沖縄発の全国版DMCが始動、訪日富裕層を地方へ、あの「刀」社の子会社が立ち上げ、全国5社がパートナーとして参画

沖縄本島・北部地域を中心にアドベンチャートラベルツアーを展開する「沖縄アドベンチャートラベル」は、新たにデスティネーション・マネージメント・カンパニー(DMC)として、「ネイチャー・トラベル・ジャパン」を立ち上げた。「Japan Adventure Travel」をブランド名として、海外の旅行代理店向けに、沖縄だけでなく日本全国のツアー造成・販売サービスを提供していく。

沖縄アドベンチャートラベルは、沖縄北部で2025年夏に「JUNGLIA(ジャングリア)」の開業を進めているマーケティング会社の刀社によって2023年8月に設立された。今後、そのブランドである「沖縄アドベンチャーズ」は残し、ツアーオペレーター機能も継続していく。

社内コンペで沖縄アドベンチャートラベルを立ち上げ、ネイチャー・トラベル・ジャパンでは事業責任者を務める竹田尚子氏は、DMC立ち上げの背景について、「沖縄でアドベンチャートラベルツアーを造成して、募集をかけて、ただ待っているだけでは、インバンド旅行者はなかなか来てくれない。海外の旅行代理店とつながるネットワークが必要だと考えた」と説明する。

その思いを強くしたのは、2023年9月に北海道で開催された「アドベンチャー・トラベル・ワールドサミット2023(ATWS2023)」に参加したことがきっかけだという。海外の旅行会社から「『沖縄もいいところだけれど、東京や他の地域も巡りたいが、どこが窓口になるのか』と聞かれることが多かった」。

沖縄アドベンチャートラベルは、沖縄に特化したツアーオペレーター。他の地域の手配などはできず、「沖縄に呼び込むチャンスを逃していた」と話す。

アドベンチャートラベルを好む訪日客は、比較的、滞在期間が長く、初来日の人も多いことから、アドベンチャー的なコンテンツの他にも、東京やゴールデンルートも巡りたいという需要が高い。ただし、地域ごとに誘客しても、そうした全国周遊のニーズに応えられないことも多い。

その課題は、他の地域のDMCも共有していたという。そこで、Japan Adventure Travelのブランドのもとで、賛同するDMCがタッグを組んだ。沖縄アドベンチャーズに加えて、海外に地域のアドベンチャートラベルツアーを販売する「北海道宝島旅行社」「東京山側DMC」「Shikoku Tours」「インアウトバウンド東北」「Hiroshima Adventure Travel」が参画。海外、特に欧米豪の旅行代理店の問い合わせやオーダーにオールジャパンで対応できるプラットフォーム体制を整えた。

竹田氏は、「アドベンチャートラベルを取り扱い、スルーガイドを有している地域のツアーオペレーターを増やしていきたい」と意欲を示す。

竹田氏は「沖縄アドベンチャートラベル」のために沖縄に移住したテーラーメイドでツアーをストーリー化

Japan Adventure Travelのターゲットは訪日客。アウトドアのアドベンチャーから文化体験まで各地域のDMCが提供する単発のツアーに加えて、テーラーメイドのツアーも手がけていく。そのために、まずは商談会など様々な機会を通じて、海外の旅行代理店とのネットワーク構築を進めていく考えだ。

テーラーメイド商品で、こだわるのはストーリー性をもったツアーだ。提案するモデルコースには、例えば、日本の食文化を探求する全国ツアーがある。東京湾で海苔の歴史や特徴などを学び、奥多摩ではワサビ農家を訪れ、寿司の奥深さを知る。京都に移動し、抹茶や和菓子の体験。大阪では、粉物文化を体験するとともに、食品サンプルの生産者を訪問する。さらに、沖縄では、長寿の秘訣と言われている伝統料理を味わい、その精神性に触れる。全14日間のコースで、「日本」の食文化をストーリー化する。

また、ファミリー向けには、南北に長い日本の季節の特徴を活かし、北海道でスノーアドペンチャーなどを体験したのち、沖縄では暖かいやんばるの自然を体験するコースも提案する。

さらに、ホームページでは京都、大阪、瀬戸内、沖縄の各地でe-bikeを使ったサイクリングツアーもモデルツアーとして掲載している。

「もっと地方を楽しみたい、ローカルの人に会ってみたい、という需要は多いが、そのニーズを受け止める体制が弱かった」と竹田氏。訪日アドベンチャートラベラーは、富裕層が多く、旅程もフレキシブルな場合が少なくない。「全国的なDMC機能があれば、例えば、あと3日追加すれば、沖縄や四国、北海道にも行けますという話ができるようになる。仮に、その時北海道が選ばれなくても、記憶には残り、次回の訪問機会につながるかもしれない」。

地域のDMCとパートナーを組むことで、提案力だけでなく、販売力も強まる。竹田氏は「ツアーをつくって終わりは、もうやめなければいけない。つくって、プロモーションして、販売して、地方への訪問に繋げていくことに真剣に取り組まなければ」と強調した。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…