英トラベルテックショー2023、最優秀スタートアップ賞は、地上交通の手配支援サービスのJyrney社

このほど英国ロンドンで開催された「トラベルテックショー」で、最も優れたスタートアップに贈られる「先駆者賞」(トレイルブレイザー・アワード / Trailblazer Awards)は、出張者向けの地上交通プラットフォームを手掛けるジャーニー(Jyrney)社が獲得した。

最終戦まで勝ち残ったファイナリスト5社は、いずれも創業から4年未満だった。

ジャーニー社は、英国チェスターを拠点とするスタートアップ。タクシーから運転手付き送迎、配車サービスまで、地上交通を便利に手配・管理できるモビリティ・プラットフォームを提供しており、法人旅行マネジメント会社(TMC)のアプリやプラットフォームともホワイトレーベル形式で連携できる。車の運行状況をトラッキングできるシステムを活かし、遅延発生時には、自動的に近くの別の車を再手配するなど、ビジネス渡航者のニーズに配慮。同社によると、地上交通のマーケット規模は世界全体で1260億ドルと大きいが、取扱いが複雑すぎるため、TMCの取扱いシェアは3%以下。旅行会社や旅行テック・プロバイダーのコントロール外にあるという。

そのほか、最終選考に残った4社の事業内容は以下の通り。

  • Hands In(ハンズイン)/英国ロンドン

グループでの旅行予約に特化した決済ソリューション。顧客対象はOTA、航空会社、PSP(決済サービス・プロバイダー)アグリゲーターなど。同社によると、Z世代・ミレニアル世代では、半分以上が3人以上のグループで旅行しているものの、オンライン旅行予約の99%はまとめて支払う必要があり、高額な旅費をまとめて支払う負担や、建て替えた分のやり取りなどの手間が発生している。

そこで、ホワイトレーベルのAPIソリューションを提供し、複数人による同時に決済サービスを提供。メールやテキストメッセージ、リンク、QRコードも共有できる。すでに複数のOTAや欧州の航空会社向けにサービスを開始。PSPとの契約交渉では、8社とNDA(秘密保持契約)、2社との間でホワイトレーベル契約を準備中。

  • MagellanGO(マジェラン・ゴー)/米国ニュージャージー

海外旅行用の「デジタル・コンシェルジェ」アプリ。旅行に関する情報をまとめて保管し、旅先の空港や現地でのスムーズな行動につなげる。eビザ申請、空港での出入国管理手続き、免税ショッピング、空港での食事などがデジタル経由で手軽にできる。

そのほか、保険や現地アクティビティを集めたマーケットプレイスなど。今後、航空会社、ホテル、レンタカー各社の予約サイトとも連携する予定。ユーザーの個人情報保護のためにブロックチェーンと生体認証を活用しており、各国・地域当局のプライバシー保護法にも対応している。

  • Triend(トレンド)/英国エドモンズ

次世代型のクチコミ(レビュー)管理・分析サービス。ユーザー向けには情報の信頼性と透明性を高め、事業者向けにはレビューの管理や表示の工夫に加え、データを使った分析やビジネス支援を提供する。ブロックチェーン技術を使い、投稿レビューをNFTやデジタル・コレクタブルに変換して投稿者に付与する独自サービスも開発した。

また、生成AIを使い、レビューのデータの中から、重要なポイントを取り出して分析し、インサイトや実行可能な改善案を自動的に提示する。

  • Moder/フィンランド、ヘルシンキ

独立系ホテルやリゾート向けに、予約から施設管理までを一元管理できるデジタル・プラットフォーム。宿泊だけでなく、マッサージなどの付帯サービスの予約、ツアーやパッケージ商品の購入、複数の流通チャネル管理、フロント業務、清掃やメンテナンスなど日々の施設オペレーション支援ツールなどが揃うので、人手不足に悩むホテルのルーティーン業務軽減につながり、従業員が利用客対応に充てる時間を増やせるとしている。業務全体をモニターして分析レポートも作成し、問題改善を支援する。

スタートアップにとって認知度アップは重要

ジャーニー社の共同創業者兼CEOのダニエル・プライス氏は、今回の受賞について「まだマーケティング資金に乏しい我々スタートアップにとって、本当に大きな意味がある。旅行業界における当社の認知度を高め、何をしているのか、どんな課題解決に役立つのかを知ってもらえる」と話した。  

同社は2022年にも、ビジネストラベルショー・ヨーロッパのコンペ「イノベーションフェイスオフ」で優勝しており、「これも当社のビジネス価値を証明する上で役立った。旅行業の経験豊富な識者たちから評価してもらったということ。以降、事業をローンチし、クライアント第一号を獲得することができた」とプライス氏。ジャーニー社では複数のTMC(法人旅行会社)とビジネスが始まっており、今年6月末にはモバイル展開もスタートした。 

トラベルテックショーなどの旅行イベントの魅力について、プライス氏は「旅行業に従事する人々が、新しいテクノロジーに出会い、それが顧客やサプライヤーとの関係向上に役立っていくこと。そして究極的には、旅行者のためになること。当社も、旅行者が抱える悩みの解消を目指しているが、旅行各社に我々のテクノロジーを使ってもらわないと実現できない」と話した。 

次回のトラベルテックショーは2024年6月19~20日に英国ロンドンで開催される予定。 

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