AP通信は、外国人観光客のマナー違反に苦慮する富士河口湖町の苦渋の選択について、世界に発信した。富士河口湖町は、日本の象徴である富士山の美しい姿が写真に収められる場所だが、同町は、その富士山の眺望を遮るために、歩道に大きな黒幕を張る作業を開始。写真を撮る外国人観光客のマナー違反に対応するためだ。AP通信のリポートをまとめた。
近隣の和菓子カフェの店主は、「河口湖は観光で成り立っている町なので、多くの観光客を歓迎しているが、マナーなど気になる点も多く見受けられるようになってきた」と話す。彼女は、その例として、ゴミのポイ捨て、交通量の多い道路の横断、信号無視、私有地への侵入などを挙げた。
それでも、彼女には今のところ不満はない。彼女の店では80%が外国人観光客だからだ。
問題の場所に人が集まり始めたのは2年ほど前。地元のコンビニエンスストアの上に鎮座するように映る富士山の写真がSNSで話題になってからだ。
それ以来、外国人観光客が狭いエリアにひしめき合うようになった。狭い歩道を塞いだり、交通量の多い道路で写真を撮ったり、近隣の敷地に立ち入ったりすることに対して、町には住民からの懸念や苦情が相次いで寄せられているという。
町は、英語、中国語、タイ語、韓国語で注意喚起の看板を立てたり、警備員を配置して人混みの整理などを試みているが、 どれもあまり効果はない。
町によると、高さ2.5メートル、長さ20メートルの黒いメッシュネットは5月中旬ごろには完成するという。それが立てられると、その歩道からは富士山の姿は完全に遮られる。
フランスからの旅行者アンソニー・ホックさんは、「ネットの設置は過剰反応だ」と話す。富士山の姿を遮るのではなく、安全のために道路にガードレールを設けるべきではという意見だ。
一方、英国から訪れたヘレン・プルさんは、地元の懸念に対して同情的だ。「数週間にわたって日本を旅行しているが、本当に観光客が増えている。地元の人たちが何らかの対策をしたいと考えるのは当然でしょう。富士山が見えない時でも多くの観光客が押し寄せる。それがSNSの力」と話す。
日本政府観光局は、今年の訪日外国人数は過去最多だった2019年の3200万人を超えると予想している。
頭を抱える地元住民
和菓子店の店主は、黒幕がどれほど観光客の抑制につながるのか分からないと話す。地元の老舗米屋の店主は、ここ数ヶ月で混雑はさらに悪化し、観光客は朝4時から5時ごろには集まり大声で話していると明かす。彼はガレージから車を出すのにも苦労しているという。
彼は「このような状況に直面するとは思ってもみなかった」と話し、何が解決策が分からないと付け加えた。 「私たちは、それに慣れるしかないのでしょうか」。
※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。