、学生チームのみならず、プロチームの合宿も誘致していく方針だ。

発表資料より

コロナ禍にインフラ整備、島内の質が向上

このほかセミナーでは、現地の最新情報として、ホテルや観光施設などのリノベーションが進んだことも紹介された。

たとえば、2018年の大型台風で倒壊した「コーラルオーシャンリゾートサイパン」は、2022年1月に全面改装を終え、ウェルネステーマのリゾートとして再開した。また、「フィエスタリゾートアンドスパサイパン」は、「クラウンプラザリゾートサイパン」として開業に向けた改装を実施中だ。ホテル以外でも、サイパン版青の洞窟で知られるグロットでは昨秋、洞窟までの階段などが改装し、日本統治時代の灯台跡のマリアナライトハウスも、カフェやバー、スタジオを併設した複合型レストランとしてリニューアルしした。

MVA理事でTRIPの会長のクイチョチョ氏も、現地のプロダクトの質が上がっていることを説明。パブリックプライベートパートナーシップ(官民連携)による100以上のプログラムが、今後5年間で美しい島にすることを目標に、活動しているとという。

MVA理事副会長のグロリア・キャバナ氏は、「この4年間、マリアナを訪れていない人は多いと思う」と話し、若い客層はもちろん、以前マリアナに来ていたアクティブシニアにも、新しくなったマリアナを知ってもらう取り組みをしていく考えを示した。

セミナーの最後、MVA局長のプリセラ・ヤコボ氏は、以前と変わらないマリアナの自然の美しさや人々のホスピタリティに言及。「温かく迎え、滞在中安全に過ごせられるよう、最善を尽くす。ぜひ、来訪してほしい」と呼びかけた。

MVA局長のプリセラ・ヤコボ氏

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