2022年を迎え、旅行や観光関連企業・組織のトップやリーダーが年頭所感や新年の挨拶として事業方針や決意を表明している。そこでは、2年におよぶコロナ禍とその影響の振り返り、2022年とその先への展望、今後の観光産業の復活を見据えた事業展開に向けた強い想いが読み取れる。
そのなかで、政府は感染拡大防止策徹底と同時に展開した「観光需要回復のための施策プラン」に言及とともに、2022年は国内交流の需要喚起(観光庁長官 和田浩一氏)のほか、国際観光の再開が期待される重要な年である(日本政府観光局(JNTO)理事長 清野智氏)と説明。一方、観光事業者・企業は、新たな展望や事業方針を推進する考えのほか、サステナブルへの取り組み強化などを含めた「未来につなげるための提案」に関する表明が多くみられた。
トラベルボイスでは、読者が各社・各組織の今後の活動方針を読み解くことができるように、原文のまま紹介している。以下は、2022年1月3日までに公開された年頭所感を整理したもの。それ以降に公開されたものについては、順次追加・更新する。
行政・観光機関
- 観光庁長官 和田浩一氏 ―まずは国内交流の需要喚起、デジタル化で観光産業の変革へ
和田長官は、コロナ禍からの回復期の切り札として、観光の重要性に変わりはないと説明。今後も安心・安全な旅行環境の確保に加え、「新たなGoToトラベル事業」の検討など、4つの観点から必要な取り組みを推進していく方針を示した。 - 日本政府観光局(JNTO)理事長 清野智氏 ―非常に重要な一年、サステナブル観光を発信
清野氏は苦難が続くなか、事業の継続に向けて尽力する観光関係者に敬意を表明。2022年は国際観光の再開が期待される重要な1年になるとし、JNTOとして日本の観光業界の復活に貢献できるよう、取り組む方針を示した。 - 日本観光振興協会理事長 久保田穣氏 ―困難を克服し乗り越える年、日本の観光再生に取り組む
久保田氏は2022年を、困難を克服し、乗り越えるための1年と位置づけ、日本の観光再生に取り組む方針。人流の正常化や需要喚起、国際交流の円滑化などに向けた政策提言滑動と同時に異業種連携にも積極的に取り組み、観光産業の強靭化を図るとしている。 - 日本旅館協会 浜野 浩二会長 ―GoToは目的ではなく手段、努力が報われ結実する年に
浜野氏は、この2年間で業界全体が受けたダメージに言及。金融対策や雇用の確保、または施設の整備等に関する要求に充分なエネルギーを注力しながらも正しい情報の中で安全安心な旅を増やすことこそが、現下の最重要課題だと説明している。 - 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長 多田計介氏 ―ひたすら耐えた1年から、次のアクションへ
多田会長はコロナ禍で、生命を預かる安心安全な宿であることを再認識したと述べ、生活衛生分野のノウハウを生かす時と言及。社会貢献活動を進めながら必要なことに声を上げ、観光立国にふさわしい国際協調とバランスを有する宿泊業界へ発展させる意欲を示した。 - 全国旅行業協会(ANTA)会長 二階俊博氏 ―今年は「コロナ禍からの復活」、国際交流も再開要望へ
二階氏は「コロナ禍からの復活」を掲げ、ANTAとして旅行業界の発展に向けた事業に重点的に取り組むことを表明。国際交流も、感染収束の地域から順次再開できるよう、関係省庁に要望するとしている。 - 日本旅行業協会(JATA)会長 髙橋広行氏 ―観光産業の「再生」目指して
髙橋氏は、4年ぶりの東京開催となる「ツーリズムEXPOジャパン」が、旅行復活の起爆剤になると期待。新しい局面を迎えるなかで旅行会社の真価が問われるとし、会員各社一丸で観光業界の再生を目指すとしている。 - 日本海外ツアーオペレーター協会 大畑貴彦会長 ― 海外、訪日旅行の復活を、真のツーウェイ・ツーリズム実現へ
大畑氏は、新型コロナウイルスの発生から2年が経過した現在も、日本が国際往来再開への方向へ舵を切れない状況について懸念を表明。復活のタイミングに照準を合わせた日本の施策実現とともに、ツアーオペレーターへの幅広いサポートを求める考えを示している。 - カナダ観光局日本地区代表 半藤将代氏 ―より幸せになれる心豊かで意義深い交流、観光を
半藤氏は、2022年は本格的な観光再開が期待できるとし、自然との調和や多様性、社会のサステナビリティが根付くカナダならではの新しい旅を提案する方針。心豊かで幸せな社会を作るためにも観光が不可欠と述べ、海外旅行の復活に力を尽くす意欲を示している。
