【年頭所感】観光庁長官 和田浩一氏 ―3つの柱で観光戦略を推進、「観光立国推進基本計画」を3月までに策定へ

観光庁長官の和田浩一氏が、2023年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

和田長官は、国内外の観光需要を本格的に回復させ、観光立国復活への取組を強力に推進する方針を提示。観光の課題や旅行者の意識変化も踏まえ、「消費額拡大」、「地方誘客促進」、「持続可能な観光」の3点に留意して観光戦略を推進し、地域資源の磨き上げや観光地経営の高度化、観光産業の生産性向上などの視点で、観光DXの取り組みも進める方針を示した。新たな「観光立国推進基本計画」を今年3月までに策定し、2025年をめどに持続可能なカタチでの観光復活を目指すとしている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2023年 年頭所感

明けましておめでとうございます。

2023年の新しい年を迎え、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

人口減少を迎えている我が国では、観光先進国に向けた取組の結果、2019年までインバウンドが飛躍的に増加するなど、地域や観光産業の活性化に寄与してまいりました。

他方、コロナの影響により、年間4.8兆円まで達したインバウンド消費が一時的に消滅し、日本人の国内旅行消費は半減するなど、観光関連産業は、深刻な影響を受けております。

このため、国内観光需要の喚起のほか、観光地や宿の高付加価値化、デジタル化など、観光関連産業を多面的にご支援してまいりました。

昨年10月からは、全国を対象とした観光需要喚起策である「全国旅行支援」を実施してまいりました。全国旅行支援の実施により、日本人の延べ宿泊者数がコロナ禍前を上回った地域があるなど、高い需要喚起の効果が現れているものと認識しております。

本年1月10日からも、旅行需要の急激な変動の緩和を図るとともに、可能な限り長期的な支援を続けていくため、割引率等の制度を見直した上で全国旅行支援を実施することとしており、旅行需要の喚起を着実に進めてまいります。旅行に行かれる際には、引き続き、基本的な感染対策をしっかりと行った上で、お出かけいただければと考えております。

また、インバウンドについても、感染拡大防止と社会経済活動のバランスをとりながら水際措置の段階的な緩和が進められ、昨年10月からは、ビザなし渡航、個人旅行再開など、大幅な緩和が行われました。その結果、訪日外国人旅行者数にも回復が見られるところであり、今後、インバウンドの本格的な回復に向けた集中的な取組を実施し、円安のメリットも活かして、速やかにインバウンド消費年間5兆円超の達成を目指してまいります。

本年は、国内外の観光需要を本格的に回復させ、観光立国の復活のための取組をこれまで以上に強力に推進してまいります。観光は成長戦略の柱、地域活性化の切り札であり、ウィズコロナ・ポストコロナにおいても、観光を通じた国内外との交流人口の拡大を通じた地域活性化の重要性に変わりはありません。

これまでの観光の課題やコロナによる旅行者の意識変化も踏まえ、「消費額拡大」、「地方誘客促進」、「持続可能な観光」の3つのキーワードに特に留意し、以下の3つの戦略を総合的かつ強力に推進してまいります。

第1に、「国内交流拡大戦略」に取り組みます。

全国旅行支援等の観光需要喚起策の実施のほか、近年の働き方や住まいのニーズの多様化等を踏まえ、「第2のふるさとづくり」(何度も通う旅、帰る旅)やテレワークを活用したワーケーション、ユニバーサルツーリズムの推進といった国内における新たな交流市場の開拓に取り組んでまいります。

第2に、「インバウンド回復戦略」に取り組みます。

大都市だけでなく、地方も含めた全国各地で特別な体験の提供や期間限定のイベント等を実施するとともに、日本各地の魅力を全世界に発信する「観光再始動事業」をはじめ、関係省庁の施策も総動員して集中的な取組を行ってまいります。

さらに、コロナ前の2019年におけるインバウンドに関する目標の達成状況を見てみると、旅行者数は約8割の達成率であった一方、消費額と地方誘客は約6割の達成率にとどまっていたことから、今後は、特にインバウンドの消費額拡大と地方誘客促進に取り組んでまいります。

その際には、観光消費の旺盛な高付加価値旅行者の誘客拡大を図ることも重要であり、地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりを推進してまいります。

第3に、「高付加価値で持続可能な観光地域づくり戦略」に取り組みます。

観光地・観光産業の再生・高付加価値化に向けて、宿泊施設や観光施設のリノベーションなどの取組を支援しているところであり、更なる取組の推進のため、単年度ではなく複数年度にわたる事業実施を可能にすること、新たに面的DX化の取組を支援対象に追加すること等の制度拡充を図ったところです。これらを通じて観光産業の収益力の向上や経営の効率化を支援するとともに、例えば支援に際し賃金水準の引き上げを求める等、従業員の待遇改善が図られるよう取り組んでまいります。

また、地球環境に配慮した旅行を推進するとともに、自然や文化等の地域の観光資源を保全・活用したコンテンツの造成・工夫、受入環境整備等を通じて、持続可能な観光地域づくりを進めてまいります。これらの取組を通じて先進的なモデル地域を形成し、観光SDGsの取組を世界に向けてアピールしてまいります。

さらに、地域資源の更なる磨き上げや、旅行者の利便性向上、観光地経営の高度化、観光産業の生産性向上、観光デジタル人材の育成・活用といった視点から、観光DXに関する取組を進めてまいります。

観光庁といたしましては、こうした取組を進めるとともに、2025年をターゲットに、我が国の観光を持続可能な形で復活させるため、新たな「観光立国推進基本計画」を本年3月までに策定し、観光立国の復活に向けて、しっかりと取組を進めてまいります。

観光関係の皆様、国民の皆様におかれましては、今後とも観光政策にご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げて、新年のご挨拶とさせていただきます。

観光庁長官 和田浩一 

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