ANAは、2023年3月期連結決算で、純利益894億円の黒字(前年度は1436億円の赤字)を計上し、3期ぶりの黒字化を達成した。売上高は、行動制限や水際対策の緩和で航空需要が回復したことから、前年度比1.7倍の1兆7074億円。コストマネージメントの徹底で固定費の増加を抑制したことから、営業費用は同1.3倍の1兆5874億円にとどめ、1200億円の営業利益(同1731億円の赤字)、1118億円の経常利益(同1849億円の赤字)を確保した。
セグメント別では、国際線の旅客収入は同517.9%増の4334億円。利用率も前年度の27%から73.6%に大幅に回復した。国内線の旅客収入は同89.2%増の5295億円となり、利用率も47.8%から64.5%に改善。傘下のLCCであるPeach Aviationの収入は同138.7%増の902億円、利用率は73.5%となった。
このほか、旅行事業は、国内旅行で全国旅行支援の影響を受けたほか、海外旅行ツアーも再開したことから、同59.5%増の738億円となった。
この結果を受けた決算会見で、ANAホールディングスの芝田浩二社長は「ようやくコロナのトンネルを抜けた。今年度からは新経営ビジョンで掲げる『ワクワクで満たされる世界を』目指し、中期経営戦略を着実に実行し、成長軌道に乗せていく」とコメントした。
国際線復活の鍵はアウトバウンド
また、今年度(2024年3月期)の見通しについては、営業利益を2月の予想から200億円引き上げ1400億円と上方修正。売上高は、国内線ではレジャーを中心に需要が回復し、国際線では訪日需要やビジネス需要の回復傾向が続くと見込まれることから、国際線旅客で1835億円増、国内線旅客で1004億円増、国際線貨物で900億円減の計1兆9700億円を見込む。また、純利益は800億円を予想する。
通期予想の前提となる旅客需要については、2019年度比で国内線が平均95%、国際線が第4四半期で80%、平均では70%を見込む。芝田社長は、足元の市場動向についても言及。ゴールデンウィーク期間の需要は国内線で前年同期比1.3倍、国際線で同2.7倍で推移していることを明らかにした。ハワイ線については、9割まで回復するとの強気の見込みを立てている。
一方で、課題として、国際線の需要回復に対して、グランドハンドリングや保安検査職員などで人手不足が続いていることを挙げたほか、中国線については供給量が第1四半期で30%程度にとどまっていることにも触れた。
中国線について、芝田社長は「中国発の団体旅行解禁を見据えて、増便を検討していく。伸び代はある」と発言。通期ではコロナ前との比較で70~80%に回復するとの見通しを示した。また、苦戦が続く欧州線については、「ロシア上空が飛べないことから、供給量に限界があり、需要はあるものの単価が高くなっている」との認識。このほか、北米、東南アジア、オセアニアはコロナ前に近づきつつあるとした。
このほか、国際線についてはアウトバウンドの復活が鍵になるとの考えだ。今年度の国際線需要について、インバウンドが全体の37%でコロナ前とほぼ同程度、三カ国流動が31%、アウトバウンドが伸び悩み32%と想定。芝田社長は「目指す方向性は、三カ国流動をコロナ前の15%に戻し、残りをアウトバウンドとインバウンドで埋めること」との考えを示した。
海外レジャー旅行については、帰国時の不安、円安、燃油サーチャージの3点が阻害要因としたうえで、「円安も燃油も落ち着いてきた。5月8日にコロナが5類に移行され、水際措置が終了すれば、不安も取り除かれるのではないか」と期待感を示した。報道によると、政府は現在、水際措置終了について、ゴールデンウィーク前に前倒しする方向で調整に入っている。