観光系のチャットGPT活用は、どこまで進んでいるのか? 世界の事例を集めてみた【外電】

チャットGPTが登場してわずか5か月余りだが、すでにあらゆるところで目にする状況になっているのはご存知のとおりだ。

オープンAI社が最初にこのツールを一般公開した5日後、同社のサム・アルトマンCEOはユーザー数100万人突破をツイッターで明らかにした。2カ月後には、アクティブユーザー数が1億人を超え、チャットGPTは過去最速で利用が拡大したアプリとする分析結果もある。

その後、旅行業においても、会話アプリやバーチャルアシスタント、接客支援システムの自動化で、人工知能を活用する動きが急速に広がっている。

旅行系の中では最も早く、2023年3月にチャットGPTのプラグインを作ったのは、エクスペディア・グループExpedia)とカヤック(KAYAK)で、ユーザーが自社データの中からフライトや宿泊情報を探し出し、予約まで進める仕組みを整えた。さらにエクスペディアでは、その後2週間足らずで、チャットGPTを活用した旅行プランニングツールも追加、モバイルアプリで予約できる旅のコース作りを手伝ってくれる。

こうした急展開に驚くのはまだ早い。後述しているが、韓国系のMyRealTripは2日間で実用化してしまったし、他にも様々な事例がある。

フォーカスワイヤでは、旅行事業におけるチャットGPT活用がどこまで進んでいるのか、さらに詳しく現状を把握するべく、他でもないチャットGPT自身に聞いてみた。

チャットGPTの回答によると、「旅行各社は、チャットGPTの大規模言語モデルを使い、様々な手法でビジネス改善に取り組んでいる」という。そのほか、以下が主な「回答」だ。

「まず予約業務。顧客からの予約対応でチャットGPTを使っている。チャットボットとおしゃべりしてから予約したり、空き状況を聞いたり。予約内容の変更をお願いすることもできる」。

「カスタマーサービスの領域では、年中無休で顧客をサポートするために、多くの旅行事業者がチャットGPTを使っている。お客様からは、ご自身の旅程に関する質問、おすすめ情報、あるいは実際に旅行中に起きた問題についての報告などが寄せられている」。

「パーソナライズしたレコメンデーション機能を実現するために、チャットGPTでは、顧客の過去の旅行履歴や傾向を分析している。例えば、デスティネーションを提案したり、お勧めのレストランや現地アクティビティ、宿泊施設を提示できる」。

「旅行情報では、ビザが必要かどうか、現地の天気予報、利用可能な地上交通などを調べてお客様に伝える際、チャットGPTが役立つ」。

「マーケティング改善に活用している旅行事業者もいる。例えば、チャットボットがお客様とソーシャルメディア上でつながり、相手におすすめのパッケージ商品やプロモーション情報、イベントやお祭りの予定を届けている」。

なるほど、色々と参考になる。だが大手から中小まで、様々な旅行事業者の現状を把握するのは、いくら話題のテクノロジーとはいえ難しいようなので、生身の人間による情報収集にも頼ることにした。ただし情報の抜け落ちや間違い、つまりヒューマンエラーが生じる可能性はご了承いただきたい。 ※なお、フォーカスワイヤでは、引き続き、チャットGPTを活用している旅行事業者や旅行ツールについての情報提供を歓迎している。

ホテルやサービスの検索を簡単に、「Affordable Balaton Accommodations」

https://olcsobalatoniszallasok.hu/

ハンガリーの観光地、バラトン湖周辺の宿泊施設およびアドベンチャー体験と、旅行者をつなぐスタートアップ。同国内の旅行オンラインプラットフォームとしては初めて、チャットGPTを使ったチャットボット「Anna」を導入。100以上の言語に対応。宿泊施設や各種プログラムおよびサービスの検索が簡単になった。「アナ」は現在、宿泊施設を探す旅行者だけでなく、プロパティマネジメントを必要とする物件オーナー向けのサポート業務も行っている。

ホテル宿泊客の情報とコミュニケーションを統合、「Duve」

https://duve.com/

イスラエルを拠点とする同社は2023年3月、ホテルと宿泊客のコミュニケーションにチャットGPT-4を活用すると発表した。「DuveAI」は、オープンAIのコミュニケーション機能と自社の顧客プロフィールを統合するツールで、タスクの優先度判別、ゲストからの質問への対応、よくある要望の把握などに役立てる。共同創業者兼CEOのデビッド・メズマン氏は「DuveAIにより、宿泊客それぞれのニーズや好みを、もっと深く理解できる」、「ゲスト体験の未来に欠かせないAIであり、進化の最先端であると自負している」と話す。

旅程作成から予約へ、「エクスペディア」

関連記事:https://www.travelvoice.jp/20230405-153273

エクスペディアiOSアプリ内の新ツールを使い、「チャットGPTで旅行アイデアを考える」を選ぶと、ホテル、レンタル、フライト、現地体験、地上交通など、旅程作りに役立つおすすめ情報について会話ができる。同グループが保有する旅行データが情報源。提案内容はアプリ内の「トリップボード」に自動保存され、価格やレビュー、画像の確認から予約へと進む。

