2022年が幕を閉じようとしています。今年もトラベルボイスの1年間を通した記事のアクセスランキングを発表します。コロナ禍となった2020年から3回目の年末となりましたが、今年も上位200記事に通常期であれば年間アクセストップ20に入るアクセス数の記事がずらりとならびました。通常期とは異なる振り返り記事となりますが、今年も上位200記事を対象に、今年を振り返ります。 ※トップ10のランキングは最下部に記載
コロナ禍の出口に向かった1年、観光の力強い需要に沸く
日本の水際対策緩和と旅行支援の動きに注目が集まり続けた2022年。1年を通じて、少しずつ規制が緩和され、ようやく10月11日に実質的な開国と全国旅行支援がスタートをした後は、力強い旅行需要がみられました。世界の観光が急回復するのを横目に、スピード感は劣ったものの日本でもコロナ禍の出口に光が見えてきた1年でした。
一方で、観光の現場では人手不足の課題が浮き彫りに。秋の行楽シーズン真っ只中で開始した全国旅行支援で、膨大となった事務処理や現場対応で現場は混乱。2年半ぶりとなったインバウンド再開では、久しぶりの旅行者対応に経験値の不足からくる戸惑いもみられたようです。各所で需要はあっても、あえて稼働を押さえるという対応も見られ、人手不足の深刻さが続いています。
日本人の海外旅行では、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した原油高やインフレ、円高による旅行代金の高騰で、本格的な回復には少し時間がかりそうです。本格的な国際観光の復活に向けて、コロナ禍で減少した国際航空路線の回復させるためには日本人の海外旅行者が増えることが不可欠。来年は、インとアウト、ツーウェイツーリズムのバランス良い状態がかなう環境になることを祈るばかりです。
- 旅行会社の海外ツアー再開へ、業界団体がハワイに視察団(3月23日)
- 観光庁、観光目的インバウンド「添乗員なしツアー」ガイドラインを公表(9月2日)
- 全国旅行支援の開始で宿泊施設に起きた混乱、その影響と次の打ち手(10月24日)
- 日本の国際クルーズが再開できないのは何故か? 2つのハードル(10月17日)
- ホテル・旅館の時間外労働が大幅増加、7割が人手不足、全国旅行支援の需要増で
(12月01日)
世界で観光指標転換の動き、日本でもサステナブル観光に関心高まる
日本が国境を閉ざしている間、世界では観光がダイナミックに回復するとともに観光政策の目標を変える動きが起きていました。今年初めには、持続可能な観光の実現に向けて欧州連合(EU)が新しい指標を作る方針を明らかにしました。また、ハワイが人気のビーチを予約制にしたり、タヒチが量から質への転換を図るスローツーリズムを宣言するなど、グローバル・ツーリズムが転換期を迎えていることを印象付けるニュースが続きました。12月には、ついに日本でも沖縄県・西表島で観光客の人数制限を発表。来年は、また各地の動きが活発になることでしょう。
そして、今年は日本の観光産業でもサステナブル観光への関心が高まりを見せた1年だったと感じています。トラベルボイスでは、7~8年前から同分野の記事を取り扱ってきましたが、今年のアクセスは今までにない力強さがあり、関心の高まりを実感するものでした。
- 欧州委員会、各国に「観光目標」の転換を勧告、旅行者数からの脱却【外電】(2月10日)
- ハワイのビーチで予約制が導入された背景とは? (5月10日)
- タヒチ観光局、「スローツーリズム」を宣言、量から質へ転換(11月16日)
- 沖縄県竹富町、観光管理でエコツーリズムに本腰、「立入上限数」設定(12月08日)
新たな価値生むデジタル対応、デジタルノマドにも注目
