伊ベネチア、危機遺産リスト入りを回避、世界遺産委員会が入域料徴収を評価、2025年に再度審査へ

イタリアのベネチアは「危機遺産」リストの指定を免れた。サウジアラビア・リヤドで開かれたユネスコ世界遺産委員会で、専門家は「傑出した普遍的価値が差し迫った脅威にさらされている」と警鐘を鳴らしたが、加盟国はベネチアが日帰り客に入域料を徴収する実証を始めることを評価した。

2年前にもベネチアは危機遺産への登録を免れている。この時は、イタリア政府が大型クルーズ船のサンマルコ広場の通過とジュデッカ運河の通行禁止を決めたことが決め手となった。当時、ルイジ・ブルニャーロ市長は、この決定を「ベネチアは危険にさらされていない」という証拠として、専門家の勧告が「誤解を招く」と述べていた。

しかし、市民団体は、オーパーツーリズムの脅威を訴え続け、「ベネチアは単なる観光地になってしまい、住民と進出企業を惹きつけるための活力が失われている」と主張している。

日帰り客に5ユーロ(約800円)を徴収する実証についても「ベネチアの低俗なイメージを強めるだけ」と反対している。NGO団体「We Are Here Venice」のエグゼクティブディレクターのジェーン・ダ・モスト氏は「ベネチアは、より多くの人が住み、活気ある生活や刺激的な仕事の機会を生み出すことができる場所であるべきだ」と強調する。

彼女は、今回の決定に対して、「ユネスコが、世界遺産を管理する点で勇気ある行動をとってくれることを心から願う」と話す。

ベネチアは、これまでにも街の保存でさまざまな対策に取り組んできた。60億ユーロ(約9500億円)をかけて水中防壁建設プロジェクトも進めてきたが、汚職、コスト超過、建設の大幅な遅れなどで、まだ完成には至っていない。

ベネチアの住宅問題に取り組んでいる市民団体は9月上旬、観光客向けのベッドが4万9693床となり、住民数4万9304人を上回ったと発表した。同団体は「観光客用ベッドの増加の大部分を占めている短期レンタル型宿泊(STR/short-term rentals:いわゆる民泊)の規制をはじめ、あらゆる手段を講じるべきだ」と訴えている。

しかし、ベネチアは短期賃貸に対してなんら規制をかけていない。

ユネスコ世界遺産委員会は、今回の決定に際して、ベネチアとそのラグーンの「適切な保護のためにはさらなる進展がまだ必要」と改めて警告を出した。

イタリアは再び、2024年12月までに詳細な改善計画を提示する必要があり、その計画は2025年の世界遺産委員会で議論される予定だ。

※ユーロ円換算は1ユーロ158円でトラベルボイス編集部が算出

※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。

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