帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査で、特に「旅館・ホテル」で人手不足が目立つ状況が鮮明となった。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、徐々にアフターコロナへと向かうなか、いち早く抜け出せる施策を打てるかがカギになっている。調査は2022年4月15~30日に全国2万4854社を対象に実施。1万1267社から回答を得た。雇用の過不足状況に対する調査は2006年から毎月実施している。
これによると、2022年4月の正社員の人手不足割合は45.9%で、前年同月から8.7ポイントの大幅増加。業種別にみると、コロナ禍前まではインバウンド需要で好調だった「旅館・ホテル」は2年前の2020年4月には1回目の緊急事態宣言によって大きな打撃を受け、その時点の人手不足は12.5%、2021年4月も23.5%と大きく上昇し、直近の2022年4月時点では52.4%と、再び多くの事業者が不足感を感じている。51業種中でも9番目に高かった。
特に深刻なのが非正社員だ。2022年4月の全体の人手不足割合は27.3%だが、「旅館・ホテル」は56.1%と大きく上回っており、「飲食店」の77.3%に次いで2番目となった。2020年4月の6.9%と比べると、50ポイント以上の増加だ。企業からは「県民割の適用により、旅行客が増加している」(旅館・長崎県)、「決して楽観できる状況ではないが、まん延防止等重点措置が解除され昨年よりは良い」(旅館・愛媛県)といった声があるように、旅行者が戻ってきている様子も見てとれる。
帝国データバンクによると、2021年には人手不足を主な要因として倒産したケースが104件発生。「生産年齢人口の減少などにより、今後はこれまで以上に採用が難しくなる。デジタル化やDXの時流にも乗り、将来を見すえながら人手不足の解消に向けて積極的に取り組むことは、事業継続を左右する大きなファクターとなるだろう」などと分析している。