KNT-CTホールディングスは2020年11月11日、事業構造を抜本的に改革すると発表した。コロナ禍で経営環境が悪化し、自己資本比率が1.4%(2021年3月期第2四半期連結会計期間)にまで悪化していることなどが背景。依然として収益力を維持するクラブツーリズム、首都圏エリアの法人旅行事業を中核に据える一方、近畿日本ツーリストの個人、団体事業はウェブ販売、教育旅行などに集約して営業所も縮小。経費削減のため、全従業員約7000人の約3分の1を2024年度末までに削減する。
メイト、ホリディ終了、ダイナミックパッケージへ
近畿日本ツーリスト(KNT)の個人旅行事業は、パックツアーのブランドで、国内旅行「メイト」、海外旅行「ホリデイ」販売を2021年3月末で終了。今後は、ダイナミックパッケージをベースにしたウェブ販売に集中する。国内ダイナミックパッケージは2020年10月から、海外ダイナミックパッケージは2021年4月に販売開始する予定。これに伴い、現在、全国に138あるKNT個人旅行店舗は2022年3月末までに約3分の1に縮小。スマートフォンなどを通じたウェブ上でのオンライン接客の体制を拡充する。
KNTの団体旅行事業についても、従来のビジネス、教育、一般団体の親睦旅行などフルライン型の営業展開から、教育旅行、地域交流事業といった専門性の高い分野に集約。国内外のMICE事業を強化するために近畿日本ツーリストコーポレートビジネス、KNT-CTグローバルトラベルを2021年4月に合併してハイブリッド式の運営開発を進める一方、KNT団体旅行支店は現在の95支店から2022年3月末までに約70支店へと縮小する。
選択と集中を図るなか、中核として拡大するのは約700万人の会員を抱えるクラブツーリズム事業だ。新たに「新・クラブ1000事業」を開始し、オンライン上にさまざまな趣味・嗜好のクラブ(コミュニティ)を構築するほか、事業をフランチャイズ化し、DMOなどと連携することで地域を切り口にしたクラブを創設する。クラブツーリズム事業は法人旅行事業とも連携して企業とのアライアンスを強化。2024年度までに専門性・希少性のある趣味の講座、座談会、イベントなどを一部有料で提供する有料会員数100万人の獲得を目指す。
約7000人の従業員、3分の1削減
観光産業にとって戦後最大の逆風が吹き荒れるなか、従業員の大きな痛みを伴う大ナタも振るう。現在、グループ合計で約7000人の従業員を新規採用抑制、定年退職など自然減、出向に加え、35歳以上の希望退職を募って2024年度末までに約3分の2へ縮小する計画。希望退職の募集期間は2021年1月4~22日で、優遇措置として特別退職加算金、再就職支援サービスなどを提供する。従業員の賞与も2020年12月から大幅に減額。11月から本給、各種手当も減額する。
このほか、役員報酬の減額、店舗数の縮小やテレワーク推進による事務所賃借面積の縮小、パンフレットコストの圧縮などにより、2022年度には構造改革前に比べ約200億円の経費削減効果も見込む。
2021年3月期連結は純損失170億円の赤字に
同グループは同日、これまで未定としていた2021年3月期の通期連結業績予想も発表。これによると、コロナ禍の収束は見込めない状況でありながら、政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」の東京除外が解除されて以降、国内旅行の予約が急伸し、売上高は1400億円(前期比63.7%減)を予想。ただし、本業の儲けである営業利益は250億円の赤字(前期は16億800万円の赤字)、純利益170億円の赤字(同74億4300万円の赤字)と、大幅な減収減益となる。