トラベルボイス記事の年間ランキング2024、今年1番読まれた記事は?

2024年が幕を閉じようとしています。今年もトラベルボイスでは旅行・観光に関わる数多くのニュースを取り上げてきました。その中で、読者の方々の関心を集めた記事のアクセスランキングを発表、今年を振り返ります(トップ20の一覧は下部に記載)。

今年の特徴は、上位50位くらいまでの記事でアクセスに大きな差が見られなかったこと。押しなべて注目が高い記事が多かったとも、突出したトピックスが少なかったとも取れます。同一テーマの記事が数多く上位に含まれたこともあり、ランキングでは、複数の記事をテーマでまとめて順位付けしました。

今年のトラベルボイスでアクセス1位となったのは、1月に羽田空港で発生したJAL機の衝突事故を海外メディアがどう伝えたか、という記事でした。国内外に大きな衝撃を与えた事故でしたが、海外メディアは客室乗務員の冷静な判断と行動を称賛。事故後、再発防止への検証や議論が進みましたが、事故発生直後の冷静な行動は、緊急時の姿勢として心に刻んでおきたいものです。

訪日客数が過去最多、世界ではオーバーツーリズム問題が過熱

今年は、1~11月までの累計で訪日客数3337万9900人(推計値)となり、過去最多だった2019年の年間客数を上回りました。2024年の年間累計は3500万人超えが確実です。コロナ禍の行動制限が撤廃されて、わずか1年半での急成長に安堵する一方で、オーバーツーリズムをはじめとする課題も浮き彫りになりました。

日本より先行してオーバーツーリズム問題が再燃していた世界各国では、その状況が深刻化しています。今年、スペインやギリシャで大規模な反ツーリズムのデモが発生する事態に発展しました(7位)。こうした状況を解決するため、各国政府や観光地では、民泊の抑制、観光税や宿泊税の新設・増額、入域制限など、規制や負担を課すような取り組みが多くみられるようになりました。試行錯誤ではありますが、来年以降も、この動きは加速することでしょう。

では、日本はどうでしょうか。昨年秋に岸田元首相の指示のもとに開催された関係省庁横断会議でまとまった「オーバーツーリズム対策パッケージ」のもと、今年は具体的な対策や議論が各地で展開されました。年明けには、その成果が観光庁から発表される予定です。

今年の大きな動きとしては富士山の入山規制がスタートしたことがあげられるでしょう。近年発生していた、山頂付近の深刻な混雑や弾丸登山によるマナー違反などを問題視した山梨県は、初めて入山料徴収や1日の登山者数を制限しました。静岡県とは対応が異なりましたが、今年の成果を踏まえて来年度にむけた議論が続いています。

観光地経営では、長期的な視点が求められます。オーバーツーリズム対策は重要ですが、そのための短期的な目標だけでなく、その地域が将来的にどうあるべきか、どうしたら持続可能であるかという長期ビジョンをもつことが欠かせません。山梨県知事が語った以下の記事(10位)は、そのヒントがつまっています。

国内外で自然災害が多発、求められる「観光レジリエンス」

今年は、元旦に能登半島地震が発生し(2位)、その後も国内外で多くの自然災害が各地を襲いました。観光分野では、自然災害や感染症などの危機や逆境から回復する能力の向上が世界的な課題となっています。そんななか、今年は日本と国連の連携でアジア太平洋地域の「観光レジリエンスサミット」が開催されました。

観光のレジリエンスとは、危機発生時の混乱や逆境に、コミュニティや地域が適応し、回復する能力のことです。同時開催されたシンポジウムで印象的だった言葉は「防災はコストでなく投資」という国連防災機関(UNDRR)駐日代表の松岡由季氏の言葉でした。年末に公開した記事でしたのでランキングには入りませんでしたが、ぜひ年末年始に読んでいただきたいです。

