ANA NEOは、バーチャル旅行プラットフォームアプリ「ANA GranWhale」をローンチした。スマートフォン上でユーザー自身がアバターとなり、バーチャル旅行空間「V-TRIP」やショッピング空間「Skyモール」を楽しめるもの。ANA NEOとしては、世界で約4000万人のANAマイレージクラブ会員を主なターゲットとし、リアルな旅行への入口としてだけでなく、将来的にはバーチャル空間でコミュニティを形成し、教育、医療、行政サービスなども提供する「Skyビレッジ」を構築していく方針だ。
ANA GranWhaleは2023年6月に東アジアおよび東南アジアでテストローンチ。今回、日本を含めて正式にローンチした。将来的には欧米での展開も視野に入れる。
発表記者会見で、ANA NEO社長の冨田光欧氏は「バーチャルでクローズさせず、リアルにどのように繋げていくかを追求していく」と説明したうえで、「バーチャルでリアルの旅の価値は下がらない。バーチャルはリアルの旅を誘発するもの」と話し、航空会社であるANAがバーチャル旅行プラットフォームを提供する意義を強調した。
バーチャルとリアルとの連携については、V-TRIPで訪れた目的地のホテル予約とも連動させるほか、地域との連携でリアルと連動させたキャンペーンを展開することで、地域創生にもつなげていく考えだ。
また、ANAホールディングス執行役員の津田佳明氏は、「ANAグループとして非航空系のライフバリュー事業を拡大していく。将来的にはANA GranWhaleもマイルで生活するANA経済圏への入口としていきたい」と期待を込めた。
具体的な収益ポイントとしては、バーチャル空間内での「Vマイル」の購入あるいはANAマイルとの交換、出店企業からの広告費などを想定する。
冨田氏は「まだ3割ほどのサービス展開。まずはダウンロード数を増やし、バーチャル空間内での滞留時間を延ばすことを目指す」と話し、具体的な獲得ユーザー数の目標については明言をしなかった。先行して実施されたアジアでのトライアルでは、ダウンロード数約3万5000件で、ユーザーは30代男性が最も多かったという。
一方、津田氏は「(移動でマイルが貯まる)ANA Pocketは、ローンチから2年でユーザー数100万人に達した。ANA GranWhaleでも、これくらいは目指していきたい」と話した。
バーチャル旅行空間やショッピング空間でマイルを活用
ANA GranWhaleの主要コンテンツは、「V-TRIP/Skyモール」「コミュニケーション」「マイルを貯める/使う」の3つで構成される。
V-TRIPでは、ローンチ時で国内61ヶ所、海外3ヶ所の訪問先を展開。提携先には、京都府/京都市、北海道、沖縄県、金沢市、和歌山県、愛媛県などの自治体のほか、星野リゾート・リゾナーレ・トマム、横浜赤レンガ倉庫などの施設も加わる。また、海外では、カリフォルニア州観光局、カタルーニャ観光局(スペイン)、タイ国政府観光庁、オーストラリア政府観光局と連携。「海外については、海外旅行促進のためにも連携先を増やしていきたい」考えだ(冨田氏)。
V-TRIPの特徴の一つが、訪問先でガイドを設定していること。京都の二条城と祇園新橋では、歴史学者の磯田道史氏を迎えた。また、グラフィックの精度の高さにもこだわり、旅のリアリティを追求。冨田氏は「実写と遜色ない景観で、アバターを撮影できる」と自信を示した。
訪問先で撮影した写真は、ANA GranWhale内のアルバムに保存できるほか、他のSNSに投稿することも可能。最大4人までのグループが参加するマルチプレイ機能も備え、グループ内でのチャットによるコミュニケーションを行うこともできる。
冨田氏は「海外のユーザーにとっては、日本の良さを知ってもらう機会になる」と話し、インバウンドの需要喚起にもつにがるとの期待を寄せる。現在のところ、日本語のほか英語と繁体字でサービスを提供する。
Skyモールには、ANA FESTAなどANAグループ4店舗に加えて、ミズノ、ラコステ、ジャーナルスタンダード、シップスなどのアパレルのほか、三菱UFJ銀行、セキスイハイムなど10店舗が参画する。バーチャル店舗では、ECによる商品購入のほか、アプリ上でアバターが身につけられるデジタルアイテムも用意する。
マイルについては、AMC会員はANA GranWhale内で使える「Vマイル」を1マイル=1Vマイルで交換可能。また、バーチャル空間で「グランチップ」を集めると、ANAのマイルが貯まる「マイルガチャ」を引くことがでるほか、グランチップ交換所では、アプリ内で使用できるさまざまな衣装やアイテムと交換することも可能。 「グランチップ」 はログインボーナスや「Skyロビー」や「Skyモール」のエリア内で毎日獲得することができる。