ウーバーのエクスペディア買収が実現すると、日常使いと非日常の旅行がつながる「スーパーアプリ」に、データ統合で究極の旅行体験を考察してみた【外電】

世界の鉄道チケットの流通プラットフォームを展開するシルバーレイル(SilverRail)の共同設立者兼CEOのアーロン・ゴーウェル氏は、ウーバー・テクノロジーズがエクスペディアへの買収提案を検討しているとの報道を受け、自身の見解を米観光産業ニュース「フォーカスワイヤ」に寄稿した。エクスペディアは、2017年にシルバーレイルを買収している。その時のエクスペディアCEOは、現在のウーバーCEOのダラ・コスロシャヒ氏だ。

ゴーウェル氏の見解を翻訳・編集して以下にまとめた。

1つのスーパーアプリがあれば、それで十分

ウーバーによるエクスペディアの買収の噂で、私(ゴーウェル氏 )が興味をそそられるのは、財務上のメリットというよりも、旅行やサービスの提供の方法を変える可能性があるということだ。

「スーパーアプリ」は、流行語のように聞こえるかもしれないが、この合併が実現すれば、その価値は、ウーバーの高頻度で低コストのエンゲージメントとエクスペディアの低頻度で高価値の取引を組み合わせることにあると思っている。そして、巨大な統合された顧客ベース全体にAIを重ねれば、強力で破壊的なプラットフォームが完成する。

エクスペディアのような0TAの弱点は、人々が毎日旅行を予約するわけではないところにある。運が良ければ、年に3回予約するかもしれない。では、その空白期間にエクスペディアは何をしているのか? 常に消費者の関心を惹きつけておくために年間70億ドル(日本円で約1.06兆円)を費やし、20億ドル(約3040億円)はグーグルに直接流れ込んでいるのだ。

一方、ウーバーは日常生活に根づいている。ライドシェア、フードデリバリー、荷物の配送など幅広く利用されているので、その存在を思い出させるために何十億ドルも費やす必要はない。

ウーバーCEOののダラ・コスロシャヒ氏は、高頻度のエンゲージメントの力を理解している。だからこそ、2017年、彼がエクスペディアのCEOを務めていた時代に我々シルバーレイルを買収したのだ。鉄道事業の購入頻度はOTAの5~8倍。コスロシャヒ氏は、人々の日常生活に溶け込めば、大金を費やして人々の関心を維持する必要はないことを知っていた。

両社の合併による相乗効果は明らかだ。エクスペディアで旅行を予約をすると、ホテルのチェックアウト時にアプリに「ウーバーに迎えに来てもらう必要がありますか」というポップアップ画面が出る状況を想像していただきたい。ウーバーにも、エクスペディアにも、そして利用者にもいいことだろう。

なぜ、旅行でいくつものアプリを使う必要があるのか。1つのスーパーアプリがあれば、それで十分なのに。ウーバーがそれを実現すれば、私は一生使い続けるだろう。

これは仮説ではない。すでに東南アジアの「グラブ」や中国の「美団」は、スーパーアプリがいかに価値があるものなのかを証明している。

本当の価値は大量のデータを元にしたAIの活用

ウーバーとエクスペディアの合併の本当の価値は、統合されるサービスだけではない。それよりも、ウーバーの1億5000万人の高頻度ユーザーとエクスペディアの5000万人の高額旅行者にAIを活用できる可能性の方が重要だ。

データは新しい油田。両社とも、それぞれの分野でデータを大量に持っている。これらのデータを組み合わせて、機械学習を加えると、究極の旅行アプリが完成するだろう。毎日の通勤であれ、夢の休暇であれ、あなたの習慣を知り、ニーズを予測して、手助けをしてくれる。そして、それは単に良いアプリではなく、旅行の原動力となるだろう。

ウーバーCEOのコスロシャヒ氏は元エクスペディアCEO。現在のエクスペディアグループCEOのアリアン・ゴリン氏とは長年の関係がある。このスマートな二人が力を合わせれば、テクノロジー界のアベンジャーズが誕生するだろう。

もちろん課題もある。規制当局は市場独占について懸念を表明する可能性がある。しかし、これは市場を独占することではなく、よりスムーズで統合された旅行体験を生み出すこと。新しいエコシステムを構築できる可能性があるのだ。

※ドル円換算は1ドル152円でトラベルボイス編集部が算出

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:How an Uber-Expedia merger could redefine the travel experience

著者:Aaron Gowell - SilverRai


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