2024年の主要組織の「年頭所感」、要点を抽出し「ダイジェスト版」に整理してみた

2024年を迎え、旅行や観光関連企業・組織のトップやリーダーが年頭所感や新年の挨拶として事業方針や決意を表明している。そこでは、コロナ禍を経た「再生」「飛躍」への想い、2024年とその先への展望、今後の観光産業の復活を見据えた事業展開に向けた強い想いが読み取れる。

トラベルボイスでは、読者が各社・各組織の今後の活動方針を読み解くことができるように、原文のまま紹介している。以下は、2024年1月4日までに公開された年頭所感を整理したもの(1月1日の公開分は、能登半島地震が発生前に公開)。1月5日以降に公開されたものは、順次追加・更新する。


【行政・観光機関】

観光庁長官 観光庁長官 髙橋一郎氏 ―持続可能な観光の実現へ、さらなる高みを目指す1年に

髙橋氏は、観光需要が着実に回復し、特にインバウンドが旅行者数、消費額とも政府目標の達成が期待できる水準であることを紹介。この良い流れのなか、「持続可能な観光」の実現に向け、3つの分野に注力していく考えを示した。

日本政府観光局(JNTO)理事長 蒲生篤実氏 ―2024年は「インバウンド観光、飛躍の年」へ

蒲生氏は、2024年は「インバウンド観光、飛躍の年」として関係者との連携をより強化し、持続可能な観光立国に向け、辰年の辰のごとく飛躍できるよう各種取り組み進めていくと述べた。

日本観光振興協会 理事長 最明仁氏 ―観光マネジメント力の向上、観光のプレゼンスを確固たるものに

最明氏は、日本の観光はコロナ後も多くの課題に直面していると指摘。DX推進に向けた導入支援や人材育成などを進め、旅行の平準化や新たな価値創造、旅行者と受け入れ地域の双方に喜ばれる観光の実現に努めると述べた。

日本旅館協会会長 大西雅之氏 ―働く人にも夢を与えられる業界に

大西氏は、地方への誘客拡大のために、地域や業態で生まれた課題の克服が2024年の重要なテーマになると指摘。訪れる人だけでなく、働く人達にも夢を与えられる業界になるべく活動を続けていくと意気込んだ。

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長 井上善博氏 ―宿を核に地方創生を実現、業界の社会的責任

井上氏は、2024年は宿を核とした地方創生を実現するために業界を挙げて構造改革に取り組むとともに、人手不足、金融問題といった目の前の課題を一つひとつ解決していくと意気込んだ。

全国旅行業協会(ANTA)会長 二階俊博氏 ―再生への道筋と課題へ、官民が一致団結へ

二階会長は2024年を「旅行業界の再生への道筋と課題が見えてきた中で迎える新たな一年」と定義。業界全体で、持続可能な観光地域や、旅行の多様化、高付加価値商品の造成と促進、観光DX化などに取り組む意欲を示した。

日本旅行業協会(JATA)会長 髙橋広行氏 ―最重要課題は海外旅行の完全復活

髙橋氏は、海外旅行の完全復活が最重要課題とする一方、需要が急回復した国内も課題が多と言及。旅行業界の完全復活と活性化のため、様々な課題に取り組むとしている。

日本海外ツアーオペレーター協会 会長 大畑貴彦氏 ―海外旅行を好循環に戻す施策推進を

大畑氏は日本の観光政策でも、ツーウェイ・ツーリズムの大切さが認知されはじめたとし、政府主導でのアウトバウンド施策の推進を期待。2024年は業界各社との「協働」を通じて飛躍の年にしたいとの意欲を示した。

カナダ観光局日本地区代表 半藤将代氏 ―新しい観光の形で、より心豊かな社会へ

半藤氏は、日本とカナダ間の航空便数がコロナ前を大幅に上回っている現状を説明したうえで、カナダの旅行業界が一丸となって日本からの観光客を歓迎すると述べた。

ハワイ州観光局 日本支局局長 ミツエ・ヴァーレイ氏 ―再生型観光の推進、持続可能な観光を実現

ヴァーレイ氏は、ハワイは60年前の海外旅行自由化当時から今まで、日本人が行きたい海外旅行先であると言及。今後も旅行業界と連携し、日本市場のリカバリーと再生型観光の推進で、持続可能な観光の実現に貢献していく意欲を述べている。

【旅行会社・OTA・テクノロジー企業など】

JTB代表取締役 社長執行役員 山北栄二郎氏 ―人と社会に深く関わる領域でDX推進、コンプライアンスを最優先

山北氏は、JTBの各事業は、すべて祖業の「旅」から進化したビジネス領域であると説明。人と社会が深く関わる領域でデジタル化とDXを推進し、持続的な観光産業の未来につながるよう、努力を続けると約束した。

HIS代表取締役社長 矢田素史氏 ―顧客体験・満足度の向上へ、選ばれ続ける企業に

矢田氏は海外旅行の回復に全力で取り組むとともに、創業50周年を迎える2030年に向け、デジタル活用、人や地域とのつながりなどにより、人々が「心躍る」社会を次世代につないでいきたいと意気込んだ。

KNT-CTホールディングス 代表取締役社長 米田昭正氏 ―企業風土改革で信頼回復へ

【年頭所感】KNT-CTホールディングス代表取締役社長 米田昭正氏 ―企業風土改革で信頼回復へ、社会課題の解決、観光産業の発展に貢献

日本旅行 代表取締役社長 小谷野悦光氏 ―訪日客に鉄道旅行を促進、地域間の国際交流を生み出す

小谷野氏は、今年は人々の旅行意欲の一層の回復が期待できる一方、地域が抱える課題や環境保全への対応も必要であると強調。また、インとアウトの不均衡の改善を意識し、自治体等と連携して地域間の国際交流を生み出す仕組みづくりを進めていきたいとしている。

