ブッキングドットコムは2023年4月、サステナブル・トラベルに関する2023年度調査レポートを発表した。持続可能な旅への関心は2022年調査よりも高く、「未来世代のために地球を守るには、今すぐ、よりサステナブルな選択をし、行動する必要がある」への支持は全体の74%(前回は66%)だった。
しかし直近6か月の不安要因については、「環境の悪化」(49%)よりも「エネルギー危機や物価高への不安」(64%)を挙げる声が多く、コスト節約と持続可能性のどちらを優先するべきかという葛藤が浮き彫りに。また、サステナブルを謳う商品やサービスの信ぴょう性を疑う視線も浮き彫りになった。
同レポートは、2023年2月、日本を含む世界35カ国・地域の3万3000人以上から得た回答をまとめたもの。調査対象は、過去一年以内に旅行に出かけており、2023年にも旅行の予定がある18歳以上。
「今後12カ月以内に予定している旅行は、もっとサステナブルにしたい」との回答は全体の76%を占める一方、「世界的なエネルギー危機と物価高により、予算額の見直しが必要」とする人も同数にのぼった。
「サステナブル・トラベルを選ぶと旅費が高くなりすぎる」との回答は49%となり、2022年調査より11%増。これとは対照的に「サステナブル認証を持つ事業者を利用するなど、より良い未来に資するためなら、価格が高くなっても構わない」との回答も43%を占めている。
財布も良心も傷まないようにするために、「エコ・フレンドリーな選択をすれば、割引などのインセンティブがある」ことを支持した人は同12%増の49%。そのほか「ポイントなどのリワード付与」も42%が支持した。
価格以外のハードルも指摘されている。回答者の51%は「サステナブルな旅の選択肢が足りない」としており、「旅行事業者は、サステナブルな選択肢をもっと増やしてほしい」との声は、前回調査(66%)を上回る74%に達した。また44%の人は「よりサステナブルなオプションをどこで見つければよいのか分からない」と回答。「訪問先の文化を感じられる本物の体験」を求める人が75%を占めるのに対し、「地元コミュニティに貢献できるツアーやアクティビティをどこで、どのように見つけたらよいか分からない」は40%を占めた。
こうしたなか、自分ができることから着手している人は増えている。普段の生活では「リユースできる買い物バッグを使う」(68%)、「ごみをリサイクルする」(64%)、「リユースできるウォーターボトルを携帯する」(58%)。同様に、旅行中も電力や資源の無駄遣いを意識するようになっており、「客室にいない時はエアコンを消す」は全体の67%(同29%増)、「同じタオルを繰り返し使用する」は60%(同25%増)、「リユースできる水筒やボトルを使う」は55%(同19%増)だった。
交通手段については、「徒歩、自転車、公共交通機関での観光をプランしている」(43%)、「混雑を避けるためピークシーズンを避けて旅行する」(43%)がいずれも同10%増。「ローカル消費」志向も顕著で、43%が「中小の独立系ストア」がより望ましいとしている。
責任ある旅行者への意識が上昇
できるだけポジティブな影響を、旅行先の地域に与えること、責任ある行動への意識も強くなっている。今回調査では、全体の66%が、「自分が訪れたことで、その地域が以前より良くなってほしい」としており、65%が「サステナビリティ認証などを取得している宿泊施設だと分かれば、より安心して利用できる」と回答。また59%は、「次の旅行予約では、サステナブル認証の有無を検索条件にしたい」という。
そのほか「サステナビリティを謳うブランド各社を常にチェックしている」と答えた人は全体の30%、LEDライトや水の無駄遣いを防ぐトイレなど「サステナブルな選択肢についてもっと詳しく知りたい」は69%。ただし、旅行者の39%は「サステナブルをうたう旅行が、本当にサステナブルなのか疑わしい」と感じていることも明らかになり、旅行産業が消費者からの信頼を獲得できるかも課題の一つとして浮上している。
同社のレポート全文は以下からダウンロードできる。