米OTA「ホッパー」で予約時に「チップ支払」が発生する理由とは? その背景と仕組みを解説【外電】

数々のイノベーションを実現し、OTA各社との差別化に成功したのが米「ホッパー(Hopper)」だ。

フィンテック機能を加え、理由に関係なくキャンセル可能なオプションを用意するなど、様々な工夫を凝らすことで、売上を拡大してきた。

予約時に、チップの支払いを依頼することも、ホッパー独自の施策の一つだ。

同社によると、チップは以前から請求しており、新しく始めたことではないという。だが2023年4月、「騙している」との批判を一部メディアから受けた。チップが代金に含まれているかどうかは、予約手続きの最後に表示される決済ページ上で、トグルボタン(オン/オフ・ボタン)を見れば分かる。通常、トグルボタンはチップを含む「オン」にデフォルト設定されている。つまり、チップは自動的に合計金額に加算される仕組みで、払いたくない場合は、トグルボタンを自分でオフに変える必要がある。

さらに、この加算額のことをチップと呼ぶべきかについても、批判が出た。昔からある一般的なチップとは異なるからだ。

例えば、4月21~23日のセビリア/グラスゴー往復フライト代は798ドル(約11万円)。その内訳は、基本料金が670ドル(約9万2000円)、税金と手数料が128ドル(約1万8000円)で、平均的なOTAの価格といえる。これに対し、最終ページの合計額で加算されるチップは3.29ドル(約450円)となる。その脇に表示されるメッセージは「支援をお願いします!この任意のチップが、当社の(価格の変動)予測機能を支えています」。下部には「より詳細な情報」ページへのリンクがあり、「ホッパーでは膨大なデータを読み込むことで、より正確な予測を導き出しています。あなたのサポートのおかげで、ウサギたちは走り続けられるのです」との説明がある。また同社では、ウェブサイトにも、チップ制度について解説したページを設けている。

予約時に、自動的に加算されるコストはチップ以外にもある。同社では、顧客サービスのオプションとして、無料のベーシックプランとVIPプランの2種類を用意しており、VIPプランの料金は42ドル(約5800円)。デフォルト設定はVIPプランなので、余計なコストをかけたくない場合、ユーザー側には、無料プランを選ぶひと手間が必要になる。ちなみに両者の違いは、VIPプランでは5分以内の返信、アプリ内でのチャット対応がある一方、無料プランは24時間以内の返信、メール対応のみとなっている。

同社サイトを見ると、チップの金額は、予約内容により、一律もしくは一定の割合が加算される仕組みだ。

ホッパーの広報からは、チップ制を導入した経緯について、以下のようなメールでの説明があった。

「2015年にホッパーのアプリがフライト予約を開始し、併せて航空券の価格予測およびフライト・ウォッチ/通知ツールを提供した時から、この料金体系はずっと変わっていません。当初は、すべての予約を対象に徴収していたが、2018年に任意のオプションに変更しました(この際、利用者が選択できるようになったので、チップという呼び方に変えた)」(広報からのメール)。

価格予測とフライト・ウォッチ/通知ツールにより、ユーザーは航空券の価格が上下するのをトラッキングできるようになった。価格が動くと、ホッパーからの通知が届き、今後の値動き予測も分かる。

「ホッパー独自の価格予測と、値動きをウォッチできるツールを無償で提供し、何百万人ものユーザーのために、旅費の節約に貢献してきた。利用者には、ホッパーで航空券を予約しなかった人も含まれている。任意のチップ制は、こうした価値提供について、ユーザーに理解してもらうのに役立っている」(同社広報)。

まだ小さなスタートアップだった時代、売上は航空券の予約から得るわずかなコミッションだけで、手数料は同ツールをマネタイズする手段の一つでもあったと同社では説明する。航空会社からのコミッションは最低レベルで、払ってもらえれば良いほうだったという。

「一方、顧客からは、ホッパーのおかげで期待以上のお買い得価格を見つけることができたので、少額の手数料なら喜んで払うという声が多く、この方式を続けてきた」と同社。実際に、チップについて書かれたレビューも複数あるという。

ホッパーによると、4人に1人が予約時にチップを払っている。

チップありの選択肢がデフォルト設定になっている理由について、説明はなかったが、顧客側は払い戻しを請求することもできるという。

「アプリ内にあるサポート機能、ライブチャット経由で問い合わせができる。追加の金額について理解していなかった旨や、チップを払う意志はなかったと伝えれば、即、払い戻しに応じている」と同社広報は付け加えた。

「騙された」とは、さすがに言い過ぎだろう。しかし、消費者が正しく趣旨を理解した上で、払っているかは重要なポイントで、メディアも注目している。チップを支払っているのは、利用者全体の4分の1ほど。ただし、自分がチップを払ったと認識している人が、このうち、どのぐらいいるのかは気がかりだ。

※ドル円換算は1ドル137円でトラベルボイス編集部が算出

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Why Hopper Asks for a ‘Tip’ When Booking

著者:Justin Dawes氏

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