【年頭所感】全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会 会長 井上善博氏 ―宿を核とした地方創生を、温泉文化をユネスコ無形文化遺産に

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長の井上善博氏が、2025年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

井上氏は、宿泊観光産業を国の基幹産業にし、宿を核とした地方創生を実現していくためには、全旅連がその中心とならなければいけないと強調。業界が抱える生産性・収益性の向上、人手不足問題、自然災害への対応といった課題解決に向け、公的役割を果たしていくことも期待されていると述べた。

また、「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた取り組みを推進するといった具体的な活動方針を示すとともに、「お客様を最高のおもてなしでお迎えし、世界に唯一の宿文化を存分に体験いただき、お客様に宿泊した宿を愛し、そしてその地域を愛してもらう」という当たり前のことが重要と訴えた。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


年頭所感

2025年の新春を迎え、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。

昨年は、心穏やかなお正月を迎える中、能登半島地震が発生しました。改めて、お亡くなりになられた方に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまにお見舞い申し上げます。全旅連も発災直後から、被災地支援について政治、行政の関係者とも膝詰めで協議を行い、その結果、一定の必要な支援を実現させることが出来ました。しかしながら、いまだ能登半島の復旧・復興は道半ばであり、本年も地域に寄り添い、必要な支援を行っていきたいと考えております。

一方で昨年は、訪日外国人旅行者数が過去最高となるなど、宿泊観光業界はコロナ禍から抜け出し新たな産業発展を目指すフェーズに入りました。今後は、宿泊観光産業を国の基幹産業にし、宿を核とした地方創生を実現していき、そして、全旅連はその中心とならなければいけません。

昨今全旅連は、業界が抱える、生産性・収益性の向上、人手不足問題への対応、頻発する自然災害への対応といった課題の解決に向け、観光庁や厚生労働省をはじめとする関係省庁とも政策的な連携を深め、実際に国の事業も受託し成果もあげています。また、全旅連は、地域づくりへの積極的な貢献、災害時における被災者の受入、といった公的役割をより一層果たしていくことも期待されています。

そのためにも、今年は全旅連について、各種政策を推進する部会の再編成、本部と各都道府県組合事務局の連携強化など、組織体制の見直しやガバナンスの強化などに着手する予定です。そのうえで、

  • 宿文化の普及啓発、「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた取組の推進
  • 宿泊客からお預かりした寄付金を自然保護、歴史・文化の保全などに充て、地域社会の持続可能性を高める新たな制度の導入・運用
  • 観光庁が創設した「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン・登録制度」や「心のバリアフリー認定制度」の推進
  • デジタルデータフォーマットの標準化等によるDX化の推進
  • 宿泊業技能試験センターの取組の支援や、観光庁推奨の特定技能プラットフォームの利用の推進等による外国人労働者の受入の推進
  • 災害時における行政、各都道府県組合、宿泊施設との迅速な情報共有を可能とする災害時情報連携システムの整備

等を推進したいと考えております。

この他、政・官・民が一丸となり「観光立国・日本」を実現させるためには、宿泊観光業界から国会議員を誕生させるとともに、観光庁を「庁」から「省」に発展させることが必要です。そうした機運の醸成も引き続き図ってまいります。

最後に、私は、「日本の宿には文化がある、今を生きる我々はその文化を守り、発展させ、そして次世代に継承していく義務がある」と考えています。そのためにも、「一日一日、一つ一つの宿が、お客様を最高のおもてなしでお迎えし、世界に唯一の宿文化を存分に体験いただき、お客様に宿泊した宿を愛し、そしてその地域を愛してもらう」という当たり前のことをやっていくことが重要です。その先に、宿泊観光産業の明るい未来があるのではないでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会

会長 井上善博

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