楽天トラベルは2023年2月14日、同サイトに登録している宿泊施設や運営企業を対象にしたオンラインイベント「楽天トラベル カンファレンス2023」を開催し、2023年の戦略を共有した。戦略共有には上級執行役員トラベル&モビリティ事業長の髙野芳行氏のほか、営業、マーケティング、開発の各責任者が出演し、それぞれの取り組みをトーク形式で説明した。
2022年はコロナ前の2ケタ増
まずは髙野氏が、2022年の実績を発表。国内宿泊の流通総額は、レジャーや高級カテゴリーの好調な推移と全国旅行支援の追い風を受け、コロナ前の2019年比で2ケタ増と大幅に成長した。国内延べ宿泊者数における同社のシェアは、2019年の15%から20%超に拡大し、「当社の予約が多いエリアではシェアが30%に達した。コロナ禍は厳しい状況だったが、オンラインシフトが起こるポジティブな面もあった」とアピールした。
また、2022年の大きな取り組みの1つとして、インバウンドサイトのリニューアルを紹介。楽天トラベルでは訪日客数について、2025年に2019年を超える3350万人になると予測しており、髙野氏は「この3年が勝負」と、インバウンドを強化する考えを述べた。
ただし、世界情勢や自然災害、感染症など今後も不安定要素があることから、インバウンドを拡大しながら、国内市場も注力することを強調。国内・訪日のさらなる成長に向け、「楽天エコシステム(楽天経済圏:グループ事業との連携)の活用」と「楽天トラベルとしての取り組み」の2つの視点で展開していく方針を話した。
ポイント発行が成長のエンジンに
楽天エコシステムに関しては、楽天グループが国内EC流通総額を2030年までに10兆円にする目標に掲げており、2022年は前年比12.3%増となる5.6兆円に拡大したことを説明。楽天として、グループ事業間の利用促進のカギとなる会員向けの楽天ポイント発行数が、2022年の1年間で約6200億に達したことを紹介し、「これが楽天トラベルにとっても成長の原動力になっている」と、グループの成長戦略がトラベル事業の成長にも寄与していることを強調した。楽天トラベルとしても今後、グループの各事業とのクロスユースを増やしていく方針だ。
また、会員数が多いグループの強みも活用する。マーケティング部ジェネラルマネージャーの八日市屋隆氏は、特に、楽天トラベルの流通額における上級会員のシェアが、2019年の61%から2022年は72%に拡大したことを説明。楽天ポイントの獲得数と獲得回数によってランクが決まる上級会員について、「非常に力強く成長している。上級会員は宿泊施設から見ても、高単価、高リピート率の非常に良いお客様」と話し、宿泊施設が戦略的に上級会員の予約を獲得できるよう、上級会員に対する特典を厚く設定できる仕組みを設けたことを説明した。
インバウンドも「宿泊プラン」で販売強化
一方、楽天トラベル独自の施策では、(1)消費者(ユーザー)向け、(2)宿泊施設向け、(3)インバウンド向け、の3点で強化。
このうちユーザー向けでは、コロナで冷え込んだ需要を高める目的で開始したブランドCMキャンペーンを、2023年も注力する。また、宿泊施設の予約ページでは、アプリを含むモバイルでのユーザビリティを高める開発をおこなう予定だ。現在、モバイルでの訪問数は、楽天スーパーセール時には約9割に達しており、特にアプリは「他社を超え、旅行業界で利用者数1位を誇っている」(八日市屋氏)という。
今後は、宿泊プランに加えて客室タイプからも選べる機能やAIを活用した情報発信、問い合わせ対応などを提供する予定。開発責任者である、専務執行役員テクノロジープラットフォームディビジョン兼コマース&マーケティングテクノロジー統括部の黒住昭仁氏は、「ユーザーと宿泊施設の双方が使いやすいサイトに改善する。問い合わせなどのやり取りをした後は、予約が進みやすくなる結果も出ている」とその意図を説明した。
また、インバウンドへの施策については、ホテル・旅館コンサルティング部ジェネラルマネージャーの永冨文彦氏が、「国内OTAとしての価値・個性を出していく」とし、「プラン販売」を強化する方針を示した。「プラン販売で宿のバリエーションをしっかり見せ、単価を1円でも高く販売できるようにしたい」という考えだ。
一方で、間際のキャンセルやノーショー対策として、予約時にはクレジットカード番号の登録を必須とし、「完全にキャンセル料を収受できる仕組みも作っている」と説明。今後はさらなる取り込みを図るため、セールスプロモーションツールの強化や国内とインバウンドサイトの管理画面の統合なども進めていく予定だ。
最後に、髙野氏は今年の大きな取り組みとして、全国で「タウンミーティング」を開催すると説明。営業部門とともに、マーケティングや開発、バックオフィスの各責任者が参加し、地域の宿泊施設と対話をする。髙野氏は「お客様や宿泊施設の価値を議論し、楽天トラベルのサービスを進化させる活動をしたい。一緒に良いサービスを作り、今年も2ケタ成長を目指していく」と意欲を示した。