日本旅行業協会(JATA)は2024年7月10日、「ツアーグランプリ2024」の受賞者発表と表彰式を開催した。
ツアーグランプリは、旅行業における企画力とマーケティング力の向上、「観光立国」の施策に寄与することを目的に、優れた旅行企画を表彰するもの。実際に商品として流通・販売し、実施されたツアーを、斬新性、事業性、業界貢献度をポイントに選考する。
30回目の開催となった今回は、2023年4月から2024年3月末までに催行された海外・国内の企画旅行と、訪日旅行で実施された企画提案が対象。今回から、受賞部門を国内旅行と訪日旅行に独立させたこともあり、1990年以降で最多となる153ツアー(海外旅行47企画、国内旅行85企画、訪日旅行21企画)の応募があった(バーチャルツアーを対象にした2021年除く)。
国土交通大臣賞は、全国8000超の農家・漁師が登録するオンラインマルシェを運営する雨風太陽社の「ポケマルおやこ地方留学」が選出。農山漁村に家族で約1週間滞在し、生産者から食の大切さを学べるツアーで、リモートワークの活用と関係人口創出型の新しい旅行スタイルが評価された。
同ツアーは2022年の夏に、同社の本社のある岩手県から開始した。生産者はもちろん、他の参加家族とのつながりができる体験も好評でリピート率が高く、2年目となった2023年の夏は参加した98家族のうち、約半数が2年連続での参加だったという。
また現在、需要回復の途中で苦戦している海外旅行だが、今回のツアーグランプリには、様々な工夫でターゲットの開拓や集客に成功したツアーが集まった。
例えば、審査員特別賞(海外)を受賞した近畿日本ツーリストの「バリアフリー旅仲間・黄葉のデナリ国立公園とオーロラ観測でチェナ温泉リゾートに宿泊するアラスカ・アメリカ9日間」は、障害がある方を対象にしたツアーで、LINEで募集・申し込みを実施した。障害のある方のツアー手配の効率改善が目的だったが、作業効率はもちろん、タビマエからタビアトに至るコミュニケーションも向上。顧客対応の満足度が上がったほか、クチコミ効果で集客にも好影響があったという。
このほか、国内旅行では愛犬をケージに入れずに客席で一緒に座れる列車を運行したツアー(JR東日本びゅうツーリズム&セールス)や、訪日旅行では北陸新幹線を用いた「北陸レインボールート」を構築し、その先の地方をめぐる“チャイルドルート”を組み合わせて人流創出を図る企画(JTBグローバルマーケティング&トラベル )など、新たな旅行需要創出や地方経済活性化に貢献するような企画も選出された。
全体講評で、ツアーグランプリ2024審査委員長を務めた本保芳明氏(国連世界観光機関駐日事務所代表)は「企画を拝見するのは非常に楽しく、感動もした。これだけの情熱をもって旅行商品を作っている方が旅行業界に多くいることを心強く思った」と話し、来年度の本事業への挑戦を呼び掛けた。
なお、ツーリズムアワードでは、海外旅行ブームを牽引したジャーナリスト故・兼高かおるさんの業績を称えて創設された「兼高かおる賞」受賞者も発表されていたが、今年は決定見送りとなった。
ツアーグランプリ2024受賞者
【国土交通大臣賞】
- 雨風太陽:ポケマルおやこ地方留学
【観光庁長官賞】
(海外旅行部門)
- JTB:日韓ミライ♡プロジェクト ソウル4日間
(国内旅行部門)
- JR東日本びゅうツーリズム&セールス:ケージレス列車『わんだフルTRAIN』~愛犬と伊豆高原満喫の旅~
(訪日旅行部門)
- JTBグローバルマーケティング&トラベル:持続可能な観光実現に向けた「北陸レインボールート構築による新たな訪日人流創出」
【優秀賞】
(海外旅行部門)
- 近畿日本ツーリスト:ARIA聖地巡礼ネオ・ヴェネツィアツアー
(国内旅行部門)
- ジャルパック:赤ちゃんと行く沖縄の旅3日間
(訪日旅行部門)
- 日本旅行:シェフと旅する大自然グルメツアー
【審査員特別賞】
(海外旅行部門)
- 近畿日本ツーリスト:バリアフリー旅仲間・黄葉のデナリ国立公園とオーロラ観測でチェナ温泉リゾートに宿泊するアラスカ・アメリカ9日間
- 三越伊勢丹ニッコウトラベル:三越創業350周年特別企画アラン・デュカス監修メニューベルサイユ宮殿晩餐会の旅(計16+1コース)
(国内旅行部門)
- エイチ・アイ・エス(HIS):手話通訳付き!羽田空港バリアフリー&JAL SKY MUSEUM・格納庫見学ツアー
(訪日旅行部門)
- ティ・エ・エス:日本訪問が初めての方も、リピーターも楽しめる春の日本列島横断ツアー