ウーバーによる「エクスペディア買収」報道、その可能性と相乗効果、アマゾンが買収した場合の未来を考察した【外電】

世界的な観光マーケティング企業MMGYで2022年まで社長・CEOを務めたクレイトン・リード氏が、米観光産業ニュース「フォーカスワイヤ」に、ライドシェア大手ウーバー(Uber)あるいはアマゾン(Amazon)によるエクスペディア・グループ買収の可能性について寄稿した。

先週、英紙ファイナンシャル・タイムズ紙は、ウーバー・テクノロジーズがエクスペディアへの買収提案を検討していると報道。かねてより、スーパーアプリ化を目指してきたウーバーが世界大手OTAを買収することで事業拡大を目指すという内容だ。報道後、各方面で今後の憶測が飛び交っている。

リード氏の見解を翻訳・編集して以下にまとめた。

相乗効果はあるものの、現実的でないとの見方

リード氏は、まずウーバーによる買収について考察。「この合併の見通しは直感的すぎる。興味深いものだが、実現すればウーバーにとっても、おそらくエクスペディアにとっても、戦略的な失敗になると思う」と見通している。ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOは以前、エクスペディア・グループのCEOを務めていた。

ウーバーは配車サービスとモビリティ プラットフォームで世界的な地位を占めており、コスロシャヒ氏はコロナ禍からの大幅な回復を主導している。食品配達、貨物輸送、その他のモビリティ関連製品カテゴリなどのサービスへの拡大にはまだ十分な余地があり、最近のアルファベット傘下の自動運転開発「Waymo」などとの契約は、都市または地域内の二地点物流の次の段階への期待を示すものだ。

一方、エクスペディアは、フライト、ホテル、レンタカー、その他の旅行関連サービスのシームレスな予約の延長として、ウーバーのモビリティの優位性に目を向けているように見受けられる。

両社の間には確かに相乗効果があると見られているが、エクスペディアは、モビリティプラットフォームとしてのウーバーのコアビジネスからの大きく乖離しているほか、2つの異なるテクノロジープラットフォーム(市場ニーズも)を統合する複雑さを考えると、欠点の方が説得力がある。

確かにウーバーの利用者向けの旅行パッケージや、法人旅行でのシームレスな旅行体験のアイデアはうまくいくかもしれないが、それは机上の空論。リード氏は、テクノロジーの統合とインフラの構築における課題と多額の投資、統合後のブランドの混乱を考えると、「私は疑念を抱かざるを得ない」との考えを示した。

また、規制上の課題や株主との関係も課題も指摘。二社の統合は、投資銀行の会議や金融メディアで広まった噂に過ぎず、ウーバーは、輸送技術、次世代モビリティなどの新たな分野、また非開拓の地域など、発展の余地を残している。リード氏は、「旅行への拡大は、こうしたビジネス機会に優先することだろうか」と疑問を呈する。

アマゾンがエクスペディアを買収すれば、どうなる?

では、アマゾンとエクスペディアはどうか。

同氏は、「ここ10年にわたって、アマゾンが旅行業界に進出すると考えていたが、それは間違っていた」と考えている。一方で、もしも本当にエクスペディアが売却対象になっていて、アマゾンがエクスペディアを買収すれば、アマゾンは大きな利益を上げるとみている。

アマゾンにとって、旅行は明らかに成長に向けた原動力になる。エクスペディアを買収できれば、アマゾンは即座にこの分野で大きな足場を築き、レジャー旅行とビジネス旅行の両分野で相乗効果を生み出すだろう。

アマゾンのプライム会員、物流ネットワーク、テクノロジー インフラ、購買力は、 エクスペディアのブランドを強化するだけでなく、旅行サプライヤー向けの新しい流通プラットフォームを構築する可能性がある。

リード氏が描く理想の世界は、アマゾン・プライム会員がより簡単に旅行体験を予約でき、独占的な割引や特典を受け取れるようになること。一方で、アマゾンとエクスペディアは、膨大な顧客データと顧客のインサイトから生まれる新たな旅行ソリューションを開発することもできるようになる。

今後数年で、ロイヤルティプログラムには大きな変化が見込まれている。その中で、アマゾンのシェアがさらに拡大していくことを考えると、アマゾンプライム特典は、銀行やOTAなどのロイヤルティプログラムに対して大きな優位性を持つことになる。

アマゾンの顧客データとエクスペディアの膨大な旅行データや広告テクノロジーを組み合わせれば、14兆ドルと言われている旅行市場に新しい、そしてこれまでとは異なる強力なプレイヤーが登場することになる。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:WHY UBER ISN'T BUYING EXPEDIA, BUT I STILL THINK AMAZON SHOULD


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