数秒で旅行を計画するアプリ、「iPlan.AI」「Roam Around」「Vacay」

https://iplan.ai/

https://www.roamaround.io/

https://www.usevacay.com/chatbot

チャットGPT を使った旅行プランニングアプリも登場している。いずれも選択肢を絞り込んだり、旅のインスピレーションを探したりすることを、簡単かつ無料にするもので、数秒で旅程が完成する。Roam Aroundの場合、ユーザーへの質問は「希望する行き先」と「今、どのぐらい(対話に費やす)時間があるのか」のみ。その後、観光や食事スポットを盛り込んだシンプルな旅程を提示する。一方、Vacayでは、チャットボットがスクリーン全面を使い、詳細な旅程を作り出す。ユーザーが設定した予算内でのおすすめホテルやレストラン、アクティビティも提案する。文章ではなく、画像や地図リンクをたくさん使って旅程を提案するのはiPlan.AI。ただし、今のところ対象地域は大都市に限られている。

タビナカのマーケティング文章作成を支援、「Magpie」

https://about.magpie.travel/

現地ツアーや体験事業者向けのコンテンツおよび流通システムを手掛ける同社は2023年2月、チャットGPTのAPIを使った新ツールをリリースした。オンライン検索に特化したマーケティングコンテンツ作成を支援するもので、キーワード機能や翻訳ができる。「例えば、英語話者ではないと思われるサプライヤーが作った分かりにくいツアー紹介文をきれいに整えたり」と創業者兼CEOのクリスチャン・ワッツ氏。「ツアーの要点を的確に伝えると同時に、読みやすく、文法的にも正しくできる」。

旅行計画やおすすめ情報を入手、「MyRealTrip」

https://www.myrealtrip.com/

韓国系の同社が手掛けるインタラクティブ・プラットフォームでは、チャットGPTベースのAIとやり取りしながら、旅行の計画を立てたり、現地ツアーや体験のおすすめ情報を入手できる。なんと開発に要した時間は、わずか2日間。最高エクスペリエンス責任者のジョナサン・チャン氏は、2023年3月に開催されたイベント「WebinTravel」で、とりあえず2日間だけ挑戦することになったと振り返る。「みんなで楽しもうよと。チーム全員がそれぞれの担当業務を抱えていたけれども、これはすごい、使ってみなければいけないと考えた。2日目の終わりに出来上がったものが何であれ、とりあえず公開して、反応を見ればよいと思った」。

旅行事業者の営業・マーケティングを支援、「MyTrip.AI」

https://mytrip.ai/

この新技術を使ったアプリには、旅行者向けのものが多いが、同社が開発したAIは、マーケティングや営業、ウェブサイトのコンテンツ、顧客サービスの“強力な助っ人”を目指すものだ。文章作成アシスタント機能は、顧客とのコミュニケーションや旅行コンテンツ作りをサポート。Eメールのアシスタント機能やマーケティングツールは、各企業それぞれの「声色や語調」も学習するという。

企業の出張管理を支援、「Navan」

https://navan.com/

旧TripActionsから名称変更した同社は2023年2月、生成AIをインフラおよび商品の機能パッケージに組み込んだ。バーチャルアシスタントの「Ava」を使い、企業のトラベルマネジャーは出張者それぞれに合った提案ができる。また総務担当者は、AIにデータ作成を指示、出張者は、ホテル近くのお勧めレストランや空港までの最適ルートを聞く。共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のアイラン・トウィグ氏は「この技術を実装することで、プロダクトやサービスへの期待値が高まる」と話す。

旅行の質問にアドバイス、「トリップ・ドットコム」

https://jp.trip.com/

中国を拠点とする同社が2023年2月にローンチしたチャットボットには、オープンAIのAPIを使ったアプリが搭載されている。このツール「TripGen」により、ユーザーはフライトやホテル、ツアーについて質問したり、アドバイスをもらうことができる。利用可能な言語は英語、日本語、韓国語、中国語だが、さらに順次、拡充していく。自然な会話形式でのやりとりは使いやすく、よりテイラーメイドな旅程作りが可能になると同社シニア・プロダクト・ディレクターのエイミー・ウェイ氏。「旅行プラン作りは、時間がかかるしストレスも多い。ユーザーが消化しきれないほどの情報があるからだ」と指摘する。

数秒で航空券を探す、「Wingie Enuygun Group」

https://www.enuygun.com/

https://www.wingie.com/

中近東および北米のフライト、バス、ホテル、レンタカー予約を扱うオンライン旅行マーケットプレイス。同社が設計した旅行アシスタント「ENBot」はチャットGPT-4を使用。このボットは、航空券を数秒で探し出してくれる。現在、トルコ国内でのみ展開しているサイト、Enuygunで利用可能だが、グローバル展開しているWingieでも近く搭載される予定だ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:CHATGPT: A CHATTY DOZEN OF TRAVEL TOOLS AND SERVICES

著者:Derek Catron氏

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