コロナ禍で進んだデジタル化。コロナ禍に入ってから、日本でもリモートワークの普及で「旅先テレワーク(いわゆるワーケーション)」が可能な環境が整いつつあります。世界では、数か月間にわたって旅をしながら仕事をする「デジタルノマド」と呼ばれるツワモノが増加。そこに注目する国では「ノマド(遊牧民)」のような人々を誘致するためのビザを発給する動きも活発になってきました。
世界では「旅先テレワーク」やデジタルノマドの滞在先として利用されることが多い短期レンタルの宿泊物件(コンドミニアムや民泊など)が活況となっています。AirDNAの調査によると、米国では2022年の短期レンタル物件の利用泊数が過去最高となったとのこと。日常と旅の境界線が曖昧になる中、世界から旅行者を迎える日本の観光産業でも注目しておきたい動きです。(日本でも、民泊への長期滞在が増加傾向にあるという事業者の声も聞こえています。)
日本国内のデジタル関連では、今年もたくさんの動きがありましたが、アクセスが多かったのは、航空会社が空港や顧客体験を向上させる動きや、企業が新たな価値の提供にチャレンジする観光NFTに関するもの。新たな動向に注目が集まりました。
- 世界中を旅しながら仕事する「デジタルノマド」が増加中【コラム】(10月8日)
- 米国で宿泊物件の「短期レンタル」が過去最高を記録【外電】(7月28日)
- ANA、デジタル化加速で「自動チェックイン機」を全廃へ(5月24日)
- 観光産業のための「NFT」入門、旅行で活用する4つのアイデア【外電】(7月31日)
- JR東日本、鉄道開業150年記念でNFT駅名標を販売(10月13日)
トラベルボイス記事の年間ランキング2022 トップ10
ランキング10位までは以下の通りです。
- 1位 バリ島から帰国できない日本人旅行者が増加、PCR検査陽性で足止め(7月27日)
- 2位 観光庁、全国旅行支援の年内延長を発表、12月27日宿泊分まで(11月25日)
- 3位 注目高まる旅行の「キャンセル保険」、その種類や動向を取材した(8月3日)
- 4位 帰国して空港出るまで3時間超、記者が体験した「海外旅行のハードル」(4月11日)
- 5位 通訳案内士が見た、訪日インバウンドの現場で起きていること【コラム】(10月13日)
- 6位 宿泊料金の値上がり、予約システムのトラブル、業界団体リーダーに聞いた(10月15日)
- 7位 クルマ離れが沖縄旅行の足かせ、Z世代「レンタカー利用しない」は3割(2月24日)
- 8位 観光の持続性と回復力指標で日本がトップ、世界経済フォーラムの評価(6月1日)
- 9位 海外から見た日本の「インバウンド解禁」、 英国の旅行会社の苛立ち(6月15日)
- 10位 欧州委員会、各国に「観光目標」の転換を勧告、旅行者数や泊数からの脱却(2月10日)
今年は、ロシアのウクライナ侵攻の影響が、観光分野に不確実性をもたらし続けました。残念ながら、先行きの不透明さは来年も継続しそうです。
一方で、ようやく日本でも観光復活が実感できる1年となりました。世界経済フォーラムで観光の持続性と回復力指標で日本がトップになるうれしいニュースもありました。人手不足や、コロナ前からの課題であったオーバーツーリズムの再発防止など対応が急務であるものの、観光再開の第一歩を踏み出したことは大きな成果でしょう。
来年は、この成果を糧に次のステージが始まります。コロナ前と同じ観光でよいのか、どんなカタチで回復するのか、地域は一体となって考えるべきでしょう。「観光の意義」を問われ続けたコロナ禍を経て、観光事業者、旅行者、住民が地域の価値観を共有することで解決できる課題があるのではないでしょうか。そして、限られた誰かだけでなく、観光に関係する皆が満足することで、観光は持続可能な産業となるはずです。
トラベルボイスは、サイト開設から10年、来年は11年目を迎えます。来年も旅行・観光ビジネスに関わる皆様の一助となるニュースやトレンド情報などをご紹介していきます。
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トラベルボイス編集長 山岡薫