阪急交通社 代表取締役社長 酒井淳氏 ―新たなステージに向けて「大胆なチャレンジの年」に

酒井氏は2024年について、コロナ後の新しいステージに入る一年と位置づけ、国内旅行や訪日旅行それぞれの目標や方針を提示。柔軟に対応しながら大胆なチャレンジを進めていきたいとの意欲を示している。

楽天グループ トラベル&モビリティ事業 ヴァイスプレジデント髙野芳行氏 ―これまで以上にAIの活用を推進

髙野氏は、旅行者に選ばれるサービスであり続けるための具体的なカギの一つとしてAIを含むテクノロジーの活用を挙げ、楽天トラベルでもこれまでに以上に最先端のテクノロジー活用を推進するとした。

リクルート 旅行Division長 宮本賢一郎氏 ―生産性向上へ観光DXも重要な打ち手、総地域消費額の増加を

宮本氏は宿泊業界の人手不足が深刻化していることにふれ、じゃらんのデータなども活用しながら、観光DXを通じた生産性向上に取り組み、総地域消費額の増加を目指す方針を示した。

一休 代表取締役社長 榊淳氏 ―2024年はアウトバウンド事業を立ち上げ

榊氏は、宿泊市場について客単価の上昇や予約の早期化といった好循環が進んでいると述懐。一休は2024年、これまで国内市場でつちかったノウハウを活かし、アウトバウンド事業進出に視野を広げる方針も明らかにした。

エクスペディア・グループ リテール日本統括ディレクター/代表取締役 木村奈津子氏 ―AI活用で最適な選択肢を提供

木村氏は、旅行者の旅行体験を中心に据えて、プラットフォームを構築していることを説明。今後、旅行予約で生成AIが活用されることを踏まえ、旅行者と宿泊施設に対する最適な選択肢を提供していくと述べた。

ナビタイムジャパン メディア事業 兼 トラベル事業部長 毛塚大輔氏 ―企業と地域をつなぐハブとして進化を

毛塚氏は、2024年はインバウンド市場を中心にパーソナライズされた旅行体験の提供、消費拡大と観光周遊への貢献、グローバル市場へのアプローチを強化する方針を示した。

NECソリューションイノベータ 執行役員常務 村井暁氏 ―地域の全体最適の担い手を観光DXで支援

村井氏は、同社が推進する観光DXは地域を愛し、地域の全体最適を考えるプレイヤーの動きを支えるものであり、「個別事業者」「取りまとめ事業者」「地域住民」「観光客」「行政」の「五方よし」が実現する社会を願うとの思いを綴った。

LINEヤフー マーケティングソリューションズカンパニー ビジネスデザイン統括本部 第二ビジネスコンサルティング本部 本部長 三村真氏 ―新たな旅行トレンドとニーズを予測、予約・販売につなぐ

三村氏は、旅行の時間軸(旅行需要創出・プラン作成・旅行予約・体験と振り返り)を国内最大級の集客力を持つYahoo!検索やLINE公式アカウントを活用し、旅行業界へ貢献していきたいと意欲を示した。

tripla(トリプラ)CEO 高橋和久氏 ―サービス重層化と海外展開を強化

高橋氏は、2024年の経営戦略としてサービスの重層化と海外展開を強化すると表明。インドネシア市場への参入を加速するほか、宿泊施設のロイヤルカスタマー形成に向け貢献していきたいとの考えを示した。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング パートナー 平林知高氏 ―デジタル活用で「量と質のバランス」を

平林氏は、世界的な観光の潮流も引き合いに出し、より一層のデジタル活用による「量と質のバランス」、またリジェネレーション(改新)を意識して、サステナブルの先に進む必要があることを指摘した。

ブッキング・ドットコム 北アジア地区統括ディレクター 竹村章美氏 ―さらなるインバウンド強化、需要掘り起こしを

竹村氏は、世界の旅行者から日本が旅行先として、計り知れない魅力があると言及。ローカルを含む日本各地の需要を掘り起こし、世界の旅行者の誘致をサポートする意欲を述べた。

【航空会社と系列旅行会社】

日本航空(JAL)代表取締役社長 赤坂祐二氏 ―新たな挑戦と努力、ドローンや空飛ぶクルマなど次世代インフラ構築も

赤坂氏は、航空業界の二大課題であるカーボンニュートラルの実現と人的資本の最大化に取り組んでいることを紹介。JALグループの使命である安心・安全な社会とサステナブルな未来の実現に向け、ESG戦略を力強く推進するとしている。

ANAホールディングス 代表取締役社長 芝田浩二氏 ―新たな成長に向けた挑戦、「躍動の年」に

芝田氏は、2024年はAirJapanブランドの国際線就航やNCAのANAグループ入りなど新たな挑戦が始まると説明。グループ全体で成長軌道へ回帰し、2025年以降の成長に向けた「躍動する年」にしていく意欲を述べている。

ジャルパック代表取締役社長 平井登氏 ―2024年は「変革の年」に、ブランド誕生60周年

平井氏は社会の価値観や環境が大きく変化していることに触れ、同社も新たな価値提供や領域に挑戦していることを説明。ブランド60周年となる2024年は「変革の年」とし、常に成長を続けていく意欲を述べた。

ANAあきんど代表取締役社長 原雄三氏 ―ANAグループの航空セールスと地域創生をけん引

原氏は、2023年について人々の移動や活動がコロナ前に戻ってきたことを実感したと振り返るとともに、2024年は地域創生事業をさらに強化し、地域の発展、自社エアライングループの発展につなげると意気込んだ。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…