日本政府の水際対策の緩和と感染症危険情報の「レベル2」への引き下げを受け、一部の旅行会社が4月上旬から中旬、ハワイツアー(ダイナミックパッケージ含む)の催行再開を発表した。これまでも海外ツアーの予約を受け付けている旅行会社はあったが、ツアー催行(出発)決定には至っていなかった。
2年ぶりとなる海外ツアーの催行決定に、市場はどう反応しているのか?旅行会社と航空会社に取材した。話しを聞いたのはJTB、エイチ・アイ・エス(HIS)、ジャルパック、ANA X、楽天の5社と全日空(ANA)。
旅行各社の予約状況
JTBでは、2022年4月28日以降で出発(催行)が決定したダイナミックパッケージの対象プランを、4月15日に発売。同商品を含む9月末までの全ハワイツアーの申し込み数は、全国約750名となった(4月20日現在)。JTBでは以前からハワイツアーの予約を受け付けていたが、「4月13日に催行再開の発表後、弾みがついた」(JTB広報室)という。
ハワイをはじめ、米5都市へのツアーで、4月27日出発以降の催行再開を発表した楽天でも、「以前から予約は可能だったが、催行再開を発表した4月15日以降、多くの予約が入っている」(楽天グループコマースカンパニートラベル&モビリティ事業PR推進室PRグループ)。旅行会社が広く募集するツアーの催行決定が、マーケットに“海外旅行解禁”の印象を伝える大きな役割を果たしていることがうかがえる。
ただし、観光目的の海外旅行の予約は、ツアー再開を機に動き出したわけではないという。
一足先にダイナミックパッケージでのハワイツアーの催行を発表したANA Xによると、「もともとゴールデンウィークは、4月29日出発を中心に航空券で多数の予約が入っていた」(ANA X広報)。その後、4月6日にツアー催行再開を発表すると、リピーターを中心にツアーでの予約や問い合わせが入るようになったという。
4月13日に、5月1日出発以降のハワイツアー催行再開を発表したエイチ・アイ・エス(HIS)でも、ツアー再開の発表以前から航空券での予約が入ってきていた。その潮目は、日本が水際対策を緩和した3月1日以降。「海外旅行のハードリピーターを中心とするアーリーアダプターがゴールデンウィークの予約で動き、ツアー再開の発表で通常の客層も動き出した印象。『行ってよいタイミングになった』と判断する人が増えたのではないか」(HIS広報室)と推測する。
ツアー再開発表後の予約は、夏休みを中心にGW以降の旅行申し込みが多いようだ。4月12日にツアー再開を発表したジャルパックも、「GWより5月以降の予約が順調に推移」(ジャルパック広報・社会貢献グループ)。楽天も「予約は入ってきているが、GW期間のハワイ直行便ツアーの空きはある(4月25日現在)。GW以降は6月の予約が最も好調」と説明する。
客層は各社の特徴によって異なるようだ。ジャルパックの場合は「ハワイのリピーターで、時間にも余裕のある50代以上が目立つ。家族客はまだ低調」。一方、HISは「家族や友人同士など若い客層が多い。シニアは様子見している感がうかがえる」。楽天は「家族連れから40~50代の夫婦、若い女性のグループなど、客層は幅広い」という。
なお、海外ツアー再開にあたり、各社はサイト上に各国の入国条件などをまとめたページを設けたり、PCR検査関連や海外旅行保険の付与、キャンセル料免除など、それぞれ様々なサポートを用意している。
また、ツアー催行の対象方面を広げる意向を持つ旅行会社も多く、HISでは5月16日出発以降の米国、カナダ、シンガポール、豪州方面のツアー催行を再開。ANA Xでは6月1日出発分から米本土2都市、シンガポール、豪州への催行再開を発表している。
ゴールデンウィークのハワイ線、初日ほぼ満席
全日空(ANA)と日本航空(JAL)が先ごろ発表したゴールデンウィーク期間(4月29日~5月8日)の予約状況によると、ハワイ線の提供座席数・予約率はANAが3168席・65.1%。JALがハワイ線とグアム線の合算で4220席・77.2%だった。
このうちANAは運航機材はボーイング787を使用し、期間中に6便(片道)を運航する計画。初日は満席に近い予約だという。ANAではゴールデンウィーク中に夏休みの予定を立てるケースも多いとし、今後の予約増加を期待している。