日本のホテルマネジメント契約期間は平均23年、長期のブランド固定を好む傾向、アジア太平洋は17年

総合不動産サービス大手JLLと世界最大級の国際総合法律事務所ベーカーマッケンジーは、共同レポート「ホテルマネジメント契約調査2024」を発表した。この調査は、アジア太平洋地域で過去20年間にわたり約400件のホテルマネジメント契約を調査分析したもの。今回の調査には、2018年から2023年に締結されたホテルマネジメント契約145件が含まれる。

その結果によると、アジア太平洋地域でのホテルマネジメント契約の契約期間は長期化し、さらに過去5年間のマネジメントフィー(手数料)は低下している。一方で、セールス&マーケティングフィーは増加していることが明らかになった。

当初の契約期間について、2024年は約17.4年。2005年以降、平均で4年延びている。各ローカルオペレーターは契約期間の短縮など柔軟性を持つ傾向にあるという。

ホテルマネジメントの契約期間は市場によって異なり、日本ではラグジュリーホテルの開発が多く、オーナーが長期のブランド固定化を好むため契約期間は23年。オーストラリアでは、オーナーがより短い契約期間と制約がない資産売却を好む傾向であることから、平均契約期間は15年と短い。

セールス&マーケティング手数料が増加

レポートでは、ホテルマネジメントの契約期間に影響を及ぼす要因のひとつとして、フィーの構成要素の変化を挙げている。平均ベースフィーは売上の1.7%から1.6%に低下。インセンティブフィーは営業利益の境界値に対するパフォーマンスに基づく変動制で設定される傾向にあるという。

マネジメントフィーが減少している一方で、セールス&マーケティングフィーは増加。以前と比較すると、より多くのオペレーターが、総売上または客室売上の3%以上をセールス&マーケティングフィーとして設定している。

JLLホテルズ&ホスピタリティグループ ジャパン エグゼクティブ ヴァイス プレジデント ヘッド オブ アドバイザリーの大橋蔵人氏は、「マネジメントフィーはセールス&マーケティングフィー、ホテルのプログラムフィー、変動費の増加により相殺されるケースが増えている。これらのフィーは強制的で透明性が低く、ブランドごとに異なり比較しにくいことから、一部のオーナーに不安を与える要素となっている」と指摘している。

さらに、過去20年間で見られる大きな変化のひとつとして、ホテルマネジメント契約の解約条項が追加されたことを挙げている。現在、契約の93%が解約条項を定めており、競合のホテルセットに対する平均客室単価(RevPAR)の比較と、予算に対する営業総利益(GOP)の比較によって、多くの場合、2年間以上の期間でパフォーマンスが評価されているという。

今後10年で多様な運営モデルが登場か

今回の調査から、アジア太平洋地域のオーナーは今後、標準的なホテルマネジメント契約と比較して、フランチャイズ、マンチャイズ(オーナーがホテルマネジメント契約からフランチャイズに変更可能な契約)、ホワイトレーベルオペレーター(オーナーに代わって、オペレーターと契約を締結する第三者のオペレーター)などのより多様な運営モデルを選択すると予測。

そのうえで、今後10年でアジア太平洋地域のホテルマネジメント契約に影響を与える新たな要素として、代替運営モデルの台頭、サステナビリティの影響、契約解約の余地の3つを挙げている。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…