KNT-CTホールディングスは、子会社の近畿日本ツーリストによる新型コロナウイルスワクチン接種に関わる業務での過大請求について、調査委員会による調査報告書の提言を踏まえ、再発防止策をまとめた。
米田昭正社長は記者会見で、「人の改革、業務の改革、組織の改革の3つの改革を進めていく。その中でも人の改革が最も重要。再発防止の徹底に向けて、全社員一丸となって、不正を発生させない企業風土づくりを推進していく」と述べ、今回問題となったBPO事業だけでなく、旅行業も含めたグループ全体の事業で取り組んでいく決意を示した。
また、同日、詐欺罪に問われた近畿日本ツーリストの西日本支社関西法人MICE支店の元支店長が大阪地裁の初公判で起訴内容を認めたことについて、「あたらめて深くお詫び申し上げる」と謝罪。2020年以降のBPO関連で3150件ほどのプロジェクトを調べた結果、他に同様の事案がないことを確認していると付け加えた。
過大請求は37自治体、最大7億円
同社が把握した過大請求の規模は、現時点で最大37自治体、約7億円。返納の状況は、14自治体で、約3.6億円。自治体と返還に合意しているものの、手続きが完了していないところもあるという(近畿日本ツーリスト・瓜生修一社長)。
今後のBPO事業の展開について、米田社長は、学校関連の部活動やPTAの支援などの新規事業に意欲を示した。自治体案件については、指名停止終了後に「真摯に提案していきたい」と話すにとどめた。
また、旅行業について「総合旅行業として旅行の価値を高める事業は続けていく」とし、地域創生などクラブツーリズムの得意分野を伸ばしていくほか、新たに訪日個人旅行の受け入れ組織を立ち上げる考えを示した。
「人の改革」、経営陣・社員の教育機関を設立
再発防止策について、小山佳延氏コンプライアンス改革本部長は「経営陣と社員の意識改革が最も重要。心と意識を変える気持ちがなければ、真の改革にならない」と強調した。企業風土の改革として、グループ全体で「ありたい姿」を共有しながら改革に向けた取組みを推進していく。また、経営陣が率先してコンプライアンスに対する意識改革に努め、社員との対話を図りながら、改革を先導していく。
社内コミュニケーションでは、社員と率直な意見交換するタウンホールミーティングや職場単位でワークショップを実施。コーポレート・アイデンティティ(CI)を再構築するとともに、新たに「KNT-CTグループ行動規範(仮称)」を制定する。米田社長によると、これまで同社には「行動規範」というものはなかったという。
さらに、2024年1月を目途に経営陣を含めた全社員の教育機関として「KNT-CTアカデミー(仮称)」を新設。「人間力」を高めることを主眼に置いた社内教育を実施していく。加えて、社外の認定試験「ビジネスコンプライアンス検定」の取得を進める。
このほか、今回の事案発生の要因の一つと見られる人事評価基準も見直す。業績評価とプロセス評価を明確に分離するとともに、業績評価およびプロセス評価基準を多面化していく。
「業務改革」、BPO事業でもITシステムを導入
業務の改革では、遵法営業に向けた仕組みを再設計するため、受託基準ならびに業務フローの制定を行い、特に官公庁、地方自治体とのBPO事業の契約について、契約前、運営時、事業終了後に分けてより詳細な取扱ガイドラインを定める。また、KNTとCTの法務部門に新たに契約書評価ツールを導入するとともに、人工管理、調達物品の管理を対象としてITシステムの活用を行う。
瓜生社長は、ITの活用について、「BPOには管理する仕組みがなかった。手探りでやっていたために不正が起きた。プロジェクト管理のソフトを導入し、発注と仕入れ、数値管理が徹底できる仕組みを導入していく」という考えを明らかにした。
「組織改革」、内部通報窓口の機能も設置
組織改革では、すでに今年6月に「コンプライアンス委員会」を設置し、同委員会事務局として専属の担当者を含むコンプライアンス改革本部を設置した。また、7月にはKNTとCTに法令倫理管理センターを設置。情報発信や教育を継続的に実施するとともに、さらに、内部通報窓口としての機能も持たせる。
このほか、予算管理制度を再構築するほか、事業会社の事業領域の再整理、グループ経営管理機能の強化、主要ポストの役割と責任の明確化、審査・監査部門の強化を進める。
コンプライアンスの取り組みについては、今後、四半期ごとに進捗状況を発表することとした。