日本労働組合総連合会(連合)は、カスタマー・ハラスメントに対する意識や実態の把握を目的にインターネット調査を実施し、その結果を公開した。調査は2022年11月11~12日の2日間、直近3年間で自身や職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことのある人1000名の有効サンプルを集計したもの。
連合ではカスタマー・ハラスメントについて、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為や、職員の就業環境や業務推進を阻害し、尊厳を傷つける行為と説明。BtoBの場合も含めるとしている。
調査によると、直近5年間でのカスタマー・ハラスメントについて4割弱の人が「発生件数が増えた」(36.9%)、「深刻さの変化を感じた」(36.5%)と回答。そう思う理由として、「格差、コロナ禍など社会の閉塞感などによるストレス」(件数増加:48.2%、深刻化:47.1%)、「過剰な顧客第一主義の広がり」(件数増加:43.6%、深刻化:44.9%)、など、社会環境や時勢の変化による影響をあげる声が多かった。
ハラスメントの内容を業種別でみると、「宿泊業・飲食サービス業」では他の業種と比較して、「弁償や金品などの要求」(20.0%)、「セクハラ行為」(20.0%)が平均より10ポイント以上、「勤務先への不当な苦情、投稿」(30.0%)が5ポイント以上高かった。また、カスタマー・ハラスメントのきっかけについて「わからない」(25.0)も平均(12.0%)の倍以上で最も高いのも特徴的だ。
このほか、調査では、カスタマー・ハラスメントをなくし、就業環境を適正にするために必要な国や団体の施策として、「業界団体のガイドライン整備」や「国や地方自治体の罰則設置」などを求める声が約8割にのぼった。
連合によると、2022年4月のハラスメント対策関連法の全面施行で、全事業主に対し、パワー・ハラスメントに関する雇用管理上の防止措置が義務化された。しかし、カスタマー・ハラスメントなど第三者のハラスメントに対しては「望ましい取組み」に留まっており、義務化されていない。今回の調査では、カスタマー・ハラスメントを受けた人は、心身に不調を負い、仕事を辞めるなど、生活に様々な変化が生じたことが判明したという。
これらを踏まえ連合では、カスタマー・ハラスメントは被害者の人格等を侵害し就業環境全体を悪化させる問題とし、あらゆるハラスメントの根絶と、働きがいを持てる就業環境の整備に向け、引き続き取り組む方針だ。