旅行会社・OTA・テクノロジー企業など
- JTB代表取締役社長 山北栄二郎氏 ―創業110周年、テーマは「改革を未来につなげる」
山北氏は創業110周年である2022年、中期経営計画を「回復と成長に向けたフェーズ」に歩を進め、同社がこれまで提供してきた価値で地域・社会課題の解決に貢献していく意志を明示。持続可能なツーリズム産業の未来につながるよう、努力を続けるとしている。 - KNT-CTホールディングス社長 米田昭正氏 ―「旅したい」思いと持続可能な社会の発展に貢献
米田氏は厳しい環境下で持続的な成長を実現するため、事業構造改革でDX化の推進や新領域への取り組みを拡大すると説明。世界的な環境への意識の高まりとお客様の「旅したい」思いに応えながら、持続可能な社会の発展に貢献するとしている。 - 日本旅行社長 小谷野悦光氏 ―旅行業を未来へ紡ぐ「覚醒」を
小谷野氏は2022年、旅行代理店業からソリューション企業としての変革を加速すると説明。観光産業の従事者が明るい希望や夢を取り戻せるよう奮闘し、未来の社会に貢献する企業になるという強い意志を示している。 - 阪急交通社社長 酒井淳氏 ―高まる海外旅行への期待、2022年は「挽回の年」に
酒井氏は2年にわたる危機の間、新たなものを生み出す努力をしてきたことを説明。海外旅行に対する市場の期待が高まりを感じるなか、2022年は「挽回の年」とし、関係者との信頼関係のもと、常に変化を求め、成長し続けていく意欲を示している。 - 楽天 トラベル事業 髙野芳行事業長 ―旅行業界の早期回復に取り組む
髙野氏は、楽天トラベルが昨年前半から、感染拡大防止の観点でワクチン接種の推進とワクチン接種を活用した旅行業界の支援に取り組んできたことを説明。宿泊施設やパートナー事業者とともに、旅行業界の早期回復に取り組むとしている。 - リクルート 旅行Division長 宮本賢一郎氏 ―国内総旅行回数の増加と旅行業界全体の活性化へ寄与を
宮本氏は昨年も、例年に続いて宿泊施設や地域の課題解消に挑戦してきたことを説明。旅行者の「理想の旅行」と宿泊施設や地域の「理想のおもてなし」の実現を支援し、旅行業界の貢献に向け、国内総旅行回数の増加に取り組むとしている。 - ヤフー マーケティングソリューションズ統括本部 第二営業本部 本部長 三村真氏 ―検索データに基づいた仮説で旅行業界に貢献
三村氏は、コロナ禍で増大した検索データから見える新たな需要や心理の変化が、以前とは全く異なる動きを見せている点を紹介。検索データの可視化等をはじめ、データの持つ価値を提供して旅行業界への貢献や活性化への寄与を目指すとしている。 - ブッキング・ドットコム 北アジア地区統括ディレクター 竹村章美氏 ―サステナブル旅行をさらに推進、コネクテッド・トリップを拡大
竹村氏は、旅行者が「人々との交流」「よりサステナブルな旅行」に関心を持ち始めていることに着目。こういった変化に柔軟に対応すると同時に、最先端のテクノロジー企業として、ワンストップ&シームレスな旅行予約を実現する新サービスにも注力していく考えを示している。 - エクスペディア・ホールディングス代表取締役 マイケル・ダイクス氏 ―過去2年間の投資が大きく動き出す年に
ダイクス氏は2022年について、「過去2年間をかけて投資してきたものが大きく動き出す年」と表現。同社が展開中のプログラムの推進に加え、今後さらに顧客やパートナー施設にとって最適なソリューションの提供を強化したいとの想いを述べている。 - Trip.comグループ日本代表 勝瀬博則氏 ―回復に向け積極投資、若者に支持されるサイトに
勝瀬氏はコロナ禍の困難な状況でサービスを利用したユーザーや協業パートナー、社員に謝意を表明。先行きは不透明ながらも、将来の旅行の回復と成長に寄与すべく、3つの方針を示した。 - ナビタイムジャパン トラベル事業部長 毛塚大輔氏 ―旅行計画サービスを通して業界の活性化に貢献
今年、毛塚氏は混雑状況を加味した旅行先や旅行プランを提案する仕組みの開発や、同社の旅行プランニングサービスを通したマーケティングソリューションを提供する方針を説明。業界全体の活性化に貢献していく意欲を述べている。 - NECソリューションイノベータ イノベーション推進本部 川村武人氏 ―地域観光のデジタル化支援で、観光の価値と収益向上を