修学旅行の最新トレンド、「観光教育」の今

コロナ時代を経て、大きく変化したのが修学旅行のトレンドです。旅費高騰、旅行会社の人手不足、貸し切りバスの手配困難、オーバーツーリズムなど、まさに観光の課題がそのまま集積されています。また、近年は「探究学習」を修学旅行に取り入れる学校が増え、求められる旅行のナカミも変わっています。こうしたことから、今年は日本修学旅行協会の竹内秀一理事長にコラム(8位)として最新動向を解説していただきました。読者の皆さんからの関心は高く、月1回の定期コラムは毎回多くの方々に読んでいただきました。

また、「観光教育」についての連載もおこないました。観光が産業としての存在感を増し、その反面、オーバーツーリズム問題など課題が顕在化する中、その解決に向けては観光事業者だけでなく地域住民との連携が欠かせません。一方で、一般社会で観光産業への理解が乏しいのが現状です。そのためには、「観光教育」が不可欠と考え、その重要性と現状を記事にまとめました。残念ながらランキング外とはなりましたが、ぜひ年末年始に一読いただきたい記事です。

外資系ホテルの日本進出が続々

今年は、日本各地で外資系ホテルの開業、リブランドというニュースを数多く配信しました(9位)。日本のホテルオーナーが世界からの集客を見据えた動きであり、世界のホテル業界からも“日本”に対する注目と期待が高いようです。10月に東京で開催されたホテル業界のトップが集う国際カンファレンスでは日本が「最も注目すべき旅先」であり、「投資先」であるという共通認識で熱気に包まれました。

加熱する外資系ホテルの参入、開業を踏まえ、今年後半からは経済誌の編集委員の方に、その背景やトレンドをコラムとして執筆していただいています。来年以降は、数字で読み解くホテル動向やサービス現場のレポートまで、話題を広げていきますのでお楽しみに。

生成AIの活用が進む、人手不足対応に

OpenAIの生成AI「ChatGPT」が登場して2年。旅行分野においても生成AIの活用が浸透しました。旅行計画から予約支援、従業員の業務効率化まで、その活用範囲は広がっています。大きな課題となっている人手不足(13位)への対応では、さらなる活用をするべきでしょう。

また、JTB総合研究所の旅行関連のAIサービスの利用についての調査では、旅行者の感想で「人より気軽に質問できる」のほか、「自分では思いつかないところを提案してくれる」が大きく上昇したそうです。こうした経験を重ねた消費者が増え、さらにAIをはじめとしたテクノロジーがさらに進化することで、旅行計画や予約、タビナカの行動は大きく変わっていくでしょう。スマホが登場する前と後で、状況が一変したのと似ています。来年も、こうしたトレンドをしっかりお伝えしていきたいと考えています。

今年のトラベルボイス記事の年間ランキング、上位20は以下の通りです。

【トラベルボイス記事の年間ランキング2024 トップ20】


ランキング外とはなったものの日本発の海外旅行の低迷、カスハラ(カスタマーハラスメント)への対応、2024年問題、日本版ライドシェアの解禁、止まらないパッケージツアー離れなどなど…、数々の大事なニュースがたくさんありました。今年のニュースは全体的に一過性のものが少なく、来年も動向を注視していくべきものばかりです。

また、気候変動を身近に肌身で感じるようになった昨今、忘れてはならないのが環境への配慮でしょう。今年、COP29(国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、初めて観光デーが併設され、行動アジェンダに観光産業対策が盛り込まれました。2050年までに観光分野での二酸化炭素排出量ゼロを目指すグラスゴー宣言(2021年)から、さらに踏み込み、観光産業が気候変動対策において重要な役割を果たすことを再認識させられる出来事でした。今後の観光産業に大きな影響を与えることでしょう。

さて、トラベルボイスは、サイト開設から12年、来年は13年目を迎えます。来年も、旅行・観光ビジネスに関わる皆様の活動の一助となるニュース、旅行トレンド、消費動向など未来を読み解くヒントとなる情報をご紹介していきます。

読者の皆様からも、ぜひ「こんな記事が読みたい」などなど、ご意見・ご要望をお寄せください。いただいたご意見などは、今後の編集に生かしてまいります。

各種お問合せ: Contact@TravelVoice.jp

トラベルボイス編集長 山岡薫

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