タビナカ予約のKlook(クルック)は2022年3月1日、新しい旅のあり方を体現した大々的なリブランディング戦略を発表した。同社の共同創業者兼最高執行責任者(COO)、エリック・ノック・ファー氏は、ポスト・パンデミック期に向けて、「旅行の喜びを取り戻す」との意気込みを示している。
ファー氏は「(コロナ禍の)2年間は、まるでジェットコースターに揺られているような激動の日々だったが、水平線の向こうを見ながら前へと進み、ここまで来ることができた」とビデオメッセージでコメント。パンデミック以降、国内旅行へと軸足を移したことが奏功し、同社の主力市場であるアジア各地が規制下にあるにも関わらず、2021年のグローバル全体での売上高は、2019年を上回ったことを明らかにした。
今回、新しくなったクルックのブランド・アイデンティティーには、「楽観的で、楽しく、情熱的に」をキーワードに、あらゆる体験を五感をフル活用して楽しもう、というメッセージと、旅行業界を活性化させるとの決意を込めた。
ブランドカラーは、従来のオレンジ単色から、よりカラフルに生まれ変わり、新アイコン「ジョイスプラッシュ」では、「彩り豊かな心と生きる情熱」を表現しているという。
ファー氏は「新しい時代の旅行スタイルを再構築する我々に期待してほしい」「旅行の喜びを取り戻すこと、そして国内外での旅行やレジャーにおいて、頼りになるアプリとなることを約束する」と話した。
タビナカBtoB支援サービスを立ち上げ
クルックでは2020年以降、パンデミックによる旅行需要の激変を受けて、取扱商品の見直しを進めてきた。例えば、シンガポールや香港では、すでに8割の人が楽しんでいるというステイケーション。そこでクルックでは、宿泊と各種アクティビティーをセットにした商品「ステイ+(ステイプラス)」を提供開始した。
今後、インバウンド市場の復活を視野に、日本での商品開発も検討していく。その他にもレンタカー、旅行保険など、新しいカテゴリーを増やした結果、商品数は2019年の4倍以上、49万件超に拡大。取扱いデスティネーションも倍増して世界1000都市以上。月間アクティブユーザー数は、コロナ前をすでに上回っている。
またパートナー事業者向けのBtoBソリューションを提供するブランドとして、新たに「Flickket(フリケット)」と立ち上げた。これはクルックが得意とするデジタル変革(DX)ソリューションを、観光施設などパートナー事業者向けに提供するもので、例えばQRコードをスキャンするだけで入場手続きが完結する非接触型サービス「ExpressGo(エクスプレスゴー)」など、オペレーション効率化につながるDX導入や、販路のグローバル化を支援する。
さらにアジア大手スーパーアプリ「Grab」やグーグル「Google Things-to-Do(グーグルのタビナカ予約)」との連携により、新規顧客を開拓する機能も充実させている。クルックによると、コロナ以降、同社のソリューションを使ってデジタル変革に乗り出す事業者数は、世界全体で8倍に増加した。
日本では近場レジャーと沖縄に注力
一方、日本市場の2022年の展望について、クルック日本法人ゼネラルマネジャーの増田航氏は、「まず国内旅行、続いて国境を越えた旅行が、必ず復活してくる」との見方を示した。
今後の需要の回復状況を見ながら、まずは国内の観光施設、博物館、美術館などの入場チケットを中心に近場レジャーに注力し、続いて沖縄の重点プロモーションなどを計画している。海外旅行については、クルックの主要ユーザーでもある若年層が真っ先に動き出すと予測しており、同層をメインターゲットに据えたハワイやタイの商品供給を充実させていく。
訪日インバウンド市場については、「クルックの海外拠点からの期待が高く、日本が観光客受け入れを再開するのを待っている。現時点では、特にシンガポール、香港、オーストラリアで日本への送客意欲が非常に強くなっている」(増田氏)。こうしたなか、日本側では国内の鉄道各社との連携強化を重点方針の一つに挙げており、鉄道の電子チケットと沿線の観光施設を組み合わせた企画商品などに取り組み、地方への送客増にもつなげたい考え。
増田氏は、「日本においても、旅行・レジャーに関するすべてが手に入るスーパーアプリ、お客様にとって便利な総合eコマース・プラットフォームを目指す。ユーザーには、技術とコミュニケーション機能の両面から、よりパーソナルなアプロ―チを実現することで、エンゲージメント向上を狙う」と今後の目標について話した。
コロナ以前、インバウンド需要が大半を占めていたこともあり、クルックの日本市場における事業規模は、まだ2019年レベルには戻っていない。とはいえ、過去2年間、国内旅行への転換を急いできたことが奏功し、2021年の売上やユーザー登録数は、前年比で1000%以上の増加に。今年は、国内旅行、訪日インバウンド、そして日本発アウトバウンドという3つの旅行市場を柱に、2019年を越えることを目指す。