川村氏は、資金や専門知識のリソース不足に悩む中小観光事業のデジタル化に寄り添ってきたことを説明。地域の魅力を直接伝えられるのは地域の観光事業者であるとし、地域のデジタル化を支援して、観光サービスの価値と収益向上が続く社会を目指すとしている。 - テレコムスクエア取締役通信営業本部長 田村正泰氏 ―海外渡航の本格的な再開時には新たな価値を
田村氏は、海外渡航の本格的な再開時に、必要とされる新たな価値を提供していく意志を提示。創業30周年の節目である2022年を「“新生”に向けて力強くテイクオフする」年とする意欲を述べている。 - マスターカード日本地区社長 チャン・ユンソク氏 ―国際基準の決済インフラがインバウンド回復時の競争力に
チャン氏はコロナの影響を強く受けた観光産業の再活性化への期待を示し、真の観光立国にはその基盤となるキャッシュレス化が欠かせないとの考えを提示。国際基準のキャッシュレス化推進とインバウンド施策のサポートで観光業界に貢献する意志を示している。 - アメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベル・日本旅行(GBT NTA)代表取締役社長 マルコ・ペリッツア氏 ―出張の未来に大きな自信、新技術に投資を
マルコ・ペリッツア氏は、2022年はより環境に配慮し、より効率的に旅行ができるソリューションや新技術に投資する方針を表明。独自ツールやサービスを提供する計画とともに、出張の未来に対して大きな自信を持っているとの展望を示した。 - ベンチャーリパブリック代表 柴田啓氏 ―第2の創業、テクノロジー新潮流を捉え進化を
柴田氏は、2022年について、世界における変化のスピードがさらに加速するとともに、未来の社会を大きく変えるような新しいテクノロジーの潮流が急速に生まれると予測。変革を恐れずにサービスやプロダクトを進化させていきたいとの強い想いを表明している。
航空会社と系列旅行会社・GDS
- 日本航空(JAL)代表取締役社長 赤坂祐二氏 ―ゼロエミッション達成への「脱炭素元年」に
赤坂氏は、持続可能な社会の実現が必要との考えを提示。2050年までのCO2排出量実質ゼロ達成に向け、省燃費を推進する機材導入や燃料開発に取り組む意欲を述べた。 - ジャルパック代表 江利川宗光氏 ―着実に進む国際交流の再開への道、逆境の中に明るい光を
江利川氏はこの2年、海外旅行の再開が変異株の出現で延期となってきたことを、ギリシャ神話の「シシュポスの刑罰」に例えて表現。しかし、交流再開の準備は水面下で進んでいるとし、今後も諦めることなく、何度でも取り組んでいく決意を示している。 - ANAホールディングスCEO 片野坂真哉氏 ―創立70周年、自信をもって前に進もう
片野坂氏のグループ年始式の年頭挨拶。コロナ禍で最も感謝したいのはグループ社員の頑張りであると述べた上で、コロナ3年目となる2022年の進み方の所感を提示。夜明けに近づけるのは社員の底力と述べ、全員の力で立ち向かっていこうと呼びかけた。 - ANAあきんど社長 高橋誠一氏 ―新しい需要の拡大、地域への愛着を掻き立て地域経済に貢献
高橋氏は新しい働き方や密を回避したレジャーなどの新しい動きを育て、地域やパートナーとともに新しい需要の拡大に注力する意欲を示した。「三方よし」の精神で新しい価値づくりに挑戦するとしている。 - トラベルポートジャパン日本支社長 岡安美里氏 ―旅行のエコシステムをシンプルな未来の形へ
岡安氏は「旅行業の持続性」も重要であると指摘。消費者や企業のニーズはもちろん、旅行業界の働き方も変わり続ける時代に販売機会の最大化やさらなるデジタル化を推進し、旅行者と旅行会社、航空会社が満足するプロダクトやサービスを提案するとしている。 - インフィニトラベルインフォメーション社長 植村公夫氏 ―コロナ後に向け旅行会社・航空会社とともに
植村氏は、アフターコロナに向け、インフィニ・Sabreの二刀流で最適な提案ができるように取り組む意欲を表明。顧客満足度NO.1のGDSであり続けられるよう、社員一丸でベストを尽くすとしている。 - アマデウス・ジャパン社長 カイ・ゲリット・ヤコブセン氏 ―「量」から「価値」に移った焦点、持続可能性をすべての事業で
ヤコブセン氏は所感の中で、「パンデミックは、『量』から『価値』に焦点を移し、業界をより良い形へ再構築する絶好のチャンスをもたらした」と表現。旅行のDXによるエコシステムや持続可能性などの重要性のほか、業界全体で実現すべき展望を示した。