国際機関日本アセアンセンターは、先ごろ若年層を対象とした持続可能な観光に関する調査報告書を公表した。旅行に興味がある日本のZ世代とミレニアル世代(15~35歳)の男女1000人に2022年12月、ASEAN加盟10カ国への旅行経験や今後の旅行意欲、サステナブルツーリズムに対する意識を聞いたもの。若年層の持続可能な観光に対する意識はまだ低いものの、内容を知ることで向上していく可能性が高いことがうかがえる結果となった。
これによると、日常的に「SDGs」や「サステナブル」を意識して生活している若年層は約6割。その意味を理解している回答者も約7割に上ったのに対し、「旅行する際にSDGsやサステナブルを意識したことがある」のは約3割にとどまった。また、「サステナブルツーリズム」という言葉について、「まったく知らない」との回答が45%を占め、理解している割合は25%に過ぎなかった。
「旅行をする際にSDGsやサステナブルを意識したことがある」と回答した約3割の回答者に対し、何を基準にSDGsやサステナブルを意識した観光地や観光施設として選択したのか聞いたところ、最も多い回答は「地産地消」で6割を占めた。続いて半数以上が「何らかのサステナブル基準に準じていること」を選択理由として挙げており、日本アセアンセンターは「サステナブルな観光をおこなうにあたり、客観的な基準が求められる」と分析している。
ただ、「地域の自然や生物多様性などの環境を保全しながら、最適な形で活用する観光」、「地域の建築などの文化遺産、住民の生活や伝統的価値観が訪れた観光客から尊重される観光」、「地域に安定した収入や雇用をもたらし、関わる人すべてが公平な形で利益を得られる観光」というサステナブルツーリズムに必要とされる取り組みを提示したところ、約8割がその必要性があると回答した。
また、レスポンシブルトラベラー(責任ある旅行者)としての意識を探るため、「訪れた地域に利益ある消費をしたいか」についても聞いたところ、約7割が「とてもそう思う」または「そう思う」と回答。コスト感覚については、「同じ内容なら持続可能な取り組みを明示するツアーを選択」が半数で、3割強が「1000~3000円未満」の差額を容認するとした。サステナブルツーリズムについての知識を得た後は、貢献への意識は向上し、コスト増も容認する傾向がみられる。
なお、回答者の約半数がASEAN加盟国への旅行を経験している。「行ったことがある国」で最も多いのはタイ、次がシンガポールでともに全体の約2割を占めた。行ってみたいASEAN加盟国として最も人気が高かったのはシンガポールで約6割、次いでタイが4割強。ASEANの観光イメージとして最も多い回答は「グルメ」で約6割を占め、2番目が「歴史的遺跡」で約4割、3番目が「リゾートホテル」で約3割だった。