政府は2021年11月19日、財政支出55兆円を超える経済対策を閣議決定した。これを受けて、観光庁は今後の観光需要喚起策の考え方を発表。地域観光事業支援(いわゆる県民割)の対象範囲拡大とGoToトラベル再開に向けた道筋を示した。
和田浩一観光庁長官は会見で「1月の3連休あたりで感染状況を改めて確認したうえで、2週間後に感染状況が落ち着いていれば、全国規模での新たなGoToトラベル事業を実施する」と説明。再開は早くても1月下旬になる見込みだ。
また、県民割について、11月19日以降、「ワクチン・検査パッケージ」の活用を前提として、準備が整った都道府県から対象に「隣県」を追加し、さらに、年明けの感染状況を確認したうえで、支援対象を近隣圏域(地域ブロック)に拡大する。支援期間は2022年3月10日宿泊分(3月11日チェックアウト)まで延長する。
GoToトラベルと県民割との併走は認めるが、両方の同時利用は認めない方針だ。
新たなGoToトラベル事業、旅行2週間後の健康状態を調査
観光庁の示した新たなGoToトラベル事業の大きな変更点は、「ワクチン・検査パッケージ」の活用が前提となること。ワクチン接種証明または陰性証明を利用条件として設定した。
感染防止策として、旅行後2週間以内にGoTo利用者が陽性になった場合、その報告や旅行中の行動履歴を記録することを利用条件とする。また、GoTo事務局は旅行2週間後の健康状態に関する抽出調査を実施する。
また、中小事業者への配慮として低価格帯の実質的な割引率を引き上げる。割引率は段階的に引き下げるものとし、ゴールデンウイーク(GW)後は都道府県による事業に転換。地域の実情に応じて割引率を設定する方針だ。和田長官は、割引率の段階的な引き下げについて「GoToトラベル終了後の急激な需要の落ち込みを避けるため」と説明。地域からの要望を取り入れたソフトランディング措置とした。
このほか、旅行需要の平日への分散を目的に地域共通クーポンの平日上乗せ、地方観光の支援のために交通費を含む旅行商品の割引上限を引き上げる。
具体的な割引率は、昨年実施時の割引率35%(割引上限1万4000円)から交通付き商品を30%(同1万円)に引き下げ。GW後から夏休みまでは20%(同8000円)を上限とする。交通付でない商品の割引上限はGWまでは7000円、GW後は5000円とした。
地域共通クーポンは、昨年実施時の旅行代金15%から一律の金額に。平日は夏休みまで3000円、GWまでの休日は1000円としている。いずれも、GW期間中は対象外となる。
和田長官は、交通付商品の割引上限額を高めに設定した理由について、「近隣の観光地の需要の回復は見られるが、遠距離の回復が芳しくなく、インセンティブを働かせて、需要を喚起するため」と説明した。