国土交通省・国土交通政策研究所は、このほど「訪日旅行のブランド・イメージに関する調査研究」の報告書をとりまとめた。海外市場における「旅行先としての日本」のブランド・イメージを整理・分析することを目的に、イメージの連想関係や関係性の強弱を視覚的に整理する「イメージ・マップ手法」を用いたもの。
調査では、まず東南アジア(タイ、シンガポール)と欧州市場(イギリス、フランス)の現地旅行会社などに「旅行先としての日本」のイメージとして想起される地名や場所、アクティビティなどについてインタビューを実施。
そこで挙げられたキーワードをもとに重要要素を図の中央に配置し、さらにそこから連想されたキーワードを「都市・現代文化」「自然」「歴史・伝統文化」「産業」といったカテゴリーに分けて配置、各要素の関連性がわかるように線で結んだ。また、複数名から回答があった要素については枠を大きくするといった表現法も採用している。
たとえばシンガポールでは、日本について想起されるイメージとして「買い物」「自然」「食事」が中心にあり、さらに「安全・安心」「人が親切・マナーがよい」といったイメージも形成されている。
また、「自然」カテゴリーには「桜」「温泉」といったキーワードのほか「富士山」「北海道」といった具体的な地名が連想されている。さらに、「温泉」は「リラックス」というイメージに関連づけられて想起されている様子もわかる。その一方、「歴史・伝統文化」についてのイメージは弱いことがわかった。
シンガポールのイメージ・マップは以下のとおり。
一方イギリスでは、日本について「富士山」「新幹線」「サクラ」といったワードが主に想起されているものの、具体的な魅力までにイメージの広がりが至っていない。また、「費用が高い」「物理的・心理的に遠い」といった否定的な印象ももたれている。
関連分野では、「歴史・伝統文化」「都市・現代文化」「産業・技術」についての観光資源が認知される傾向にあり、さらに「旅館への宿泊」といった日本独特の文化を体験するイメージが想起されている。
イギリスのイメージ・マップは以下のとおり。
なお、今回の調査では、できあがったイメージ・マップの活用方法を九州観光推進機構協力の協力を得て検討、たとえば九州がもつ観光資源「温泉」に関する情報発信などのありかたを分析した。
その結果の一例として、シンガポール向けには「リラックス」「温泉」をメインとした訴求を行いつつ、九州の「旅館」を関連づけて浸透させていくといった方策が考えられると分析。一方でイギリス向けには「日本の伝統文化やライフスタイルを体験」というテーマを中心に置き、「旅館への宿泊」「温泉」を関連づけて情報を発信、浸透を促すことが有効となる可能性があるとされている。